2016年3月31日木曜日

突発的シングアウト

 第9期ラスト、そして3月4度目となるチカチカパフォーマンスに参加。昨年は一度もなかった月に4回のエントリーで、今年は介護施設系の依頼がそう多くないことが大きな理由だ。
 チカホでの年度末と年度始めの集客には例年苦戦している。そこで打開策として、前回試みてある程度の手応えを感じた「座って歌う」スタイルを、今回も続けてやってみることにした。機材にも修正を加えたので、はたしてうまく機能するのか確かめる意図もある。

 街から雪が完全に消え、道路状況が改善されたせいか、前回よりもかなり早く、正味50分で事務局に着く。
 この日も枠いっぱいの3組がエントリーしていたが、なぜか到着は私が一番。看板2つを抱えて指定された地下への階段を下りる。初めて実戦で試すブーム式電子譜面ホルダーや、座面にクッションを加工した組立式椅子の設置に手間取り、始めたのは14時5分くらいからだった。
 およそ30分弱で8曲を歌う。(※はリクエスト)

「恋心」「ケ・セ・ラ・セラ」「恋のしずく」「恋(初披露)」「恋の町札幌※」「恋の季節」「上を向いて歩こう※」「シクラメンのかほり※」
 座って歌うスタイルの神通力なのか、1曲目から立ち止まる人がチラホラと現れた。2曲歌ったところで、70代と思しき男性から「演歌は歌わないの?《湯の町エレジー》とか…」と問われる。残念ながらレパートリーになく、リストを見てもらった結果「恋の町札幌」を歌うことに。
 いい感じで歌っていると若い男性も近寄ってきて、「裕次郎、いいですね〜」と声をかけてきた。最近は市民との交流を第一に考えているので、最初の男性を交えて、あれこれと会話を交わす。


 忙しいのか、2人の男性はここで場を離れる。この日は「こ」から始まる曲の前後を適当に歌っていたが、続けて「恋の季節」を歌っていると中年女性が近寄ってきた。やはり立って歌うより座って歌うほうが、聴き手が近寄ってくる確率がぐんと高まる。
(なぜだろう…)と改めて考えてみたが、座って歌うことで電子譜面の延長線上に通りを往くの顔が見えることに気づいた。歌いながらも聴き手の動きが手に取るように分かり、視線も合いやすい。聴き手との心理的距離感が縮まるはずだ。

 かの中年女性からの「上を向いて歩こう」は、チカホでは初めて出たリクエスト。「お好きなんですか?」と声をかけつつ譜面検索。歌い始めると一緒に口ずさんでいるので、途中から口頭で歌詞指導しつつ歌い進む。女性は気持ちよさそうに手でリズムを取りつつ、最後まで歌ってくれた。
 この様子を見て5人ほどの家族連れが立ち止まり、一緒に歌ったり手を叩いたりしている。つまりは突発的な「歌声サロン」の場となったわけで、無理に仕掛けなくても、その気になればこうした自然の流れの中で聴き手を巻き込むことができるということだ。
 共演の若手ジャグラーが現れたので場を交代し、休憩後の15時15分から第2ステージを始める。およそ30分弱で10曲を歌う。

「大空と大地の中で」「野ばら」「愛燦燦」「365日の紙飛行機※」「ボラーレ」「別れの朝」「時の流れに身をまかせ」「荒城の月」「五番街のマリーへ」「また逢う日まで」

 第2ステージは来週に迫った別のコンサートのリハーサルのような位置づけだった。しかし、これまた1曲目から立ち止まる人が続出した。
 そのうちの若い男性の顔にどこか見覚えがある。曲間で「どこかでお会いしてますか?」と問うと、「はい」と応ずるが、どこの誰であるかは名乗らない。しかし、その受け答えで、5年前に地区センターライブで何度かお世話になった方だと思い出す。
「…さんですね?」と問うと、そうです、よく分かりましたね、と嬉しそうな顔を見せた。お互いに短く近況を伝え合う。不思議な偶然である。


 直後に「愛燦燦」を歌っていると、女子中学生5人組がリクエスト用紙を手にして押し問答しているのが視野に入る。
 1番の途中で声をかけてきたので、歌を途中で打ち切って応対。大人ならば歌い終わるまで待ってくれるが、中学生なら仕方ないか。

「何かリクエストですか?」と問うと、「AKBお願いしま〜す」ときた。これまたチカホでは初めて飛び出したリクエストで、さっそく歌い始めるとかなりの人が集まってきて、自然発生の手拍子まで始まった。なぜか小さな子供にも受けている。
 特に歌詞指導はしなかったが、けっこうな人が一緒に歌ってくれた。第1ステージに続き、突発的シングアウトとでも言うべきか。
 それにしても、「上を向いて歩こう」や「365日の紙飛行機」がこれほど世代を越えて人気があるとはオドロキである。よく心に留めておこう。
 このところ停滞気味だったが、前回に引き続き、この日もオリジナルCDが売れた。それやこれやで、数ヶ月ぶりの売上げを記録。詳しく書けないが、過去に一度しかなかった滅多にないことも起きた。もしかすると、これも「座って歌う」ことと関係があったかもしれない。

 今回初めて試したブーム式電子譜面ホルダーと組立式椅子のクッションは、全く問題なく機能した。組立てを急ぎすぎて指に切り傷を作ってしまったが、当分はこれでいけそうだ。
 反面、ヒモ式のLED灯はまるで目立たず、途中から片づけてしまった。もっと明るいものでないと、使い物にならない。
 いろいろあったが、オーデション通過後に実証試験していた聴き手との新たな交流方法に、一定の方向性が見えたように思える。

