私より6歳年上の先輩で、小学校の校長を長年務めていた方だが、定年退職後は紙芝居や朗読のボランティアに打ち込んでいて、10年近く前に別のライブで知り合ったN子さんから紹介された。
TさんとN子さんは小学校の同級生で、以来Tさんも私のライブに来てくれたり、得意の紙芝居や朗読を活かした自主企画イベントに私を呼んでくれたりして、同じステージにも何度か立った。
紹介してくれたN子さんは残念なことに数年前に病で亡くなってしまったが、私とTさんとのお付き合いはその後も続いている。
そのTさん、「チカっと叙情歌サロン」に来ていただいた私のお客様にも紹介したが、「ぜひお名刺を」と請われ、「実は名刺は持ってません」などと応対している。
しばしして、持っていた紙片に名前と連絡先など記し、手渡していたが、家に戻って確かめたら、確かにTさんの名刺は私も貰ってなかった。
ネットやパソコンは一切やらず、携帯メールも読むことはできるが、返信はできないという方なので、趣味のためにわざわざ名刺を外注する気にはなれなかったのかもしれない。
何かとお世話になっているので、この際パソコンで名刺を作って差し上げようと、サンプルを1枚だけ作った。葉書に貼り付けて送り、返信を待っていたら、「ご厚意に甘えさせていただきます」と返事が届いた。
最近100均ダイソーで見つけた名刺用紙は50枚入りで108円。仕上がりは美しく、名刺サイズにカット済みなので、原稿さえあれば印刷はごく簡単。Tさんにはその旨詳しく案内してあったので、応じてくださったのだと思う。
今日はひとまず30枚だけ印刷した。15枚ずつ並べて封筒に入れると、92円で郵送できる。これなら、Tさんの気持ちの負担にもならないだろう。
紹介してくれたN子さんは亡くなっても、人を介した思いは残る。そうした思いを、また別の人にもそっと伝えたい。生きているってのは、結局そういうことではないか。