2009年7月1日水曜日

会話映画

 録画してあったBS映画「恋人までの距離(Before Sunrise)」を見た。今回で2度目だが、初回は冒頭部を見逃していて、完全版をどうしても確かめたかった。
 この映画は長男からの情報で知り、まず妻が見て、次に私というよくある順序である。続編の「ビフォア・サンセット」は以前に、最初から全部見た。

 列車の中で偶然出会った若い一組の男女が、意気投合してウィーンの街を夕方から明け方にかけ、ただひたすら歩き、そして話す映画である。
「全編が切れ目のない二人の会話で成り立っている」と言っていいほどだが、通りすがりの占い師やらホームレス詩人などが、いい味つけをしてくれる。

 主役のイーサン・ホークとジュリー・デルピーは、自ら演出や構成を手がけるだけあって、非常に演技が自然でうまい。ごく普通の男女の会話を、全くシナリオなしでカメラでドキュメンタリー風に撮っているようにも見える。
 宇宙、死、魂、愛など、物事の根源的な話題を、二人していとも簡単にまな板に載せて語り合うが、私たち夫婦もこうしたコムズカシイ話をするのが大好きであり、3人の子供たちとも、この種の訳のワカラナイことをしばしば話し合う。その意味でも、非常に親近感を感じる映画だ。
 映画そのものの出来としては、続編のほうがさらに良かった気もするが、調べてみたら、続編ではイーサン・ホークとジュリー・デルピーが脚本にも参加している。歩きながらアドリブで台詞を入れ、それがそのまま採用されたシーンがあるらしい。
 続編を見ていたとき、「ジュリー・デルピーって、ボッティチェッリの絵で貝殻の上に立っている、ビーナスみたいだね」と妻に話したが、前編ではそれを示唆する台詞が使われていることが分かった。ずばり、そのイメージに近いセクシー美女である。

 DVDに焼いて保存している映画は、「道」「初恋のきた道」「水の中のナイフ」などごくわずかだが、この映画はどうやらその仲間入りをしそうだ。アメリカ映画としては初。
 できれば同じBSで、ぜひ後編を再放映して欲しい。2作セットでDVDに焼くのが理想ですから。