2016年3月30日水曜日

ライブ機材の微修正


 チカチカパフォーマンスの新たなアイテムとして、ボタン電池で点灯するヒモ式のLED灯をアマゾンで買った。本来は夜間のランニング用で、靴ヒモとして使うべきもの。2本セットで送料税込で398円だった。マイクスタンドに吊るせば、暗い地下通りで人目につきやすいのでは?と甘い期待を抱いた。
 しかし、思っていたより光が弱い。これでどの程度集客に効果があるのが、やってみるまで分からない。

 ジャグラー系のパフォーマーでLED灯をヨーヨーや装飾に使っている人がいるが、集客面でかなり効果があるという。
 音楽系のパフォーマーの場合は、光よりも音で勝負すべきとも思うが、従来からリクエストスタンドに1灯だけ吊るしている100均ダイソーのLED灯には、それなりの効果を感じる。まずは試してみることだ。


 併行してチカチカパフォーマンスで使っている組立式椅子用のクッションを作った。現状の座面はOSB合板そのままで、お尻がすぐに痛くなる。
 ダメになったコーデュロイズボンの一部をリメイクしたが、間に薄いスポンジも挟んだので、なかなかいい感じに仕上がった。

 さらには、先日作ったブーム式電子譜面ホルダーに改造を加える。実際に歌ってみるとブーム部がやや長い感じで、マイクスタンドへの負荷も大きい。軽量化の意味でも、短いに越したことはない。35ミリ切ってL=350とした。
 ライブ機材の細かい改造修正に終わりはない。

2016年3月29日火曜日

思いがけずマイナンバー

 週明けと月末とが重なったせいか、いろいろな作業が集中して、午前中から対応に追われた。
 まずは先週始めに納めた仕事(3D-CG)の修正が5件まとめて入る。明日中に仕上げればよいので、ひとまず作業は午後に回し、昨日のチカチカパフォーマンス打合せで要請のあった、マイナンバー通知カードの処理を先にやる。

 CD売上げ等の源泉徴収の際に各パフォーマーのマイナンバーが必要になるそうで、ライセンス再登録に伴うもの。来月中旬までに送ればよいが、かんぽ生命の支払いにも同様にマイナンバー通知カードを提示する必要があり、まとめて処理することにした。
 かんぽ生命は原本を提示するが、チカチカパフォーマンス事務局にはコピーをとって特定記録郵便で送るか、カードをスキャンしてメール添付で送るかの選択ができる。ちょっと考えたが、安くて早いメール添付を選んだ。
 それにしても、届いた当初はあまり縁がないと思っていたマイナンバーだったが、意外なシーンで続けざまに必要になるとはオドロキだ。


 その後在庫が少なくなったオリジナルCDの増刷作業をしつつ、CGの修正作業に取り掛かろうとしたら、ライブ依頼のFAXが突然届く。
 2年前にチカチカパフォーマンスで出会い、その後いろいろな場に招かれて歌わせてもらっているS子さんからだった。街づくりサロン系の新たな場で歌っていただけないか?との打診。メールに対応していない方なので、近況も含めて返信をしたため、ただちにFAXで送信した。
(この種の作業は時間をおかず、なるべく早く済ませることが肝心)

2016年3月27日日曜日

ハズレは許されない

 このところしばらく機会がなかったが、5週間ぶりに市内の介護施設誕生会で歌った。
 訪問先は10年前にネット経由で初めて依頼された有料老人ホーム。ここで歌うのは4度目で、市内にある系列施設からは、その後定期的に依頼が続いている。

 施設長さんは10年前に初めて歌った際は、まだ主任だった方。その後移動や昇進を重ねて管理職まで上り詰め、私の還暦コンサートにも来てくださった。
「久し振りですね〜」「あちこちでご活躍のようで」などと、出迎えてくれた玄関で親しく言葉を交わす。こんなとき、長い日々の積み重ねを感じずにはいられない。
 14時15分から施設側のイベントがまずあり、14時32分からライブ開始。15時の終了時間を厳守ということで、およそ27分で9曲を歌った。

「北国の春」「宗谷岬」「お富さん」「二輪草」「長崎の鐘」「上を向いて歩こう」「月の沙漠」「誰か故郷を想わざる」「東京ラプソディ」

 介護施設で歌うのが久しぶりで、それも最近はデイサービス系が大半を占める。有料老人ホームとなると前回がいつだったのか、思い出せないほどだった。
 デイサービスと比べて定住性や年齢層が高い有料老人ホームは、たとえ勝手知ったる場であっても、構成は難しい。前回は2年前に歌ったが、記録を調べると「的が絞りきれず、非常に苦戦した」とある。


 前回も長いブランクがあり、叙情系なのかニギヤカ系なのか、古い歌なのか新し目の歌なのか、聴き手の嗜好がまるで読めなかった。今回も直前まで迷いに迷ったが、リスクを避けて古い曲と新し目の曲のミックスで臨むことにする。
 前回反応が弱かった「聴き手巻き込み型」の曲は外し、手拍子があってもなくてもどちらでも聴ける曲を選んだ苦心の構成となった。
 まるで初めての場のように手探りで歌い始めたが、期せずして1曲目からいきなり手拍子が飛び出す。リードしているのは前回より遥かに多く会場にいた職員のみなさんで、なんといつの間にか施設長さんまでその輪に加わっている。
 前回訪問時は施設長さんの赴任直後だったが、その後時を経て、運営手法が施設全体に周知徹底されたのかもしれない。

