開始は午後1時からだが、早めの12時半には家を出て、到着後すぐに舞台横で機材のセットをやった。
キャパは150席と聞いていたが、実際に並べられた椅子を数えると112席。しかし、周囲には充分な余裕があり、椅子さえあれば軽く200席は確保できそうだった。
この日の出演者と時間は以下の通り。時間ロスがないよう、セッティングや機材には充分気を配った。
・和太鼓 13:00-13:30
・私の弾き語り 13:30-14:00
・腹話術 14:00-14:30
・民 謡 14:30-15:00
開始直前になっても席は閑散としていて、数えてみると20名ほどしかいない。この日は真夏のような暑さで、集客に影響したかもしれない。責任者のMさんが近寄って来て、「いつもは満席に近いのですが、少なくてスミマセン」などと恐縮している。
しかし、路上ライブでは誰一人いない場で、延々歌うことも常。聴き手の多い少ないは、実はほとんど気にしないタチである。
予定より数分遅れて始まったが、最初の和太鼓は13時25分に終わった。すぐに舞台横に行き、準備してあった機材をステージ上に運んでスタンバイOK。ちょっとだけマイクテストをし、予定より早い13時28分から演奏を始めた。
この日歌ったの曲は以下の9曲で、前回よりも年齢層を高めに設定した。会場を見渡すと年齢層は介護施設に近く、正解だった。
メリハリを考慮し、最初と中盤、そしてラストにストローク系の曲を配置したが、全体としては内外の叙情曲、という切り口でまとめた。前回との重複曲はない。
「高原列車は行く」「浜千鳥」「瀬戸の花嫁」「おおブレネリ」「バラが咲いた」「思い出のグリーングラス」「さくら貝の歌」「時計台の鐘」「花」
いざ歌い始めると、久しぶりに上がった。理由ははっきりしないが、ステージ高さが1メートル近くあり、しかも立って歌ったので、聴き手がすっかり見渡せたせいかもしれない。
アルペジオ系の曲でやや指の動きが悪く感じたが、大事には至らず、3曲目を歌った頃にようやく落ち着いてきた。
時間の経過と共に聴き手はじわじわと増えてきて、ステージ上からざっと目で数えてみると、およそ50名ほど。これでも席数の半分以下だが、熱心に聴いてくださる方ばかりなので、感謝すべきだろう。
前回同様、場はおとなしいが、手応えは非常にいい。曲の終わったあとの拍手が熱くて長いのはこの場の大きな特徴で、歌い手冥利につきる。
予定より3分早く、13時57分に終わった。持ち時間をいっぱいに使ったが、オーバーしなかったので、よしとしたい。
前回の宿題だった「MCをゆっくり話す」は、今回はうまくいった。30分で9曲なので無駄なMCは一切なく、時には曲紹介だけで進めたが、要所では短いエピソードを入れた。
ボーカルのモニターを心配していたが、ステージ上でもまずまず確認できた。あとで妻に確かめたら、何ら問題なく聴けたそうで、及第点だろう。この日は音楽仲間のチロリンさんも応援に来てくれたが、「ボーカルはばっちりだが、ギターの音がやや貧弱だった」との辛い評価。チロリンさんは元プロなので、音作りに関しては厳しい。
ボーカルはメインPAを使って高い位置の大型スピーカーから、ギターは歌い手横の簡易PAで、という変則スタイルがアンバランスだったろうか。しかし、最も大切なボーカルは良かったというので、こちらもよしとすべきだろう。
終了後、機材をまとめて出口にさしかかると、見知らぬ女性が泣き顔で近寄ってくる。横には妻がいて、いっしょに泣いている。8年前に辞めた職場の同僚Mさんとかで、何も知らずにたまたま聴きに来て、私の歌で感激して泣いたという。
妻の横には友人のNAOさんとSちゃんもいて、職場の帰りに立ち寄り、3曲目から聴いていたそうだ。なぜかNAOさんも目を赤くしていた。
後から聞くと、Mさんはご主人を今年なくしたばかりで、その切ない心境が私の歌の何かとシンクロしたらしい。「今日の歌にはタマシイが入っていた。ラストの『花』では自然に涙が流れた」と、妻も同じようなことを言っていた。
「花」は別の介護施設でも多数の方に泣かれたことがある。今回が2度目。どうやらこちらも私の「決め歌」に育ったらしい。