2011年12月23日金曜日

X'masフォークコンサート

 フォーク歌手の及川恒平さんとブルースハーブの千葉智寿さんとのX'masフォークコンサートが近くの地区センターであるというので、午後から車で出かけた。
 チケットはかなり前から購入してあったが、これが何と500円といういまどき信じられない安さ。チケットやフライヤーはパソコンで手作りし、場所は広い公的施設を使ってコストダウンにつなげた感じである。

 場所は地下鉄東豊線沿いの東区民センターホール。広くて明るく、立派なPAが完備している。音は抜群によい。ホール内は外靴のまま入ることが可能で、先日別の地区センターでやったX'masコンサートとはかなり趣が違っていた。


 13時半開場、14時開演だったが、300席あるという会場はほぼ満席だった。客の大多数は同年代のいわゆるフォーク世代で、フォークの根強い人気がうかがえる。公的施設だが、フォークというややマニアックな音楽ジャンルに特化しても、充分にコンサートとして成り立つということだ。

 館長の挨拶のあと、14時5分からコンサート開始。7年前に時計台コンサートを主催して以来、たくさんの及川恒平さんのコンサートに立ち会っているが、今回は聴き手が多く、クリスマスというイベントの一環ということもあって、ふだんとはかなり違う恒平さんの姿を見ることができた。
 前半45分のセットは以下の通り。

及川恒平さんソロ
「雨が空から降れば」
~トーク&ソング
「冬のロボット」
「ゆきのこねこ」
「大雪の日」

恒平さん→千葉さん
「ホワイトクリスマス」

千葉智寿さんソロ
「冬のベンチ」
「トレインタイム」
「アメイジング・グレイス」
 昨日から今日にかけ、かなりの雪が降ったこともあり、お二人とも冬や雪の季節感あふれる曲を中心に構成していた。ライブに季節感は大事で、真冬に夏や秋の曲を歌うのは、気の抜けたサイダーを飲むようなものだ。
 特筆すべきは、恒平さんのトーク&ソング。ギターをポロポロ奏でながら、世間話のようなMCをしつつ、予告なしに不意に歌に入る。終わり方がまたさり気なく、いつの間にかMCに戻っているという趣向だ。

 こんな感じで冬の曲を3曲、10数分で歌ったが、聴き手は巧みなその手法に引きこまれ、拍手もせずにじっと聴きいっていた。私がソロライブでときどき仕掛ける「歌謡劇」に似ているが、私のは完全なる創作。これをフィクションではなく、ごく普通のMCの中に混ぜてやる手法は初めて見た。非常に面白い。
「ホワイトクリスマス」で1番を恒平さんがまず歌い、2番を舞台袖から登場した千葉さんが吹く。恒平さんは曲の途中で静かに消えるという演出。受け渡しはごく自然で違和感なく収まった。

 14時45分から15分の休憩となる。ホールでは100円で本格珈琲を販売している。一緒に行ったKさんTさんからごちそうになったが、これがなかなかの味。同じホールで先日チカチカパフォーマンスを見にきてくださったNさんにも出会う。
 あれこれ話しているうち、通りかかった女性がNさんと挨拶を交わしている。どこかで見た顔だな…、と思っていたら、これが恒平さんの最新作「地下書店」を作詞した詩人、そして歌人の糸田ともよさんなのだった。
 Nさんとは顔見知りらしく、その場で紹介されていろいろとお話しさせていただいた。貴重な機会だった。
 15時から後半開始。後半は恒平さんと千葉さんのとのジョイントである。セットは以下の通り。

「きよしこの夜」
「赤鼻のトナカイ」
「星の世界」
「ジェルソミーナ」
「黄昏のビギン」
「引き潮」
「ガラスの言葉」
「出発の歌」
~アンコール
「面影橋から」

 クリスマスソングあり、昭和歌謡あり、定番曲ありの盛りだくさんの内容である。注目すべきは中盤で歌った「引き潮」。恒平さんが突然舞台を降り、客席を順に回って、ノーマイクで歩きながら歌うという珍しい趣向だった。
 著名なプロ歌手が手の届くような位置で歌ってくれるので、聴き手は大喜び。場の雰囲気はピークに達した。前半のトーク&ソングもそうだが、構成にメリハリがあって、場を創るのが非常に巧みだと感心させられた。

 クリスマスソングや「出発の歌」では会場と一緒に歌う趣向もあり、「ガラスの言葉」では会場の手拍子を誘って一部無伴奏で歌うという試みもあった。全体として300人の聴き手と一体化した、クリスマスにふさわしい楽しい内容だった。これで500円は安い。
 プロのライブでも時に損をしたような気分になることもたまにあるが、今回は非常に得をした気分である。