 こうした職員さんの積極リードは歌い手としては大変ありがたく、楽しい雰囲気でトントンと場は進んだが、中盤に入れた叙情系の曲「長崎の鐘」「月の沙漠」で場が少ししんみりした。「長崎の鐘」の手応え自体は決して悪くなかったが、もう少し早めに歌うべきだった。
 2つの叙情系の曲の中間に配置した「上を向いて歩こう」は、気分転換のつもりで前日になって急きょ差し替えた曲だったが、「長崎の鐘」の気分を場が引きずってしまった感じで、いまいちノリが悪かった。ここは「月がとっても青いから」「高校三年生」あたりが適当だった気がする。
 ラスト2曲で場の気分は盛り返し、楽しく終えることができたが、曲の配置構成は本当に難しい。
 ともあれ、長くお世話になっている施設長さんには喜んでいただき、どうにか顔をつぶさずに済んだ。路上ライブと違って、聴き手が最初から用意されている場は集客の心配がないので楽といえば楽だが、その反面「ハズレ」が許されないので、全く異なる緊張感がある。
(路上ライブでの「ハズレ」は、自己完結すべきものと考えている)

 歌い手としてはいろいろな場面でのバリエーションをせいぜい楽しむべきか。

2016年3月25日金曜日

散髪ハサミを補修

 土手のフキノトウが芽吹き始め、もうすっかり春だと油断していたら、彼岸が過ぎてからまた急に寒くなり、なごり雪も降り始めた。昨日は未明から降り続き、10センチほども積もった。
 さすがに除雪車がくるほどではなく、1日で解けてしまう春のあわ雪。しかし今日もまた断続的に雪が降り続き、終日冷え込んだ。
 時折陽も差したので日中の暖房はかろじて免れたが、午後3時に歯科の予約が入っていた妻が出かけるころは、ひどい吹雪。自転車はもちろん、歩くのもイヤだと言うので、1キロ足らずの距離だが、車で送って行った。

「彼岸七雪」などといって、彼岸が過ぎても7回は雪が降るから油断しなさんな、という格言らしいが、それを地で行く陽気である。


 最近になって散髪ハサミがまた壊れた。買って30年近くにもなるが、持ち手の一部が折れたのが、確か10年ほど前のこと。
 破損部は薬指のあたるフック部分で、切れ味そのものには問題がない。しかし、これがないと非常に切りにくいので、ボンドで接着してだましだまし使っていたが、定期的に脱落する。

 補修方法を根本的に変え、「プラスチック溶接」という手段で補修し直したのがちょうど1年前。しかし、また壊れた。
 今回はまたまた補修方法を全面的に見直し、欠損部の接着は諦めて、新たな金属部材を使って形成し直すことにした。


 使ったのは大型のゼムクリップ。針金の太さが1ミリほどあって、丈夫そうだった。これを2センチほど切り取り、ローソクの火で端部を熱して、素早くハサミ本体の欠損部中心に差し込む。
 熱いので、作業は全てプライヤーにつまんでやった。

 程なくして冷えると固まって動かなくなる。ニッパーで適当な長さに切り、プライヤーで形を整える。端部は短く折り曲げた。
 念のため、熱したハンダ用電気ゴテでハサミ本体のプラスチックを一部溶かし、針金周囲に盛り上げる。冷えて固まったあと、ヤスリで整形して終了。


 今回の補修でどれくらい持つのか、やや不透明だ。しかし、仮に針金が脱落しても、同様の補修で凌げる気がしないでもない。

 ハサミの持ち方をネットで調べていたら、小さい方の穴には薬指を入れて使うものらしい。フック部には小指を添えるのが正しいとか。
 ところが私は、ずっとこれまで中指を入れて使ってきた。フック部に添えるのは薬指だ。試しに正式なやり方でやってみたが、まるでやりにくい。ハサミが小型ということもあるが、今後もセオリー無視の「中指操作」でやっていく。

2016年3月23日水曜日

「ちえりあ」で歌います

 以前に少しだけ予告したが、市内西区にある「ちえりあ」(札幌市生涯学習センター)で歌わせてもらえることになった。
 7年前から始まり、毎月一回実施されているロビーコンサートで、私の出演は4月9日(土)の第83回目。

 以前からその存在は知っていたが、クラシック系出演者が過去に多く、ソロ演奏者は稀。どことなく敷居が高いイメージがあり、気持ちにも臆するところがあって、応募はためらっていた。
 とはいえ、「今年は歌う場を広げる」などと年頭に宣言したこともあり、ようやく踏ん切りがついて応募することに。
 歴史があって最近は注目度も上がりつつあるらしく、音源提出はないが、書類選考がある。初めての挑戦だったが、何とか選んでいただいた。


 出演決定後に担当者とメールで細かい打合せや書類提出を済ませ、今日は会場確認と顔合わせをかねて直接施設に行ってきた。
 ちえりあに行くのは初めてだったが、地下鉄駅に直結する立派な施設で驚いた。図書室を始め、市民の生涯学習を支援するさまざまな施設や講座がある。

 コンサートが行われるのは、玄関を入った場所に広がる巨大な吹抜けのあるロビー。いかにも音の響きが良さそうな大空間だ。このロビーの真ん中あたりに仮設のステージと100席の椅子が並ぶ。

エスカレーター前あたりで歌う。手前に客席が並ぶ。

 細かい音響関係や進行関連の打合せと、セットリストの提出が今日の目的。多ジャンルから8曲を選んだが、「生涯学習」を旨とした場なので、対象年齢はやや高めに設定した。

 1曲毎に秒単位での所要時間を記入する必要があり、繰り返し歌って確かめた。講座の障害になるので、音を出せるのは昼休み時間に限定される。
 リハーサルの類いは出来ず、時間には非常にシビアなものが要求されるが、そのあたりはチカチカパフォーマンスや介護施設系ライブで充分慣れている。
 すでに詳細な案内リーフレットがネットを始め、市内各所で配架されている。公的空間なので交通費や謝礼は一切出ないが、広報には力を入れてくれるので、集客の心配は全くない。
 当日はコンサートの様子を専門スタッフが動画撮影し、YouTubeにアップ。後日DVDでもいただけるという。他の公的施設にはない計らいで、楽しみだ。

