2016年7月13日水曜日

オーディション11年ぶり

 2005年夏に合格し、それなりに活動はしたが、諸事情でライセンス更新しなかった「赤れんがアーティスト」のオーディションを11年ぶりに受けた。
 北海道が主催する大道芸人や路上ミュージシャンを対象にした文化活動で、合格すると赤れんが庁舎(旧北海道庁)前庭で活動ができる。東京都が主催するヘブンアーティストや、すでに合格して活動中のチカチカパフォーマーに位置づけが似ている。

 久しぶりに受けてみようと思い立ったのは、11年前に比べてはるかに経験値が増し、路上ライブに対する手探り状態も克服したことがまずある。
 さらには、活動を始めて5年になったチカチカパフォーマンスに、このところ頭打ち感があることで、来年以降のライセンス更新もどうなるか流動的だ。活動できる場所は多いに越したことはない。年頭に密かに掲げた目標「活動場所を広げる」の一環である。
 私は始まった年に合格したので、いわば一期生。しかし、いったん更新を怠ると、当然ながら受け直しとなる。
 経歴等を記した一次書類審査は無事に通過し、今日は二次実技審査の実施日。実施時間に関し、当局には第3希望までを提出したが、幸いに第1希望の午前11時台が割当てられた。


 早めに起きて喉の調整をする。11年前に合格したからといって、今回も合格する保証はない。気温はぐんぐん上がって、午前中から25度を突破。最終的には28.3度まで上がった。審査会場は合格後の活動場所となる赤れんが庁舎前庭。20分前に会場入りしたが、どこにも審査員の姿はない。
 とりあえず機材を組み立て、いつでも始められるようスタンバイする。3分前になってようやく3人の審査員(道職員)が現れた。直接の担当は朝9時に参加確認の電話があった20代と思しき女性。他に40代前後の女性と50〜60代の男性である。
 どこで歌うべきか確認すると、「このあたりどこでも結構です」とのこと。迷ったが、陽射しが強い建物側ではなく、太い木が心地よい木陰を作っている場所を選んだ。正面玄関から遠いので人通りは少ないが、立ったままの審査員にも涼しく、11年前に何度か歌ったことのある場所だった。

 11時ぴったりに開始。前回は3曲ともオリジナル曲で臨んだが、今回は冒険を避けて老若男女に受ける無難な曲を選んだ。

「ビリーヴ」「エーデルワイス」「時の流れに身をまかせ」


 電源や音響設備は一切なく、全て自前が条件である。以前は音響一式と専門スタッフがいたが、経費節減の流れか、あるいは機材設置まで含めたパフォーマンス能力を見極める意図があるのだろうか。
 チカチカパフォーマンスや小樽運河路上ライブで使い慣れた機材なので、あまり問題はなかった。

 歌い始めたとたん、どこからともなく人が集まってきて、一気に10人ほどに達する。スマホで動画撮影を始める人もいる。終わると盛んに拍手。
 事前の告知等はされてなく、私もネット等での告知は一切しなかったので、純粋に歌だけで集まってきた人々だった。前回はなかった現象で、歌い手としては非常にやりやすい。
 平日だが、行き交う人々に外国人の姿が以前より多くなった。東南アジア系のほか、欧米系も混じっている。11年の間に世情は大きく変わったようだ。
 思いがけない反応に勇気を得て歌い進んだが、2曲目の「エーデルワイス」の途中で、急に風が強くなった。電子譜面搭載のマイクスタンドが大きく揺れ、いまにも倒れんばかり。
 実は「ビリーヴ」の間奏で左手のセーハが甘くなり、一瞬音がブレるという失敗をしている。もしここでスタンドを倒したりすると、演奏のやり直しや電子譜面の故障など、まずい展開になりかねない。そうなれば合格はおぼつかない。
 危険を察知し、素早く右足でスタンドの脚を押さえつつ歌い続ける。足は終了まで離さなかった。

 オーディションなので、普段の路上ライブでは設置しない大型の看板をマイクスタンドにぶら下げたのが風を受けた大きな要因。万事ぬかりないつもりでいても、何が起きるか分からないのが修羅場としての路上ライブ、そしてオーディションである。


「エーデルワイス」でちょっと引いた人の流れが、「時の流れに身をまかせ」で再び戻った。この曲は東南アジア系の観光客が多い場所では特に強い。今年3月のチカチカパフォーマンス・オーディションでも最後に歌ったが、まさに私の最終兵器となりつつある。

 終わると通りすがりの観光客のほか、審査員の方にまで拍手をいただいた。短い時間だったが、久しぶりに歴史的建造物の前で歌う機会を得て、ちょっと気持ちが高揚した。
 小樽運河と同じ観光地だが、国の重要文化財ということもあって、そこに吹く風が微妙に違う気がする。(合格発表は今月末)