すべては今後ますます顕著になるであろう高齢化共同体社会を見据えてのことだが、ひとつだけ困るのが、時に陽光がサンサンと窓から落ちる場所で歌わねばならないこと。
人にもよると思うが、私の場合は客席が仄暗く、ステージがスポット照明で明るい場が最も歌いやすい。ところが、午後3時始まり午後4時終了だと、聴き手の生活時間帯にはピッタリだが、歌い手にとっては明る過ぎるのだ。
これまではライブ時に2階スタジオの窓を全てブラインドで閉め、何とか暗がりを確保してきたが、どうしても暗くできない場所が階段室上部にある吹抜けの窓だった。
位置が北東ということもあり、ここにはブラインドをつけていない。普段はこれでも支障ないが、ライブ時にすべての窓を暗くすると、ここからの光が非常に強烈に感じる。
ずっと対策を考えていたが、2階の仕事部屋と寝室の仕切りに使っている可動式のノレンを、ライブの時にだけこの窓のカーテンとして転用できるのでは?と思い立った。
さっそく仮設の棒で吊るしてみると、なかなか案配がよい。昼間でも、2階はほぼ暗くなった。
すぐに具体的な作業に入る。現状のノレンは以前、ベットカバーとして使っていた端布。端部はミシンで縫い合わせただけだが、ここをいったんほどき、手持ちの細い棒がすっぽり入るように広げてミシンで縫った。
細い棒は吹き抜けの幅に合わせ、125センチに切断。布の幅は110センチなので、両端から具合よく棒が突き出し、ノレンに変貌する。
写真のように、窓にぴったり収まる。棒は吹抜け上部の梁に載せているだけなので、着脱は容易。普段はそのまま仕事部屋と寝室の間仕切りとして使える。汚れたら支持棒を抜いて普通に洗濯したり、布自体の交換も可能。
数えてみたら、我が家には1階に6カ所、2階にはこれを含めて5カ所のノレン風カーテンがある。ある意味では、「ノレンの家」と言い換えてもいいほどだ。
ノレンを間仕切りやドア代わりに使うデザイン手法は、私の得意なスタイルだが、これまで設計した家では、ごく普通の建具や間仕切りを希望された。自由度は高く、非常に安価でユニークな手法でも、プライバシー面や見てくれの部分で劣るので、一般の住み手としては抵抗があるようだ。