2017年10月23日月曜日

悪条件多発にもめげず

 風邪が抜け切らない体調のなか、4日間で3度というタイトなライブスケジュールの最終日だった。この日を乗り切れば一息つける。
 依頼は市の介護予防事業からで、声の出にくい午前開始という難しい条件がまずあり、さらには大型台風が接近中で悪天候の予報。会場は遠方の札幌南東部に位置している。
 当初の実施予定は1週間前だったが、当該町内会の都合で延長され、運悪く忙しい時期にぶつかった。いろいろ悪条件が重なったが、ともかくもライブ3時間前の7時に起きて備える。

 外は寒くて暗い。予報通り8時くらいから雨が降り始め、雨脚は次第に強くなった。雨は雪に変わるらしく、悪天候下で高齢者対象の介護予防イベントがやれるのか不安だったが、事務局から中止の連絡はない。
 余裕をみて開始1時間15分前に家を出る。月曜と台風が重なって幹線道路は渋滞気味で、雨は途中からミゾレへと変わった。
 9時35分くらいに会場付近に着いたが、対象の町内会館がどうしても見つからない。事前にグーグルマップで確認したが、外観は普通の住宅だった。郊外の新興住宅地で、似たような街区と建物が延々並び、見分けがつかない。
 周辺をぐるぐる回るうち、ミゾレは雪へと変わる。開始時間が迫って気は焦り、思い余って担当者に携帯で連絡した。

 携帯でのナビ指導でようやく目的の会館にたどり着く。あとで知ったが、幹線道路から右折を3回すべきところを、2回だと錯誤していたようだ。

余裕のなさが写真に表れている

 時計は9時50分を回っている。雪に濡れながらアタフタと機材を搬入。挨拶もそこそこに設営し、スタンバイしたのが10時ちょうど。ずっと我慢していたトイレに行かないと始められないが、廊下で見知らぬ男性から「隣の部屋でフラダンスの音楽をかけていいか」などと不可解な声がかかる。
 こちらは単なる講師の身だし、相手をしている余裕はない。事務局に対応をお願いし、ともかくもステージに立った。
 身も心も落ち着かないまま、予定より2分遅れでスタート。くじけそうになる気持ちを奮い立たせ、1時間15分で22曲を歌った。

《セレクトタイム》
「高校三年生」「赤い花白い花」「恋のしずく」「涙そうそう」「サン・トワ・マミー」「荒城の月」「恋の町札幌」「バラが咲いた」「つぐない」

《リクエストタイム》
「くちなしの花」「喝采」「アメイジング・グレイス」「川の流れのように」「蘇州夜曲」「白いブランコ」「酒と泪と男と女」「星影のワルツ」「函館の女」「いい日旅立ち」「ここに幸あり」「愛人」「君恋し」


 道に迷ってギリギリの到着という心理的動揺を抑えつつ、平静を保つよう努めたが、一部で声が割れそうになったりギターピックがずれたりし、出だしの数曲には多少の影響があったように思える。しかし、歌い進むうちにじょじょに普段のペースを取り戻す。
 聴き手は15名ほどで、男性は一人だけ。市内でも高級住宅地で知られる地域で、前半は多少それを意識して叙情系の曲を多めにし、演歌系は1曲のみとした。

まだまだ余裕なし

 30分経ってリクエストタイムへと移行する。いわゆる「山の手」地域なので、積極的なリクエストは出にくいことも充分予想されたが、蓋を開けてみると唯一の男性から「くちなしの花」がいきなり飛び出す。
 これが引き金になり、以降のリクエストが途切れることはなかった。終了後にかの男性と言葉を交わしたが、若い頃にバンドをやっていたことがあるという。音楽に対して理解が深いわけだ。

 女性の比率が高いこと、さらには土地柄もあるのか、全体的に叙情的な曲が好まれ、リクエストもそうした傾向の曲が相次いだ。ニギヤカ手拍子系の曲は皆無だったが、場の集中度は高く、反応は熱かった。
 1時間を過ぎた時点で打ち切り時期を意識したが、リードするのはあくまで事務局側である。リクエストは続くが、頃合いを見て担当の方が「ではあと2曲で終わりとします」と告げた。
 ラストの盛り上がりに相応しい「君恋し」がうまい具合に出て、この曲で終了とさせていただく。
 終了後、所用で参加できなかったという町内会長さんが現れ、名刺交換しつつ他の役員の方も交えて言葉を交わした。年に一回くらい、こうした音楽の場があれば会としては盛り上がりますね、出かける場作りは大事ですね、と意見が一致。
 市の事業は今回で終了だが、もしかすると今後につながるかもしれない。条件としては最悪でもうまくやり繰りし、結果としてはそれなりのものを出せたと思う。

 外に出ると車は雪に覆われ、ブラシの準備がないので手で払い落とす。道路は5センチほどの積雪だったが、まだ夏タイヤのまま。幸いに気温はプラスで路面凍結はなく、慎重に運転して帰路につく。
 なんとか無事に乗り切った。