2017年2月19日日曜日

聴き手は正直

 近隣のデイサービスで歌った。今回が8回目の訪問という長いおつきあいのある施設で、互いの深い信頼関係がゆるやかに築かれつつある。
 依頼にあたって施設長さんから、「今回は冬をテーマに歌って欲しい」との要望があった。介護施設系のライブで事前にテーマが与えられることは稀で、多くは「お任せします」と、こちらに一任される。
 歌い手としてどちらがやりやすいとは決めにくいが、依頼が度重なるにつれ、ややもすれば構成が冗漫になりがちなので、むしろ何らかの「縛り」があったほうがまとめやすいのかもしれない。

 とはいえ、実は冬をテーマにした曲はそう多くない。前回の依頼が晩秋の11月末で、記録を調べると冬系の曲をいくつか歌ってしまっている。できれば重複は避けたく、電子譜面の検索機能を駆使してあまり歌ってない曲も加えるなどし、どうにか45分の構成をひねくり出した。
 開始15分前の13時45分に先方に到着。場を取り仕切る担当者が見知らぬ女性に変わっていて、いつもの段取りと違うことに少し戸惑ったが、予定ぴったりの14時から無事に始められた。
 度重なるアンコールなどあり、予定オーバーの1時間で18曲を歌う。

「小樽のひとよ」「冬の星座」「花笠音頭」「津軽海峡冬景色」「白い想い出」「さざんかの宿」「なごり雪」「氷雨」「釜山港へ帰れ(二択リクエスト)」「宗右衛門町ブルース」「函館の女」「いい日旅立ち」「丘を越えて」「北国の春」
〜アンコール
「珍島物語」「夜霧よ今夜も有難う」「好きですサッポロ」「おやじの海(初披露)」


 ここ数日で寒さが戻ったせいか、喉の調子がいまひとつだった。明け方に咳がなかなか止まらず、ライブを無事に乗り切れるか、一抹の不安があった。
 そのせいで出だしは手探りの進行になり、場の反応もいまひとつ。4曲目の「津軽海峡冬景色」あたりからようやく喉がなめらかになり、声もよく出始める。それに応じて場の反応もよくなってきた。聴き手は実に正直である。

 中間あたりで得意の二択リクエストを仕掛けたが、韓国に関わる2曲のうち、両方の拍手が拮抗。1曲に絞る判断が難しく、とりあえず「釜山港へ帰れ」を歌ったが、もうひとつの「珍島物語」を推す声も強く、では最後に時間があったら歌わせていただきますと、何とか納得してもらった。
 後半に進むにつれ、1曲ごとに手拍子や拍手歓声が湧き、それに応じて喉の調子も尻上がりによくなった。場に押されて歌が乗ってゆく典型である。
 特に手応えがあったのが、叙情性の強い「氷雨」「宗右衛門町ブルース」「いい日旅立ち」など。唯一外したのは1曲限定で入れたフォーク「なごり雪」だったか。他のデイサービスでの評判は悪くないので、このあたりが選曲の難しさ。
 予定通り45分で終えたが、その後二択リクエストで歌い残した曲を始め、アンコールが続き、場がなかなか治まらない。
「夜霧よ今夜も有難う」は前回もリクエストがあったが、同じ女性から再度のリクエスト。本来の利用日ではないが、私が歌うと聞いて利用日を飛び越して聴きにきたという。
 終了後に「○○さん、どうでした?」と職員さんから感想を求められると、「ずっと聴いていたい歌声です」と、歌い手冥利につきる言葉をかけていただいた。

 司会の女性が初めてライブを担当するせいか、場の進行にややぎこちなさもあったが、歌い慣れた場でいつものように熱い手応えを感じたひとときだった。