実はオーディションの希望日時も、このチカチカパフォーマンスの予定に合わせて出したもの。同じ日に両方のスケジュールを効率的にこなしてしまおう、という目論見からだった。
手続き後に地下広場へ向かうと、似顔絵のますみさんが会場入りしていたが、他のパフォーマーはまだ来ていない。平日の午前中なので、さすがに出遅れているのか。オーディションの緊張感がまだ心身に残っていたが、ただちに設営して11時40分くらいから始める。
およそ30分弱で10曲を歌った。
「愛燦燦」「青葉城恋唄」「アカシアの雨がやむとき」「亜麻色の髪の乙女」「アメイジング・グレイス」「雨が空から降れば」「見上げてごらん夜の星を」「イエスタディ」「池上線」「空も飛べるはず」
13時までは節電措置があり、広場は暗い |
5月からの開催時間拡大措置に伴い、11時からのパフォーマンスが可能になったが、声の出にくい午前中ライブは極力避けたかったので、午前中に歌ったことはまだなかった。
しかし、広場の開放枠がこのところ減る傾向にあり、それに伴って枠毎の競争率も高くなっている。人気のある土日枠は、ときに抽選が実施されたりもする。
前回は自分では早いつもりの12時40分に会場入りしたが、それでも到着は3組中のラストで、長い待ち時間があった。仮に午前中から歌い始めてそれなりの手応えがあれば、競争率の低いこの時間帯は狙い目だった。
そんな思いで試みたが、いざ歌い始めても手応えは非常に弱かった。最近になって事務局から騒音に関して以前より一段と厳しい通達が出され、この日は普段よりもさらにボリュームを下げ、バラード系の静かな曲を主として臨んだ影響もあったかもしれない。
音を下げて静かに歌えば騒音のクレームは出づらいが、相対的に音は届きにくくなるので、集客面ではマイナスになる。「パフォーマンスで賑わいを創る」という主旨からも遠ざかる。公共空間で歌うことの宿命で、出口のないジレンマだった。
小さな音でも人を引きつける手段が何かあるのかもしれないが、現時点では思いつかない。
小さな音でも人を引きつける手段が何かあるのかもしれないが、現時点では思いつかない。
奇しくも上旬に歌った小樽運河でも同じ騒音の問題があったが、歌い手の気持ちが引いてしまうと、歌はいっそう聴き手には届きにくくなる。
お昼休み直前の時間で、通りを往く人々は昼食に向かうか、昼食前に用事を済ませたい人が多かった可能性もある。関心を示しても、1曲を聴き終えぬうちにそそくさと立ち去る、という負の連鎖が続き、やがて持ち時間が尽きてしまった。
歌の途中で次のパフォーマーが会場入りしたので、場を譲る。オーディション終了の軽い脱力感と暑さ、そして空腹と手応えのなさとがないまぜになり、歌い続ける気力が減退している自分を感じた。
3人目のパフォーマーが続けて会場入りしたのを潮に、1ステージのみで撤収することに。
場所や状況は異なるが、直前に歌ったわずか10分間の赤れんがオーディションのほうが、はるかに手応えがよかったという皮肉。自分の技量が落ちたわけではないと信じたい。
幸いに来年3月まで歌うためのライセンス延長権利はすでに確保している。8月以降も広場の開放枠は多くなく、例年後半期は介護施設系のライブで忙殺される。自分のあるべき姿を見つめ、考え直すには、絶好の冷却期間であろう。