雪も消えてタイヤも交換したが、車の流れは冬とあまり変わらず、50分かかって会場に着く。ただちに機材設営にかかり、開始10分前にはスタンバイした。
会場がやや狭く、プロジェクター投影をどうするかセンター職員の方と協議。やはりあったほうがいいでしょうということで、プロジェクターを最前列の椅子に置き、白いクロス張りの壁に投影してみると、まずまず見える。扉の枠で画面が分断されたが、譜面の中央切れ目に枠を配置することで、うまく回避した。
集まった聴き手は約20人。全員が女性だった。事前に情報を得ていたので、構成にはある程度配慮した。予定ぴったりの10時に始まり、休憩なしの1時間半で22曲を一気に歌う。
《セレクトタイム》
「釜山港へ帰れ」「みんな夢の中」「恋のしずく」「さくらさくら」「青春時代」「僕の胸でおやすみ」「箱根八里の半次郎」「南国土佐を後にして」「いい日旅立ち」
《リクエストタイム》
この日は同じ町内会のメンバーがそろっていたようで、開始前からある種の統一感が会場に漂っていた。連日のライブで喉の調子は必ずしも万全ではなかったが、1曲目から手応えは熱く、熱心に耳を傾けてくれる。
「いい声してる!」と、曲間での声援も相次いだ。
「いい声してる!」と、曲間での声援も相次いだ。
順調に8曲目まで終わって、約30分が経過。いつものように声をかけ、リクエストを募ってみた。場の反応からして、すぐにリクエストが出るものと期待していたが、なぜか誰も声をあげない。
最前列のリーダーと思しき女性から、「聴いてるだけで充分楽しいですから、どんどん歌ってください」と言われ、それではと準備してあるリストの続きを歌う。
9曲目の「いい日旅立ち」を歌い終えて、再度場にリクエストを求めてみた。するとようやく「青い山脈」の声が出る。聴き手の目は一様に輝いているが、メンバー全員が女性ということもあってか、真っ先に声をあげることに遠慮があるようだった。
「青い山脈」はラストのうたごえタイムの候補曲だったが、ここは素直にリクエストに従うべきだった。「どうぞみなさん、ご一緒に」と声をかけ、少し早めのシングアウトふう展開に持ち込む。
これがきっかけとなり、次々と似た傾向のリクエストが飛び出す。大半の曲をみなさんが一緒に歌ってくれた。いわゆる「聴いてもらう」展開ではないが、ライブの楽しさという面では、十二分に満足できる流れだった。
場の反応から、今回は歌詞を省略せずにフルコーラスを歌う曲が多かった。時間の割に曲数が少なめなのは、そのせいである。
11時を回って、そろそろまとめに入る時間だったが、なぜかここでフォーク系のややマニアックなリクエストが相次ぐ。それに釣られるように、定番演歌のリクエストも続き、時計はいつしか予定時刻を過ぎて、終わるきっかけを失ってしまった。
場が乗っている証で、歌い手としてはありがたいことだったが、ちょっと困ってセンター職員のKさんに判断を委ね、残2曲のリクエストで終了と決まる。
結果として普段は必ずやるラストのシングアウトが出来ずじまいだったが、途中でたくさん一緒に歌ってもらったので、今回に限ってはこんな終わり方でもよかった。
結果として普段は必ずやるラストのシングアウトが出来ずじまいだったが、途中でたくさん一緒に歌ってもらったので、今回に限ってはこんな終わり方でもよかった。
進行面では運営や機材設営以外に、リクエストの受け渡しでもセンター職員さんのご協力をいただいた。普段接している方のほうが初対面の歌い手よりも話がしやすいのは、介護施設と同じである。
ライブがうまく運ぶには、単に歌の出来不出来以外に、いろいろな要素が複雑にからんでいるもの。まさにライブは生き物である。