1週間近くも続く真冬日だったが、渋滞もなく、順調に都心に着く。いつもの段取りで妻に荷物番を頼み、会場となる地下へと潜る。
この日の会場はこれまでの北3条広場ではなく、やや北にあって駅出入口に近い北4条広場。広場全体のスケジュール調整でこうなったが、ここで歌うのは実は初めてだった。
案内アナウンスがなく、音の環境としては恵まれているが、椅子が一切ないのが難点だった。地下鉄駅改札口に近く、雰囲気がやや落ち着かないのでは?という懸念もあった。
しかし、いろいろな場で歌えばまた違った風景が見えてくる可能性もある。まずは一度歌ってみることだ。
これまでになく早く着いたので、開始5分前には準備が整った。14時ジャストにパフォーマンス開始。第1ステージは世界の叙情歌を中心に、40分で以下の13曲を歌った。
「サン・トワ・マミー」「冬よ来い」(オリジナル)「雪が降る」「雪の降る街を」「菩提樹」「ラ・ノビア」「恋心」「きよしこの夜」「独り」(オリジナル)「シューベルトの子守唄」「シューベルトのセレナーデ」「鱒」「恋はやさし野辺の花よ」
場所も初めてだったが、この日は他にもいくつか冒険を試みた。初披露の「ラ・ノビア」「恋はやさし野辺の花よ」、クラシック系を5曲、そしてシャンソン系オリジナルを2曲歌った。
実際に歌ってみると、音の反響は非常によい。天井が低めで、2方向が壁に囲まれたコーナー部に立ったせいだろう。アナウンスが一切ないので、叙情的な歌も気兼ねなく歌える。少なくとも歌い手にとっては快適な空間だった。
(あとで妻からも音はよかったと聞かされた)
1曲目からどんどん人が集まってきて、「雪が降る」では30人近い人であふれた。すぐ近くで古書市をやっていて、本を選んでいた人や買い終えた人が歌を聞きつけて集まってきたらしい。
ある意味でラッキーだったといえる。ともかく、路上系ライブでは過去最高の集客を記録したのは間違いない。
思いがけない事態に多少当惑しつつ歌い進んだが、喉の調子は非常によかった。受けがよかったのはシャンソン系の曲だったが、あいにくこの日はクリスマス間近ということもあって、クラシック系を多めに構成した。プログラムが進むと共に人手がやや減っていったのは、曲調が難しすぎたせいかもしれない。
前半を終えると、初老の紳士が近寄ってきて、「心にしみる素晴らしい歌声をありがとうございます」という。特にオリジナルの「独り」が非常によかったと言ってくれた。
(この日はあまりの人の多さに、随所で簡単なMCを入れた)
この「独り」は来てくれた別の知人からも「いい曲だ」と言われた。カバー曲だけでなく、時にはオリジナルもこうした場で充分通用することが今回分かった。大きな収穫である。
10分休んで第2ステージ開始。日本の叙情歌を中心に、40分で以下の13曲を歌った。
「ここに幸あり」「この道」「ゆりかごの歌」「待ちぼうけ」「白い想い出」「冬の星座」「とうだいもり」「ペチカ」「冬景色」「浜辺の歌」「砂山」「赤い花白い花」「埴生の宿」
理由ははっきりしないが、前半よりも人出は減った。日によっては洋楽系の歌にはまるで手応えがなく、逆に日本唱歌が受ける日もある。何がどうなるかは、いざ歌ってみるまで分からない。
歌は気分の占める比重が高い。この日はシャンソン系が馴染む場であった、ということだろうか。
途中、見知らぬ中年婦人から飲物の差し入れがあったりし、同じ地下空間でもこれまでとは異なる空気感に戸惑いつつも、早めの15時半に終了。8月のオーディション応募時の条件のひとつだった、期間中最低4度以上のパフォーマンスを今回で無事にやり遂げた。つまりはノルマ達成である。
この日は前回に続いて知人のNさんのほか、地区センターライブで知り合ったKさんもわざわざ聴きにきてくださった。集客の激しい波はともかくも、歌自体の出来はよかったので、その部分での面目は保てたと思う。
帰路、今回も快く休暇をとってつきあってくれた妻に感謝しつつ、イオンのドトールで軽食をふるまう。怒涛の年末ライブの大きな山をどうにか乗り越えた。