いわゆる「細いが、確かな関係」が続いている例で、年に何度ものペースで集中的に依頼されるのも決して悪くはないが、結果として長続きするのは、細くとも確かなこうした関係なのだった。
特養ホームとデイサービスを併設した施設で、専用の舞台つきホールがあり、天井も高くて広い。聴き手も100名前後と多いので、昨年からは音響をサブスピーカーを使ったPA2台方式に改めた。
駐車場からの移動がスムーズに運ぶよう、機材一式はキャリーカートに積んだ。自宅から25分と比較的近く、開始20分前の14時10分に先方到着。ゆっくり設営して、14時20分にはスタンバイした。
聴き手もそろったので、予定より早めにイベントを始めることになる。まず施設長さんの挨拶があり、続いて私の出番となった。
14時32分から始めて、先方の希望通りぴったり30分で11曲を歌う。
「憧れのハワイ航路」「バラが咲いた」「お富さん」「二輪草」「幸せなら手をたたこう」「いつでも夢を」「月の沙漠」「青春サイクリング」「夜霧よ今夜も有難う」「時の流れに身をまかせ」「花〜すべての人の心に花を」
夏メニューということもあって、8曲目の「青春サイクリング」までは、4日前に歌ったデイサービスライブと全く同じ構成である。この日も暑い夏日で、条件としては4日前と酷似していたが、場の反応は大きく違っていた。
特養とデイサービスの利用者が混在している関係で、聴き手の的を絞りにくい。当初からの傾向だが、場の反応は全体的におとなしかった。場の半分を占める特養の利用者にその傾向が強かった。
手拍子や共に歌う姿はそれなりにあったが、もっぱらデイサービス利用者からのもの。利用者層が異なる聴き手を前にしたライブは増える傾向にあるので、対応は今後ますます難しくなりそうだ。
終了後、これまでなら「アンコール!」の声が必ず上がったものだが、今回は進行のNさんが、なぜかイベントの終了を告げてしまう。
「アンコールはないのかい?」とのつぶやきが客席から聞こえたが、そもそもアンコール(この場合はお約束アンコール)の有無を事前に確認するのを、うっかりして忘れていた。
いずれにしても、自然発生のアンコールが出る雰囲気ではなかったことは間違いない。あとでNさんが言っていたが、必ずアンコールを出す利用者が、今回に限って客席にいなかったという。
アンコールでシングアウトする心づもりもあり、自分としては消化不足のライブだったが、Nさんや施設長さんからは喜んでいただいた。自分の思いと施設側の評価とは必ずしも一致しない。まずは施設側に満足していただくことだ。