2014年12月21日日曜日

締めくくりは大団円

 ネット経由で依頼のあった「介護付き高齢者住宅」という分類の介護施設クリスマス会で、初めて歌ってきた。イベントは14時開始だったが、多忙で事前の会場調査が叶わず、余裕をみて13時過ぎに家を出た。

 会場の広さが分からないので、この日もPAは2スピーカー方式。奇しくも3日連続のライブとなってしまい、機材一式はカートに載せたまま、玄関に置きっぱなしの状態である。
 バッテリの充電と水の補給以外、機材の出し入れはせず、練習はずっとノーマイクでやっていた。
 施設はやや遠い隣区にあったが、昨日の暖気で路面は乾いていて、わずか35分で到着。担当のTさんの案内ですぐに会場を調べる。
 畳2枚ほどのステージ台がすでに準備してあったが、前後の幅が狭すぎて歌うには不向き。せっかくの配慮だったが、事情を話して片づけてもらった。


 会場が予想外に広く、100を超える椅子が整然と並んでいる。部屋の形状がL字形で、その角に相当する部分にステージが設定されている。ステージから見て左右2つのグループに分かれた聴き手に、均等に音が届くようPAとマイク位置を決めた。
 すでに利用者の方々が座り始めていて、職員さんも忙しく、マイクテストは結局やれなかった。
 14時よりやや遅れてイベント開始。職員さんによる仮装でクリスマスメドレーがまずあり、同じく職員さんによるソロのサキソフォン演奏があって、私の出番となった。
 組立てを終え、隅に片づけてあった機材を移動し、進行の方による紹介のあと、14時25分くらいから歌い始める。およそ40分で12曲を歌った。

「高校三年生」「おかあさん(森昌子)」「ソーラン節」「知床旅情」「幸せなら手をたたこう」「リンゴの唄」「バラが咲いた」「丘を越えて」「酒よ」「月がとっても青いから」「ウィンター・ワンダーランド」
〜「大空と大地の中で(アンコール)」


 選曲リストは施設からの要望で、5日前に提出済み。各椅子の上には、曲順通りに印刷された歌詞カード付きプログラムが準備されている。アドリブ的な曲変更は一切できない状況だった。

 歌い進むうちに聴き手はどんどん増え、椅子が足りなくなって追加され、会場は立錐の余地もない状況に。職員さんを含めると150名はいたと思う。後で知ったが、全部で3つの棟に分かれた住居から、入居者の人たちが集まってきたらしい。
 過酷なスケジュールにもかかわらず、この日も喉は絶好調をキープ。漫然と日を過ごすより、気を張って節制に努めているほうが、むしろ好調を維持しやすい感じもする。
 初めての場なので進行は手探りだったが、反応は非常によかった。職員さんのチームワークもよく、上手に盛り上げてくれる。場は尻上がりに熱を帯び、曲に応じて手拍子や笑顔、そして涙が交錯した。

ステージ右の私の似顔絵は、施設長Tさんの労作

 過去の経験からあまり効果を期待してなかった歌詞カードだったが、予想外にみなさんが一緒に歌ってくれるので驚いた。年齢層は50〜100歳と幅広く、それに応じた新旧取り混ぜた選曲をと望まれたが、結果として大きなハズレはなかったように思える。
 歌声が最も多かったのが、意外にも「バラが咲いた」。次いで「リンゴの唄」「酒よ」といったところ。このところ感じるのは、吉幾三の強さ。介護施設系での定番ソングも、そろそろ見直すべき時期かもしれない。

 進行通り15時で歌い終えたが、担当のTさんの音頭で、いきなりのアンコール。事前に打診があったので、いわゆる「お約束アンコール」の範ちゅうだが、場の流れには沿うものだった。
 何を歌おうか聴き手に尋ねてみると、これまた意外にも「松山千春!」の声が複数。松山千春は数曲のレパートリーがあったが、代表曲の「大空と大地の中で」に落ち着く。
 予定時刻をややオーバーしたが、終わって機材を片づけていると、多くの利用者の方が近寄って声をかけてくれた。中にはプログラムを差し出して、「記念にサインをください」とか、「一緒に写真を撮りたい」などの申し出も複数。
 写真は過去にも経験があったが、サインは初めて。そんな柄ではないが、ここは素直にお受けするのが人としての道、と自分に都合よく考えた。

 担当のTさんを初め、スタッフの方にも大変喜んでいただく。施設として力を入れたイベントで他にゲスト出演者はなく、ミスは許されない状況だったが、大役は果たせた。
 珈琲とケーキを前にあれこれとお話ししたが、実は別の施設にいたときに私の歌を聴いたという職員さんが4人もいて、施設長のTさんに推挙してくれたのだとか。名前の記憶を頼りに、連絡先をネットで調べたのだとか。
 どんな小さな場でも手を抜かずに最高のライブをやろうと常日頃から心がけ、反省点の修正も怠らずにいるので、正直うれしかった。ひそかに見てくれている人はちゃんといるのだ。

 今年の依頼型のライブは、この日で最後。ちょっと追われたが、締めくくりに相応しい大団円である。