2012年10月18日木曜日

最悪条件でのチカチカ

 予定にはなかったが、チカチカパフォーマンスの北3条広場で急きょ歌ってきた。今月はイベント多数とのことで、チカチカパフォーマーへの割当てが少なく、今日が最終日。指定が相性の悪い広場だったので様子見していたが、2日前になっても枠が埋まらない。

 先週末のチカチカライブでオリジナルCDが予想外に売れ、その背景をずっと自分なりに分析していた。
「財布のヒモが緩む土曜日午後」「4組のパフォーマーによる場の賑やかさ」「昭和歌謡中心の構成が当たった」等々、いろいろ理由は考えられる。ひょっとして売れたのはフロックだった可能性だってある。
 仮に最悪の条件で歌ってみたらどうなるだろう?持ち前の好奇心の虫が(行って歌ってこい)と騒いだ。


 会場はこれまでいい思いをしたことがない北3条広場。音の反響がいまいちで、マルチビジョンによる案内アナウンスの音が途切れない。さらには平日の後半枠で、開始が人々が帰宅を急ぐ17時からという魔の時間帯である。
 会場に向かう途中で気づいたが、この日は18時からプロ野球のCSシリーズ第2戦が札幌ドームである。私もそうだが、早く帰宅してテレビで地元チームを応援したいのが普通の心理だろう。
 つまりは、難しい要素が4つもそろったということ。これ以上ない悪条件のなかで、どこまでやれるか試されるということだ。
 10分前に会場に入ったら、前半枠ラストのLOVERSSOULさんのステージが真っ最中。帰宅途中の学生らしき若者を中心に、40人前後の抜群の集客である。LOVERSSOULさんは札幌を基点としたプロ歌手で多くの実績があり、ファンも多い。
 しばしステージを見せてもらったが、曲間MCでの聴き手とのコミュニケーションのとり方や、カバーとオリジナル曲のバランスなど、とても参考になった。


 17時20分から私のステージ開始。LOVERSSOULさんが後半枠も続けてエントリーしていたので、早めにスタンバイして歌い始めたが、なぜか途中で帰ってしまった。(理由不明、何か用事ができたのか?)
 当初から苦戦を予想していたこともあり、第1ステージでは玉砕覚悟で、ほぼ全曲をオリジナルで臨むという暴挙をあえて試みた。

「オブラディ・オブラダ」「誰も知らない夜」「雨ニモマケズ抄」「夕凪ワルツ」「秋の日に」「独り」「サクラ咲く」「夢の旅路」
 1曲目だけがオリジナル訳詞で、他はすべてCDに入っているオリジナルである。予想通り聴き手はごく少なく、椅子に座った3~4人といったところで、拍手もまばら。
(北3条広場にはテーブルセットが5組ほど置かれている)
 プロの方が歌った直後の場は正直きつい。本来なら私が当然先に歌うべきだが、チカチカパフォーマンスの場合は、必ずしもそうはならない怖さがある。
 CDについてはMCでも時折ふれたが、手にとった方は中年男性一人だけ。しかし買ってはくれなかった。一般には馴染みの薄いオリジナル曲だけで場を引っ張るのは、さすがに厳しいものがあった。


 17時45分に第1ステージを終える。以前にも感じたが、17時半~18時半あたりの時間帯は、歌に関心を示す人は皆無に近い。通りを行く人々はそれなりにいるが、普段歌ってる平日午後や週末に比べて、足取りが一様に早いのだ。
 こうした状況では歌ってもムダのように感じ、しばし放心状態でボ~としていた。ふと思いつき、これまで歌ったことがない左手の壁際にステージを移してみることにした。柱の陰で通りからは見えにくくなるが、壁を背にするので音の返りはいいはずだ。

 気を取り直し、18時5分から第2ステージ開始。オリジナルでの苦戦は予想通りだったので、前回試みてまずまずの反応だった「多ジャンル混在型」に路線を変更して臨む。
 実は第2ステージは当初9曲ほどで終えるつもりでいた。ところが30分近く歌っても立ち止まる人は全く現れない。このまま帰るのも何だかしゃくなので、(聴いてくれる人が現れるまで歌ってやろう…)という奇妙な反骨心が芽生え、結果として丸1時間休憩なしで、以下の17曲を一気に歌った。
(共演がいない場合、時間は自由に使える)
「想い出のソレンツァラ」「Let It Be」「思い出のグリーングラス」「カントリー・ロード」「涙そうそう」「桃色吐息」「別れの予感(初披露)」「時の流れに身をまかせ」「抱きしめて(オリジナル)」「グッドナイト・ベイビー」「また逢う日まで」「草原の輝き」「ブルーライトヨコハマ」「恋の季節」「バス・ストップ」「ジョニィへの伝言」「どうにもとまらない」

「カントリー・ロード」で数人の女子高生が立ち止まり、拍手をくれたが、次の「涙そうそう」で、すぐに消えてしまう。この日ばかりはテレサ・テンの神通力もまるで通用しなかった。とにかく孤独で厳しい。相当ストイックでタフな精神を持ちあわせていないと、とても耐えられないだろう。

 じっくり聴いてくれる人が突然現れたのは、通用しないはずだったオリジナルの「抱きしめて」を歌っているときだった。すでにステージは終了間際。予定にはなかった「また逢う日まで」を歌っても、その場を動こうとしない。
「もっと聴きたいですか?」と尋ねると、「ハイ」とその中年女性は応える。今夜はこの方のために歌おうと腹を決め、さらに6曲を続けて歌うことに。
 帰宅を急いでいたらしいその女性は「ブルーライトヨコハマ」のあとで帰ったが、入れ替わるように若い男性と別の中年女性が現れ、熱心に聴いてくれる。
 開始から1時間を経て喉も限界。左手の指もつり始めている。事情を話して「どうにもとまらない」で終わらせていただいたが、終了後にその2人が近寄ってきて、「とてもよかったです。CDください」と、それぞれ買ってくれた。

 立ち止まってくれた方はごく少数だったが、それでもCDは売れた。最悪の条件下でも聴いてくれる人はちゃんといる。まさに「地獄で仏」とはこのこと。要は手を抜かずに真摯に歌い続けることだ。
 CDを売ることに限れば、今回でおよその手法は分かったので、以降のライブに活かしたい。道はまだまだ続く。