第83回ちえりあロビーコンサート
・2016年4月9日(土)12:30〜13:00
・札幌地下鉄東西線、宮の沢駅直結・ちえりあ1階ロビーにて
・入場無料(座席数は100)


 みなさま、お誘い合わせのうえ、ぜひおいでください。
(今回、リクエストはお受けしません)

2016年3月22日火曜日

座って歌った

 3月3度目のチカチカパフォーマンスに参加。例年この時期は介護施設系ライブの依頼が少なく、たまたまチカチカパフォーマンスの割当て枠が多いので、いつもより歌う回数が増える。
 この日は前回に引き続き、「チカホで歌声サロン」の新パターンを試すつもりだった。前回は看板表示と声かけを試したので、今回は審査委員長から提案のあった「座って歌う」スタイルを久しぶりにやってみる。

 どの場でも「立って歌う」を自分の標準スタイルにしているので、座って歌うには事前の準備が必要だった。自宅スタジオに本番と全く同じ機材をセットし、数日間試す。
 座って歌うには組立式の椅子と専用の電子譜面スタンドが必要で、量ってみると重量が1.3Kg増える。前回から往復4キロの道を歩いて会場にむかう「究極の節約コース」をとっているので、機材はなるべく軽いほうがいい。
 そもそも立って歌うほうがフットワークがよく、声も出やすい。しかし、「座って歌えば、周囲に人が集まってきやすいのでは?」という提案も無視できない。まずは試してみることだ。
 この日も3組の共演だったが、普段やや遅れてやってくるパフォーマーだったので、早めに会場入りする。案の定広場には誰もいず、事務局での受付も私が最初。2種類の看板を持ち、久しぶりにトップで演ることになった。
 定刻よりやや遅れて、14時4分から歌い始める。短い休憩をはさんで、計1時間で16曲を歌った。(※はリクエスト)

《前半》
「時の過ぎゆくままに」「ドミノ」「なごり雪」「長崎は今日も雨だった」「桃色吐息」「小樽のひとよ※」「ダスティン・ホフマンになれなかったよ※」「池上線※」「天城越え※」

《後半》
「釜山港へ帰れ」「鱒」「時の流れに身をまかせ」「野ばら」「愛燦燦」「抱きしめて(オリジナル)」「池上線※」


 この日も構成は多ジャンル思いつき型を採用。時節柄「なごり雪」を歌いたかったので、「な行」とその前後の曲を適当に選択した。
 3連休直後の週初めとあって、人の足取りは一様に早い。スタート3曲までは全くの無反応。年度末ということもあって、足を止めて歌うを聴く余裕もないように見えた。過去の記録でも、この時期は例年聴き手の反応が弱い、とある。
 それでも4曲目の「長崎は今日も雨だった」から立ち止まる人が増え始め、「桃色吐息」でかなりの数になる。直後にリクエストが出て、それを機に4曲続いた。

 この「忙しい状況下でも多くのリクエストが出た」という事実は、もしかすると「座って歌う」というスタイルと心理的につながっていたかもしれない。このあたりはもう少し見極める時間が必要だ。

「ダスティン・ホフマン…」は当初「過ぎ去りし想い出は」を望まれたが、あいにくレパートリーになく、妥協案として歌ったもの。大塚博堂は要望が多いので、今後レパートリーを増やさなくては。
 リクエストが連発した時間帯で聴き手は10人ほどに達したが、「天城越え」を潮に一斉にその場から消える。前回もそうした傾向があったが、滞留時間が10数分と短い。
 実はこの日はラストに「また逢う日まで」をその場に居合わせた方々とシングアウトするべく、完全に暗譜して備えていた。座っている状態からPAの接続を切って立ち上がり、聴き手に近寄って歌いながら歩く、という構想である。
 これまたオーディション時に審査委員長から出たアイデアで、2つを一気にまとめてやってしまおうと考えた。しかし、どうやらタイミングを逸してしまったようだ。その後人の集まりは散発的になり、とてもシングアウトを仕掛ける状況ではない。

 聴き手が途絶えたので、最後と思って久々にオリジナルを歌っていたら、目の前にきて熱心に聴いてくれる中年女性が現れる。
 聴き終えた女性、「あのう…、もう一度《池上線》を聴きたいのですが、ダメでしょうか?」と尋ねてくる。
 たったいま歌ったばかりなので、先ほどの方ですか?と確かめると、違うという。通りかかって最後のフレーズだけ聴いたが、どうしてももう一度最初から聴きたくなり、用を済ませて広場に戻ってきたという。ありがたい話なので、もちろんお応えした。
 歌い終えたちょうどその時、共演のパフォーマーが広場に現れたので、ステージは終了とさせていただく。その場に残った女性としばし歓談したが、若いころに東京の西武線沿線に住んでいたことがあり、似た情景を描いたこの曲には、強い思い入れがあるという。
 実は私も以前、池上線の近くに住んでいて、歌の世界そのままのシーンを実体験しているのです、などと応じた。
 好きな歌だが、最近はとんと聴く機会がない。まさか生歌で聴けるとはと、大変喜んでくれた。大塚博堂のリクエストでも同じ主旨のことをよく言われるが、この「いまでは滅多に聴けなくなった名曲」というのは、路上系シンガーが発掘し、歌い継いで行くべきではないか。

