2016年7月6日水曜日

路上ライブで英語

 不順な天気が続いてしばらく遠ざかっていたが、2ヶ月ぶりに小樽運河で歌ってきた。
 中旬以降に多くの介護施設系ライブを控えているが、今週に限ってライブ予定が全くない。天候や風の様子をうかがっていたが、まずまずの条件がそろったので出かけることにする。

 今回は昼食後の午後から出発と決め、妻は同行しなかった。往復80キロある道の途中には、以前に重大死亡事故が起きた峠があり、(もし事故に巻き込まれて、一人取り残されるのはイヤだから…)と、半分真顔で妻はこれまで2回のライブについてきた。
 しかし、事故の起きた道は中央分離帯にも強固なガードレールが設置され、重大事故の可能性は減った。運転にも充分慣れたので、そろそろ「独り立ち」の時期である。
 13時15分に家を出て、14時20分に小樽運河到着。いつも小樽運河で演っているギタリストの浜田さんに挨拶に行ったら、これまでの運河側でなく、反対の擁壁側で弾いている。
 不思議に思って聞いてみると、通路の運河側には一切店を出してはいけない、との指導が当局からあったとか。おそらくは観光地としての景観上の問題からだろう。音楽系パフォーマーには特に指導がなかったが、移動は浜田さんの自主的な判断らしい。

 ならば自分も同様に擁壁側で演るべきか…、と当惑した。実は展示に絶好な擁壁側には、ほとんど空きスペースがない。通路側にも店が広がった背景は、おそらくそのあたりにある。
 ちょっと困って、トイレ南側の擁壁部にわずかにあった空きスペースを使おうかと、近くにいたアクセサリー販売の方にお伺いを立てた。
「あの空いた場所で1時間ほど歌っていいでしょうか?」と。

 すると首をひねって、「歌はちょっとどうも…」と、柔らかい拒否の姿勢。こうなれば前回と同じトイレ北の運河側に設営するしかない。前回挨拶を交わした絵葉書販売の方に断りを入れると、「私はもうすぐ撤収しますが、くれぐれもアンプの音量にはご注意を」と、これまたやんわり諭された。
 もしかして、旅のストリートシンガーが騒音のトラブルでも起こしたのかもしれない。出だしから気持ちが萎える出来事が続けて起こったが、歌わずに帰るのもシャクなので、普段よりさらにボリュームを絞り、生音に近い感じで演ることにした。


 いろいろ手間取って、15時からようやく開始。休憩なしの1時間20分で、22曲を一気に歌った。

「愛燦燦」「愛の讃歌」「青葉城恋唄」「アカシアの雨がやむとき」「アビーロードの街」「北の旅人」「君をのせて」「ビリーヴ」「さよならの夏」「さくらんぼの実る頃」「涙そうそう」「川の流れのように」「花の首飾り」「野ばら」「ブンガワン・ソロ」「かなりや」「時をかける少女」「大空と大地の中で」「時代」「時の流れに身をまかせ」「糸」「いちご白書をもう一度」
 ボリュームが気になるのでストローク系の曲は極力避け、静かなバラード系の曲を連発した。急な撤収に備え、ここでは反応の薄いリクエスト用紙も設置しなかった。
 最初はいまひとつ集中できなかったが、(何か指摘されたら、即座に打ち切ろう…)と腹を決めたら、少し落ち着いた。

 歌い手の気分は直ちに歌に表れてしまうせいか、前半の反応はパッとしなかった。1時間を過ぎたころに、思い立って絵葉書売りが去って場所が空いた擁壁側に移動して歌うことにする。
 スピーカーは一段高い場所に置いて聴きやすくし、曲もいわゆる「カンフル曲」を連発したせいか、ここから俄然反応がよくなった。


「時の流れに身をまかせ」を歌っていると、東南アジア系の男性がCD2枚と500円硬貨を握って、「ツー、ツー」と指を2本立てて私に差し出す。500円でCD2枚は売れない。しかし、明らかに日本語が通じない様子なので、
「This is five-hundred yen. You can get only one. Do you need two?」
(これは500円ですがな。1枚しか買えまへん。あんさん、2枚欲しいのでっか?)

 などと思いついた単語を並べる。するとかの男性、じっと硬貨をながめ、「オー、おっけー」と納得し、1枚だけ買って去って行った。
 ここでは前回もCD2枚が外国人に売れたが、なかなか反応はいい。いずれもじっと歌を聴いたあとで買ってくれるのも嬉しい。路上ライブでも時に英語は必要になる。中学レベルだが、咄嗟に出るか否かが勝負どころ。
 この日は晴れていたが気温はそれほど高くなく、風もほどほどで過ごしやすかった。まだ余力は充分にあったが、それなりの収穫があったところで撤収。
 新たな課題がいろいろ出たので、今後どう対応すべきか、ゆっくり考えたい。