2017年10月22日日曜日

涙の伝染

 車で10分ほどのデイサービスで歌った。3年前に系列施設の紹介で初めての依頼があり、今回が数えて10回目のライブ。今年に入ってから実に4度目の依頼で、深く確かな信頼関係が築かれつつある。
 依頼が続くこと自体は大変ありがたいが、マンネリ化の不安が常につきまとう。過去の記録を参照に、曲の重複を慎重に避けて準備した。

 風邪気味の体調はじょじょに回復しつつあり、明け方の咳も出なくなったが、用心してハチミツ大根だけはまだ飲み続けていた。
 開始15分前に会場入り。いつものことだが、普段の利用日を飛び越えて聴きにくる利用者の方が複数いて、「菊地さ〜ん、また来たわよ」と声をかけてくれる。すっかり顔なじみなので、「しばらくです、お元気でしたか?」などと応ずる。
 予定通り、14時から始める。断続的なアンコールなどあって、およそ1時間で17曲を歌う。

開演前に施設内洗面鏡を使って自撮り

《セレクトタイム》
「高原列車は行く」「函館の女」「お座敷小唄」「ここに幸あり」「小樽のひとよ」「思い出のグリーングラス」「荒城の月」「小指の想い出」「北酒場」「星影のワルツ」

《リクエストタイム》
「夢追い酒」「夜霧よ今夜もありがとう」「青春時代」「涙そうそう」「いい日旅立ち」

《アンコール&コラボタイム》
「東京ラプソディ」「大空と大地の中で」
 台風接近で空模様が怪しく、選挙の投票日と重なって、聴き手はやや少なめ。それでもみなさん熱心に聴いてくれる。大半が女性ということもあってか、この日は叙情系の曲に対する反応が特によかった。
 出掛けの自宅リハで高音の一部がかすれ、やや不安があったが、いざ歌い始めると声は普通に出た。各種対策が功を奏して、風邪は9割方回復したようだ。

 30分で前半を無難に終え、後半のリクエストタイムへと突入。開始の時点ですでに3曲のリクエストを貰っていて、職員さんが付箋に書いてマイクスタンドに貼り付けてくれた。
 最初に出た「夢追い酒」はレパートリーにあったか記憶になく、一瞬戸惑ったが、ライブ前に調べてみたらちゃんとあった。人前で歌うのは実に9年ぶりだが、問題なくやれた。


 順に歌い進むうち、場の雰囲気が少しおかしくなる。感動して涙を流す人が一人二人と現れ、それが次々と会場に広がっていく。一昨日のカフェライブでも涙をみたが、あくまで限定的なもの。涙が伝染してゆくのは初めての経験で、かなり戸惑った。
 リクエストに応じると頼んだ人はそれだけで感動してしまう傾向にあり、今回は叙情系の切ない曲が集中したという背景もあったように思える。

 以前なら歌っている本人もつられて泣いてしまい、崩れてゆくパターンだったが、経験を重ねたいま、それは克服した。
 ともかくも要望には応えて、最後は楽しく賑やかに終わるべく、予め用意した「東京ラプソディ」で歌い収めるつもりだった。しかし、涙で燃え上がった場の気分は簡単には冷めず、「もっと聴きたい…」との声が複数あがる。
 つまりは自然発生的アンコールなのだが、ここで一計を案じ、以前にラストの曲をコラボした職員のAさんに登場してもらうことにした。全く予告なしだったが、Aさんのボーカルを主体に「大空と大地の中で」を歌って、ようやく場を収めることができた。

 終了後にクリスマスライブへの出演を打診される。まだ2ヶ月も先のことで、もし受ければ同施設で年5回のライブという記録更新となるが、こうなれば飽きられるまでお受けするとしよう。