 ねらっていた歌声サロンとしての明確な効果は得られなかったが、やはり座って歌うスタイルは、聴き手との距離感を縮めるのに有効のようだ。機材重量の問題はさておき、今後も状況に応じて仕掛けてみたい。

2016年3月20日日曜日

ワットチェッカーを買った

 暖房ボイラの買い換えにあたって、消費電力の変動傾向がどうしても調べたくなり、ついにワットチェッカー(簡易電力量計)を買った。
いろいろ調べたが、なるべく広い範囲の消費電力が計測可能で誤差の少ないもの。そしてなるべく安いものを選んだ。

ELPA エコキーパ EC-05EB

アマゾンでの価格は、2016.3現在で送料税込1,555円。およその性能は以下の通り。
・コンセントに挿して電源タップのように使う。
・1W〜1500Wまでの消費電力が計測可能。
・「瞬時電力量と積算電力量」「1時間あたり電気代と積算電気代」「使用時間とC02排出量」以上の組合せがボタンを押すたび、順番に切替え表示される。
・本体の消費電力は1W以下。


 さっそく暖房ボイラの消費電力を数日間かけて測ってみた。普通にコンセントに差しこんで使うが、本体が上に飛び出すので、二口なら上の差し込み口を使うことになる。
 対象機器の差し込み口は本体右側に限定されるので、狭い場所だとやや使いにくい。うまく収まらない場合は、別の電源タップを中継させて計測する。

 液晶はかなり見にくい。暗い場所だと懐中電灯が必要だ。1W以下の待機電力は測定不可能で、小数点以下の数値は繰り上げ表示される。予算を上げれば0.1Wまで計測可能な品もあるらしい。しかし、そこまでの精度は必要なかった。
(安い商品は5W以下の測定ができないので注意)


 いろいろな機器をテストしてみたが、これまで謎だった部分が、かなりはっきりした。ボイラの各種計測値は以下の通り。(カッコ内数値は取説にある定格値)

《暖房ボイラ》
・待機時 8W(未記載):完全OFFの状態
・点火時 656〜673W(595W):約5分継続
・燃焼時 68〜78W(64W)
・非燃焼時 61〜63W(未記載):循環ポンプのみ稼働
・再点火時 640W(未記載):約1分継続

《給湯ボイラ》
・待機時 13W(10W):完全OFFの状態
・点火時 515〜532W(495W):約3分継続
・燃焼時 654〜563W(330W):時に36〜49Wに下がる
・非燃焼時 14〜16W(未記載):種火のみが点いている
 両ボイラとも、購入後すでに16年以上が経過しているので、かなり効率が落ちているように思える。定格値よりも大幅に数値が大きいのは、その経年によるものだろうか?
 待機電力は最新機種だと1.2Wのものがあるので、それに比べてかなり大きい。ボイラ本体の凍結防止の意味もあって、基本的にコンセントには差しっぱなしなので、待機電力の少ない機種を選ぶのは重要なポイントだ。

 暖房ボイラは循環水の温度が設定値よりも上がると自動的に燃焼ランプが消え、アイドリングのような状態になるが、その際も消費電力はそれほど下がらなかった。半分くらいになると思い込んでいたので、期待はずれ。
 循環水の温度が下がると再点火となるが、その際にも点火時と同じくらいの電気が消費されることが分かった。これは新発見だ。時間は約1分と短いが、このONOFFが1時間に2〜3回は繰り返されるので、馬鹿にならない。
当初思っていた通り、頻繁にONOFFを繰り返す過大な機種設定は考えものだ。
 給湯ボイラを使用中でも、時に消費電力が1/10以下に下がることがある。設定温度と湯量により、微妙にバランスをとっているらしい。
 給湯ボイラをいったんONにし、そのまま種火をつけっぱなしにしても、消費電力はオフ時の待機電力と大差ないことを知る。(電気代がもったいないから、続けざまに入浴しなくては…)と、いつも気が急いていたが、そう神経質にならずともよさそうだ。

 パソコン関連の消費電力傾向は、次の機会にでも。

2016年3月18日金曜日

チカホで歌声サロン

 3月2度目のチカチカパフォーマンスに参加。先週末に実施されたライセンス更新オーディションに合格できるかどうか分からなかったので、オーディション以降のエントリーは自重していた。
 ルール上、3月いっぱいはそれまでのライセンスが有効だったが、仮に落ちてしまった場合、「あなたは不適格」と宣告されたことになり、とても以降のパフォーマンスを続けられるものではない。

 5月のような陽気が続き、街の雪もみるみる解けている。今日は先日開拓した「量販店駐車場から2キロ歩く」という究極の節約コースをパフォーマンスとしては初めて使い、会場に向かった。


 昨年末に思いつき、順路を確かめて以来これが4度目の通行。ガード下の通路もほとんど雪はなく、キャリーカートの運搬もスムーズだった。
 途中、ビルの陰にあたる部分は一部ぬかるんでいたが、大きな支障ではない。20分強で無事に到着。地下通りと直接つながっていないビルに事務局が移転したばかりだが、この地上経路だとそのままビルに入れる、という利点がある。

 この日もジャグラー2組との共演で、到着順に私の出番は2番目。14時40分から始めて、およそ25分で8曲を歌う。(※はリクエスト)

「さくら(直太朗)」「さくらんぼの実る頃」「五番街のマリーへ」「酒よ」「酒と泪と男と女」「ダニーボーイ※」「桃色吐息※」「知床旅情」
 この日は先週末のオーディション時に審査委員長から提案要望のあった「路上で歌声サロン」が果たして可能かどうか、初めて試すつもりでいた。
 通りに置いたリクエスト用紙スタンドには、「チカホ歌声サロン」と称した看板を掲示した。「最後にみなさんと歌います」「歌詞は口頭でお伝えします」「どなたでも歌えます!」などと記し、予定曲として、「知床旅情」「また逢う日まで」の2曲を具体的に付記。どんな反応があるのか、まずは手探りのスタートである。


