2015年1月11日日曜日

綱渡り的新春ライブ

 市内のお寺での新春祈祷会コンサートに出演。依頼はネット経由でかなり前にあり、担当の住職Yさんには事前にチカチカパフォーマンスを聴きに来ていただき、その後会場となるお寺の本堂にも出向き、下調査まで済ませていた。
 PAは本堂に備えつけの立派な設備を使用することになり、持参する機材としては、電子譜面搭載のマイクスタンドとギターだけという軽装備。万事ぬかりなく、気がかりは豪雪による交通障害だけのはずだった。
 前日に大雪が降って今冬2度目となる陸の孤島状態に陥ったが、深夜になってようやく除雪車がやってきて、交通障害の不安は消えた。
 早めに起きて車庫前を除雪。念のため前夜から予備として準備したPA一式を車に積み込もうとリモコンキーを操作するが、なぜか全く動作しない。1年ほど前にも起きた電池の劣化かと考え、手のひらで温めてみたが、変化なし。
 やむなく直接鍵穴に入れてドアを開け、車を少し前に出そうとエンジンキーを回したが、うんともすんとも言わない。(しまった…!)と天井を見上げると、室内灯のスイッチがONのまま。消し忘れでバッテリが上がってしまったのだ。
 過去にも2度、似たような間違いでバッテリを上げている。またやってしまった…。

 短い時間で対策を考える。出発時間が迫っていたので、近所の方にバッテリ起動をお願いするしかない。隣家に駆け込んで事情を話し、ブースターケーブルでバッテリ間をつないで始動を試みるが、うまくいかない。
 大型の車に変えて再度試みても同じで、完全にバッテリがやられているらしい。この時点で車での移動をあきらめ、万一の豪雪に備えて前夜考えておいた、車なしでの移動を決意する。
 最低限の機材だけをまとめ、いつも頼んでいるタクシー会社に電話すると、5分ほどで玄関前まで来てくれた。時計は11時15分あたり。運休の多いJRは避け、最寄りの地下鉄駅まで移動。
 地下鉄なら乗り換えなしでお寺近くの駅にたどり着く。そこから再びタクシーに飛び乗り、当初予定してた12時ちょうどに先方に着いた。


 祈祷開始は12時30分で、それまでにマイクテストと住職Yさんとのオカリナコラボ演奏の音合せを終わらせる手はずである。挨拶もそこそこに、会場にマイクスタンドを置き、数曲をテスト。突然のトラブルで自宅での練習が全くやれなかったので、いいリハーサルになった。
 やや不安だったギターのマイク録りは、小型の無線マイクの感度がよく、DIYで作ったマイクホルダにもクリップやテープなしで、うまく固定できた。

 150席ほどの椅子が整然と並んだ会場は、じょじょに埋まって祈祷の開始までには、ほぼ満席に。私も会場の片隅で祈祷に参加させていただいた。宗派は異なるが、同じ仏教なので抵抗はない。
 読経がやや伸びて、13時35分くらいから私の歌が始まる。リクエストやコラボ演奏を含め、ぴったり40分で13曲を歌った。

「北国の春」「おかあさん」「ソーラン節」「知床旅情」「幸せなら手をたたこう」「リンゴの唄(全員で)」「バラが咲いた」「高校三年生」「酒よ」「月がとっても青いから」「酒と泪と男と女(リクエスト)」「どんぐりころころ(オカリナコラボ演奏)」「青い山脈(全員で)」


 会場の年齢層は40〜80歳といったところ。子供の姿もちらほら見える。事前の打合せで介護施設でのセットに準じたものをと言われていたので、昨年暮れの介護施設ライブで好評だったセットを中心に構成した。
 開拓時代から100年以上も続く曹洞宗の由緒ただしき寺である。全道各地から集まった30人を超す僧侶による読経は厳粛そのもの。その直後の会場は荘厳な気分がまだ隅々にまで漂っていて、非常に難しい場となった。
 全体的に場の反応は弱く、自然発生的な手拍子は少なかった。最も湧いたのは「幸せなら手をたたこう」。「リンゴの唄」「青い山脈」は事前に歌詞カードが配られ、全員で歌った。
 出掛けのトラブルの影響もなく、声はまずまず出たが、スピーカーが全て天井に埋め込まれていて、音が上から降ってくる感じ。モニターはしやすかったが、歌が聴き手にどう届いていたかは、よく分からなかった。


 時間がやや余ったので、9曲目を終えた時点で、1曲限定の先着順でリクエストを募った。10曲目を歌う間に考えていただく趣向だが、終わるとすぐに手が挙がって「河島英五をぜひ」との声が3列目あたりの中年婦人からかかる。
 ただちに歌い始めようとしたら、千昌夫の「味噌汁の詩」が続けて後列の男性から飛び出す。時間的に厳しく、そもそもレパートリーにない。お断りせざるを得なかった。

 これまで経験のない場だったので構成は手探りだったが、思っていたより年齢層の幅が広く、フォークやシャンソンなど、新しい曲をもっと混ぜるべきだったかもしれない。しかし、担当の若住職Yさんのイメージには沿った内容だったと思う。
 なにより、まるで昨年暮れの豪雪によるライブ断念の悪夢を再現させるようなトラブルに遭遇した割に、大きなキズもなく無難に場をこなせたことを喜ぶべきであろう。