2013年8月4日日曜日

人生の手本

 隣区にある総合スーパーで催されたイベント「なつかしき集い」に出演した。依頼はボランティア仲間のTさんからで、区の街づくりイベントの一環として自身の紙芝居と私の弾き語りとを一緒にしたコラボ企画である。
 この1年で同様の企画イベントに2度参加しているが、今回はTさんの古希祝いも兼ねている。「70歳の節目に何か記憶に残るものを」との話に、喜んで協力することにした。


 場所は「トライアングル広場」と称する街づくり交流広場。区に事前申請をし、街づくり活動としての諸条件をクリアすると利用可能となる。
 この日は100Vポータブル電源を初めて実戦で試す予定だったが、広場の上は3階まで吹き抜けになっていて、かなりの大空間である。事前のマイクテストでの音の感じは悪くない。何とかやれそうだった。
 開演前からすでに10人くらいの人が集まっていた。広場前には店側で用意してくれたらしい立派なイーゼル式の告知看板が設置されていて、その効果もあったように思える。


 定刻13時から開始。最初はTさんの紙芝居「黄金バット」で、聴き手は25~30人といったところ。特に事前告知をしなかった割には、まずまずの入りだった。

 いつものようにTさんはノーマイクで朗々と演じていたが、佳境にさしかかった頃、予期せぬことが起きた。効果音で使っていた手持ち太鼓を叩くバチが、真っ二つに折れてしまったのだ。
 このバチがなぜか枯れ枝。紙芝居に市販のバチは似合わないと、いつも枯れ枝を使っているそうだが、この日はそれが裏目に出た。
 最後尾で観ていた私は「あっ、折れた」とのTさんの言葉で異変に気づいたが、バチの予備はなく、もはや太鼓は使えない状態。あとで知ったが、このハプニングでTさんは動揺し、すっかりペースを乱してしまったという。
 打合せでは30分の持ち時間のはずが、半分の15分で終了。折れたバチが影響していたことは明らかで、急きょ私が舞台に上り、13時15分から歌い始める。
 スーパー店内の舞台で歌うのは全く初めての経験で、何をどう歌うべきか、まるで見当がつかない。ディサービス系やチカチカパフォーマンスの構成をベースに、聴き手の状況によっては地域祭り系の曲をいつでも歌えるよう、フレキシブルな体勢で臨んだ。
 結果として、およそ30分で以下の9曲を歌った。

「恋のバカンス」「バラが咲いた」「真赤な太陽」「涙そうそう」「北の旅人」「カントリー・ロード」「年下の男の子」「アメイジング・グレイス」「ブルーライトヨコハマ」

 心配していた音に関しては、大きな問題がなかった。ややギターの音が弱い感じがしたが、ボーカルの響きが抜群によい。ギターの音はあえていじらず、ボーカル中心で歌い進んだ。


 クセのない曲をそろえたこともあってか、歌い終えるたびに静かだが、確かで長い拍手をいただいた。あまりの拍手の長さに、「ありがとうございます」と2度繰り返すシーンが数回あったほど。子供や若い方の姿がなく、状況次第では歌うつもりでいた「ハナミズキ」「散歩」などは結局歌わずじまい。

 前回のチカチカパフォーマンスで初披露し、強い手応えのあった「アメイジング・グレイス」をこの日もラスト前に歌ったが、店のあちこちから音を聞きつけた人が集まってきて、座席の後部に数人の立ち見が出た。
 理由ははっきりしないが、この曲はとにかく強い。高音部の聞かせどころが、自分に合っているのかもしれない。しかし、その分非常に消耗する曲なので、扱いは難しい。

 ラストの「ブルーライトヨコハマ」では、期せずして会場から手拍子が飛び出す。この種の場で手拍子が自然に出れば、まずは成功と評価していい。
 第3ステージは再びTさんの紙芝居で、この日が初披露の民話「うづら」。人情系の紙芝居はTさんの得意ジャンルで、熱演に会場は静まり返る。あとで聞くと一部セリフを忘れたそうだが、すべて咄嗟のアドリブで乗り切ったという。ラストには自分で作ったというわらべ唄まで入っていた。

 少し早めの14時15分に終了。広場に常設のブロンズ前で並んで記念写真を撮る。詳しくは書けないが、いろいろと重いものを背負いつつも、こうして精力的に社会活動を続けるTさんである。
「人生、いつでも挑戦できます」と、第3ステージ冒頭でもふれていたが、よいお手本に今後もさせていただこうと思う。そして自分自身も、若い人の手本になるような人生を歩んでいくことだ。口幅ったいが、そんなことを感じた。