 最初の数曲は人集め目的で、前回から始めてまずまずの手応えだった「自由気まま路線」を選択。多ジャンルの曲をアトランダムに歌う。この日は時節柄「さくら」を歌いたかったので、50音順の「さ」から始まる曲の前後を適当に見繕って歌った。
 このところ出だしの数曲は集まりがよくない状況が続いていたが、この日は最初から熱心に聴いてくれる方が常にいて、最初から最後まで見届けてくれた方もいた。

 3曲目あたりで「いい声してるね〜」と声をかけてくれる中年夫婦が現れ、ずっとリクエスト用紙を繰っていたが、やがて男性から「ダニー・ボーイ」と「小さな喫茶店」のリクエストが出る。
 まず「ダニー・ボーイ」を歌い、続けて「小さな喫茶店」を始めたら、その曲とは違う曲だという。渡辺はま子が歌っていたというので、何か別の曲と記憶違いがあったのかもしれない。

 その後、別の女性から「桃色吐息」のリクエストがあり、持ち時間が残り少なくなったので、ここで集まっている4〜5人の方に案内し、「知床旅情」を一緒に歌ってもらうことにする。
 フルコーラスを口頭歌詞指導しつつ歌い進め、大半の方がおつき合いしてくれたが、それを聞きつけて他の方が集まってくる、という広がりには至らない。続けて「また逢う日まで」を歌おうとしたら、「どうもありがとう」と、かの中年夫婦がその場を去り、それを潮に大半の方が消えた。
「路上ライブ歌声サロン」という実験的な試みをどう評価すべきか、ちょっと判断に苦しむ。これまでもそうだったが、立ち止まってくれた方は単純に私の歌唱に惹かれただけで、共に歌いたいから集まった、というわけではなさそう。
 しかし、フルコーラスは無理でも、たとえばサビの部分だけを一緒に歌うとか、手拍子を促して賑やかに締めくくるとか、そうした味付けは今後もやってみる価値はありそうだ。
 手法も確立し、いまは軌道に乗ったリクエストも、始めた当初は必ずしもスムーズではなかった。今後も試行錯誤しつつ、進めたい。

 この日もワンステージのみで撤収。このところ常に枠いっぱいの3組がエントリーしているので、待ち時間が長い。当面は短時間で完結するワンステージ方式で臨みたい。同じ理由から歌う場所も前回同様、他と干渉しない北側に設定した。
 もうひとつ、前回からPAのリバーブを一切かけないよう大転換したが、手応えは以前よりむしろよくなった気がする。無理に取り繕わずとも、純粋な声そのもので充分勝負できる。今後はPAを全く使わない完全生歌も考えるべきかも。

2016年3月17日木曜日

南の国の春便り

 昨日に引き続き、初夏のように暖かい陽気。札幌の最高気温は13.4度まで上がった。おかげで昨日除雪した予備駐車スペースの雪はほぼ消えてなくなり、車庫屋根にわずかに残っていた雪も消えた。

 春の到来に歩調を合わせるように、九州の親戚から採れたての筍が宅配便で届く。毎年この時期に送っていただくが、自宅隣の竹林で採り放題という、筍そのものが存在しない北国の人間にとっては、まるで夢のような話。
 米ヌカと鷹の爪まで同梱してくださったので、さっそく鍋で一緒に30分ほど茹で、一晩漬けてアクを抜く。早ければ明日にでも食べられそう。

 裏庭の雪が消えたばかりなので、昨年同様に堆肥用の穴を掘って、むいた皮は自然に返すことにする。


 時を同じくして、別の九州の親戚からキンカンの箱が届いていて、これまた北国にはない珍しい味を楽しんでいる。
 不思議なことに、結婚している子供2人の相手が、いずれも九州生まれ。そんな縁をかみしめながら、春の便りを美味しくいただく。

2016年3月16日水曜日

ラスト雪かき

 小学校の友人の結婚式に出席するとかで、週末に道南から末の息子がやってくる。この時期の帰省は稀なので、冬モードとしてJRで帰るか、あるいは夏モードで車を使うか、当の本人も迷っているようだ。
 途中の道は気温の上がる昼間の時間帯に走れば、そう大きな障害はないはず。問題は冬季は車1台分しか除雪しない、我が家の駐車場事情。

 息子もそれを察して、2度にわたって積雪状況を確かめてきた。最初の知らせがきた直後、いつも停める場所を重点的に雪割りし、30センチほどまで雪は解けた。しかし、まだ息子の大型車が安全に停められる状況ではない。
 今日は最高気温が一気に11度を超えたので、柔らかくなっている残雪をスコップで周辺空地に移動することにした。


 普段は通路の雪を置いている場所なので、量はそれなりにある。床下に片付けてしまった電動除雪機を再度取り出そうかと迷ったが、結局手作業で大半の雪をどかした。

 まだ雪塊は多少残っているが、すでに下の地面は見えている。週末までポカポカ陽気は続きそうなので、あとは自然に解けるだろう。
 冬はとうに峠を越え、もう雪かきなどすることはないと思っていたが、思いがけない事情から、今シーズン最後の雪かきをする羽目に。

2016年3月14日月曜日

路上歌声サロンを画策

 一昨日のチカチカパフォーマンス・オーディションで審査時と合格発表講評の2度にわたって審査委員長から要望のあった「路上での歌声サロン」という難しい課題に関し、久しぶりに入った建築デザイン系の仕事の合間に、いろいろと画策した。

