イベント系のステージは苦手だったが、これも何かの縁とあれこれと頭を巡らせて準備。ここ数日、愚図ついた空模様が続いていたが、当日になってどうにか晴れた。しかし、気温は10度前後で、非常に寒い。真冬なみの暖かい服装で臨んだ。
場所は広い歩道に面したラーメン屋の店先。傍らではさまざまな食材の即売会も同時開催していて、いわば「鳴りもの」としての盛り上げ役だった。
開始は午後4時と聞いていたが、到着した15時半には気温がさらに下がってきたため、予定を変えてすぐに始めることになった。
第1ステージは15時40分からおよそ30分間。6-7曲歌い終えたところで、店内に入って特別メニューのラーメンをいただく。第1ステージの反応はまずまずだったが、休憩後の第2ステージになると気温はさらに下がり、通りを行く人の数はめっきり減った。
しかし、それでも歌い続けるのが路上ライブの宿命。第2ステージは16時半から連続1時間余。全く誰もいない状態の時間帯もかなりあったが、いつものように青空に向かって朗々と歌い続けるのだった。
この日はサッカーを指導していた時代に買った特別なトレーナーを着た。写真のように袖口が一段長くなり、その一部に親指を通す穴が空いている。手首がすっぽり隠れるので、まるで手袋をはめているように暖かく、しかも指先は自由なのでギターは普通に弾ける。
これでしばらくは凌いだあと、再び店に入って暖をとる。自分でしかけた路上ライブなら、自己判断でいつでも打ち切ることは可能だが、他から依頼された場合、そうはいかない。担当のOさんに判断をあおぐと、最後にもう1ステージやって欲しいという。こうなれば意地と、再び外に出た。
18時過ぎから第3ステージ開始。あたりは次第に薄暗くなり始め、気温はさらに下がる。(後で調べたら、7度だった。路上ライブをやる気温ではない)途中でジャンパーを着込んだが、それでも寒い。喉は抜群の調子だったので、気力で18時半まで歌い続け、ようやくお役御免となった。
あとで数えてみたら、全部で25曲ほど歌っていた。最初と最後に「花」という同じタイトルで別の曲を歌ったが、そんなこだわりに誰も気づくはずもなく、自分ただ一人の矜持なのである。
こんな過酷なライブは初めて体験したが、収穫は自らの持続力の再確認。最悪とも思える状況でもこれだけ歌えたのは、たゆみない日々の練習の成果に違いなく、大きな自信になった。
さらには、外での叙情歌が意外に収まる、という発見である。車がかなり激しく行き交う喧噪の場でもそれなりだったから、たとえば静かな公園などでは、もっと馴染む可能性が高い。
久しぶりに通りすがりの人々を相手にしたが、ライブハウスを始め、いつも「聴いてくれる」という暗黙の条件下で歌うことに慣れた甘い身にとって、身の程を知るという一点では、苦い良薬であった。