当時はマンション暮らしで、今とは全く異なる合板と金物を使った家具作りを得手としていた。月日は流れ、DIYに対するスタンスも無垢材を主とした家具備品作りに取って代わり、スキルもかなり向上した。手作りに対する世間の評価も見直されつつあり、再度取り上げていただくには絶好の時期である。
事前の取材と同様、私が最寄りのJR駅まで車で迎えに行くものと思っていたら、突然チャイムが鳴る。外には大型の車が停まっていて、カメラマンや担当の方が合計4名。
「車はどこに停めたらいいでしょう?」
しまったと思っても、時すでに遅し。昨日除雪したのは自分の車を出すための玄関前だけで、来客用の駐車スペースまでは確保していない。急きょ機材を降ろし、私の車で近くの大型店舗まで誘導する。運転代行の要領で、どうにか急場を凌いだ。
家中を説明しながら、さまざまなDIYグッズを紹介し、撮影していただいたが、幸運だったのは、天気が非常によかったこと。ブラインドを調整しつつレフ板を併用し、すべて自然光で撮影することができた。
自分で説明して思ったが、壁や床、そして天井などの構造体以外の大半が手作り品に囲まれていたという事実。
「家中どこを見回してもDIYですね」と驚かれたが、実際そんな感じである。
好評だったのは以下の品々。
・2階寝室と階段の間に作った「動く壁」
・階段室の壁をくり抜いて作った「ニッチ本棚」
・3段重箱式の道具箱
・木製カーテンレールとタッセル
・麦わら帽子を使ったランプシェード
取材には制作室の若い女性も一人混じっていたが、「麦わら帽子シェード」はかなり気に入っていただけたようで、「ぜひ欲しい」「私も作りたい」「北海道らしさが表れたDIY」と絶賛された。市販の麦わら帽子に穴を開けてソケットにかぶせただけの単純な仕組みだが、「発想がユニーク」との評価。
話の流れですっかり忘れていたDIYグッズも思い出し、引出しから引っ張りだして披露したりと、とても楽しい時間だった。
今回の取材でつくづく感じたが、我が人生そのものがDIY的であったのだな…、という感慨。果てしない生産と消費を繰り返す社会図式が崩れ、新しい価値観が求められている中で、広い意味でのDIY(手作り)的生き方が、いま見直されつつあるのかもしれない。
まあ、ブームであってもなくても、50年以上も続けてきた我が生き方は、今後も変わることはたぶんない。