 おそらくは過去にほとんど例のないパフォーマンスであり、当の審査委員長もその場で閃いたアイデアを、思いつくまま口にしたように思われた。噛み砕いて形にするのは、演ずる側の役目だ。
 路上歌声サロンに関して出た要望をまとめると、およそ以下の通り。

1)歌いながら口頭で歌詞指導をし、歌詞カードなしで誰でも歌える状況を作る。
2)たとえば椅子に座って歌い、聴き手が周囲に集まりやすい雰囲気を作る。
3)たとえばギターを抱えて歩きながら歌い、聴き手に近寄ってみる。
(2の「座って歌う」と3の「歩いて歌う」は相反するスタイルだが、「聴き手との距離感を狭める」という意図自体は同じ)
 実はこの3項目全てをすでに別の場で実行済みで、その気になればいつでもやれる状況にあった。用意された場ならそう難しいことではないが、問題は「聴き手がゼロ」の状態から始めるのが宿命の路上ライブで、それがスムーズに演れるのか?ということ。
 まだ手探り段階だが、30分の持ち時間のうちラスト2曲ほどを「チカホ歌声サロン」とし、通りに看板で告知する。その日の予定曲を予め掲示しておき、「ぜひみなさんで一緒に歌いましょう!」などと書いておく。手始めにそんな手段を試してみたい。

 みんなで歌える曲の候補曲を目下絞っているが、いわゆる「歌声喫茶」の定番曲では芸がないので、自分の特徴をある程度活かしたもの、たとえばフォークや洋楽、新しい曲などを重点的にセレクト中。


 並行して、以前にチカチカパフォーマンスでも数回試みた「座って歌う」という体勢に関し、再度の調整を試みた。
 座って歌うと聴き手が通りから見下ろす形になるので、距離感が狭まる、という傾向は確かにあった。問題は普段立って歌う体勢に固定してあるマイクスタンドや電子譜面を、短時間で座って歌う体勢に組み直す煩雑さだった。
 そこで煩雑さの原因となっている電子譜面の着脱に関し、座って歌い場合はマイクスタンド直付けをやめて、譜面台を利用した完全分離式のスタンドを使うよう修正した。
 これにより、マイクスタンドの組み直しはブーム部の角度変更とマイクの挿し方向の変更だけとなり、ごくシンプルなものとなった。

 椅子は改良を重ねた組立式のものがすでにあるので、そのまま使える。全体として機材の重量がやや増えてしまうが、仮に立って歌った状態で思うように運ばなかった場合、再度試してみる価値はありそうだ。

2016年3月13日日曜日

前倒しホワイトデー

 正式には明日だが、いろいろな都合でホワイトデーのお返しは昨日から今日にかけ、はやばやと済ませた。

「バレンタインデーのお返しは食べ物」と決めていて、食べ物としてのチョコレートを貰うのだから、お返しは食べ物、という安直な考えからだ。
 しかし、好き嫌いの分かれる装飾品や衣類よりも遥かにリスクは少なく、あとあとまで残らない消えモノなので、「お遊び」の範ちゅうとしては無難な選択だろう。
 ということで今年のホワイトデーは、近くにある菓子店の名物菓子「スイートポテト」に決定。買物ついでにときどき寄る「桃花堂」という店で、普段は100円前後の和菓子をオヤツ用に買うが、目玉の人気商品は、道外からもわざわざ買いにくるほどという、スイートポテトである。
 高価なのでオヤツとしてはちょっと手が出ないが、ホワイトデーという「ハレの日」なら話は別。近くに買物に行った一昨日、立ち寄って買ってきた。


 妻と長男のお嫁さんの分2箱を買い、少し早いが、お嫁さんの分は昨日のオーディション帰りに直接届けてきた。
 妻にあげた分は、早くも一昨日から2人で分けて食べているが、評判の品だけあって、さすがに上品な甘みが何ともいえない。底にあたる部分には本物のサツマイモの皮が敷いてあり、中にはカスタードクリームが入っている。
「美味しくて、いくらでも食べられます」と、お嫁さんにも好評だった。

 大きさは一様ではなく、バラバラ。販売はg単位で、800円台から2,000円近くまで多種あって、予算に応じて選べる。私は確認してないが、ハネ品を安く売っていることもあるらしい。

2016年3月12日土曜日

久々の公開オーディション

 2年ぶりにチカチカパフォーマンス・オーデションを受けた。4年半、連続9期の長きにわたって活動を続けてきたが、このところチカチカパフォーマンスでは苦戦が続いている。
 合格した当初の集客や売上げは望むべくもなく、その背景にはマンネリからくる聴き手の飽きがあるように思われた。

 2年前に棚ボタ的に得た「特別枠活動者」の恩恵がこの3月でなくなり、今後活動を継続するには、他のパフォーマー同様にオーデションを受け直す必要があった。
 最近は若手ジャグラーによる精力的な活動が広場を席巻していて、ベテランのパフォーマーでも多くが不合格となっている。次はいよいよ自分が落ちる番か、もはや老兵は去るべきなのか…、と一時は弱気な気分にも陥った。
 充分に考えたが、パフォーマーとして適か不適かは自分が決めることではなく、あくまで事務局が判断することだった。冬場の路上系の場として地下通りの存在はやはり捨てがたく、現状の自分が果たしてどこまで通用するのか、最後は挑戦的な気持ちが勝った。


 今回から書類審査が新たに加わって、「公共空間でのパフォーマンスについて、あなたが考えることを述べてください」など、難しい記載事項もある。
 書類審査を通過したパフォーマーは21組。うちパフォーマンス部門は17組で、過去3番目の多さである。(過去最大出場数は、1期と2期の18組)
 更新パフォーマーは5組で、再チャレンジが2組、新人が10組という内訳で、私の出場順は4番。午前11:45開始という、苦手な早い時間帯が当たった。
 前回、息子とのユニットで受けて落ちているので、今回はゲンを担いで妻の同行は頼まず、事前告知も全くせずに、ひっそり一人で密かに受けることにする。

 地下鉄を一切使わず、都心から少し離れた量販店駐車場に車を停め、そこから2キロ弱の道のりをテクテク歩いて会場へと向かった。
 昨年12月の「チカ☆パ・コンペ」の際にも同じ手段を使ったが、3時間以内なら駐車料が無料で、ガソリン代だけで済む。地下鉄利用よりも経費が500円近くも浮く計算で、これは大きい。


 会場に入ったのは11時5分。トップのパフォーマーが始まったばかりで、受付を済ませて楽屋に荷物を置いたあと、トイレで額にバンダナを巻く。これまたゲンを担いで、合格した初回のオーデションスタイルをなぞった。
 その後司会や音響のスタッフと打合せ。今回もマイクスタンドは電子譜面付きのものを持参した。実際には使わないが、リクエスト用紙スタンドも譜面台利用のものを組み立てる。

 あっという間に出番がやってくる。久しぶりのオーデションということもあり、昨夜は緊張で眠りが浅かったが、直前の練習で声はよく出た。
 持ち時間は転換や審査員質疑を含めて15分。ラインケーブルの接続やボリューム調整などもあるので、計11分くらいで収めるべく、1週間前からMCを含めた練習を入念に重ねた。前日には本番と同じ開始時間で演るという念の入れよう。
 慣れた場なのでいざ歌い始めると、すっと腹が座った。音楽系のパフォーマーの多くは2曲しか歌わないが、「幅広いジャンル」が自分の持ち味である。タイプの異なる以下の3曲を準備した。

「大空と大地の中で」:フォーク
「エーデルワイス」:叙情系洋楽
「ブルーライトヨコハマ」「時の流れに身をまかせ」「また逢う日まで」:昭和歌謡


「リクエストを積極的に受ける」が最近の演奏スタイルで、今回もリクエスト用紙を用意したが、オーデションという短い時間ですんなりリクエストが出るとは思えなかった。そこで昨年12月の「チカ☆パ・コンペ」で試し、いい手応えだった「昭和歌謡・三択リクエスト」をラストにもってきた。
 前回は圧倒的に「また逢う日まで」が支持され、今回もそうなるだろうと決め込んでいたが、いざ蓋を開けると、「時の流れに身をまかせ」と「また逢う日まで」が拮抗。しかし、「時の流れに身をまかせ」を強く支持する中年女性が数人いらして、それに押されるように想定外の「時の流れに身をまかせ」を歌うことに。

 他の2曲の場合は事前に手拍子を会場に促すつもりでいたが、この曲は手拍子が合いにくい曲。しかしテレサ・テンには自信があるので、叙情性に重きをおいて歌いあげた。
 すると、間奏で会場から予期せぬ拍手と歓声が湧く。思わず「ありがとうございます」と曲間で頭を下げた。いわゆる「サクラ」は一切会場内にいないので、これぞ真の声援である。全く何が幸いするか分からない。
 終了後、顔見知りの審査委員長から、質問のような要望のような不思議な話が出る。
「会場の方々と一緒に歌うスタイルを、今後取り入れてはいかがでしょう?」と。
「今後」と言われたから合格が決まった、と考えてはいけない。そう甘くはない。浮かれずに「デイサービスでは、すでに一部その手法で演っています」と応ずる。

 実はラストを歌う前に「歌詞をご存じの方は、どうぞご一緒に歌ってください」と告げてあった。どうやら歌の途中で、「歌いたいけど、歌詞が…」という声が審査席後方であったらしい。
 リクエストを取り入れるのはよい進め方だが、歌詞カードなしの「曲間の口頭歌詞指導」という手法で、さらなる聴き手の参加を促しては?という提言である。30分の中でラスト1〜2曲なら、それもありだろう。やってみる価値はある。


 いったん家に戻って遅い昼食を食べ、合格発表に備えて夕方に再度会場へと向かう。不合格も覚悟していたが、結果は合格だった。パフォーマンス部門の合格者は8組で、合格率は47%と相変わらずの狭き門。長く演ってきた方もまた一人落ちた。

 音楽系は弾き語り系が5組受けたが、合格は私を含めて2組のみ。もう1組が4年前に知り合った20歳の女性ユニットで、久々に若い音楽系パフォーマーの誕生となった。うち一人は実力派だが、数年前にソロで受けて落ちている。「良かったね」と声をかけたら、うれしそうに微笑んでいた。
 ただ上手いだけでは合格できないのが、このオーデションの難しさ。公的空間を使って演る以上、求められるのは周囲との爽やかなコミュニケーション能力のようだ。
 講評で審査委員長から名指しで声をかけられた。「菊地さんには歌を通じて《チカホ歌声サロン》のような場を作り上げて欲しい。ジャグリング系パフォーマーには演れない世界です」と再びの要望。難しい宿題だが、今度は合格発表後のハナシなので、本気で考えなくては。

 まだ構想段階だが、30分を3つに分け、前半を人集め目的でMCなしの自由なスタイルで歌い、中盤で声かけリクエスト、終盤を歌詞指導つきの歌声サロンふうに締める、という構成を考えている。
 思いがけず新しいことにチャレンジできそうだが、まずは無事にオーデションをくぐり抜けたことを喜びたい。