客席で観ていたMさんが私の歌に関心を持ち、ネット検索でメルアドを突き止め、突然連絡してきたという珍しい経緯である。当時のMさんは同じく遠方の介護施設に勤務していて、依頼に応じてはるばる歌いに行った。
4年後の今年、そのMさんから突然のメールがあり、勤務先が変わったが、ぜひまた歌っていただけないか、との打診。札幌北端にある我が家からは、前回訪問した施設よりやや近い。よくぞ忘れずにいてくれたものと、ありがたくお受けした。
延々続く敬老ライブ月間の都合7本目で、一昨日からの3連続ライブである。心身の疲労は溜まっていたが、待っていてくれる方々が確かにいる。それを励みに、今日も歌いに向かった。
先日キャンプで通ったばかりの勝手知ったる道。11時45分に出発して、途中で10分の昼ごはん休憩。渋滞もなくスイスイ進んで、開始20分前の13時10分には先方に着いた。
地方だが、介護施設としての体裁や位置づけは、大都市と少しも変わらない。隣接する老人ホームからも続々と利用者が集まってきて、開始までに聴き手は40名を軽く超えた。
定刻の13時半にライブ開始。初訪問の施設なので最近のセットリストで使っている定番ソングを中心に、40分で13曲を歌う。
(このほか、事前のマイクテストで「北国の春」を歌った)
「高原列車は行く」「おかあさん(森昌子)」「花笠音頭」「バラが咲いた」「幸せなら手をたたこう」「高校三年生」「サクラ咲く(オリジナル)」「三百六十五歩のマーチ」「星影のワルツ」「瀬戸の花嫁」「月がとっても青いから」「浪花節だよ人生は」「青い山脈」
マイクテストの段階から、会場は拍手喝采。確かめてないが、地方という事情もあって、ボランティア演奏自体が珍しいのかもしれない。
ライブの進行と共に場は次第に熱を帯び、1曲毎に歓声と声援が飛んだ。疲れているはずだったが、聴き手に押される感じで喉の調子も尻上がりによくなった。
「花笠音頭」では、特にお願いしていないのに、「チョイチョイ〜♪」の合いの手が聴き手から複数入る。いろいろな場で歌っているが、こんなことは稀。
出だしから全ての曲に手拍子が入ったが、叙情系の曲の「バラが咲いた」にも緩いペースの手拍子が入った。何を歌っても受ける、まさに「入れ食い」状態である。
事前の打合せに従って中盤で歌ったオリジナル「サクラ咲く」では、一転して場が静まり返った。歌いながら気が一点に集中するような独特の空気が漂う。曲に込めた思いが確かに通じたと思う。
このところ続けている終盤の「二択方式」の趣向は、「星影のワルツ」と「瀬戸の花嫁」が今回は互角。結局どちらも歌うことに。
この時点で、時間は当初予定の30分をすでに過ぎていた。時間になりましたので、次の曲で終わりにしましょうか?とMさんに問うと、聴き手からすかさず「どんどんやって〜」との声。スケジュールに問題なければ、あと3曲歌って終わりにしましょうか?と、こちらからMさんに申し出る。
ラスト3曲は実質的にアンコールの位置づけで、「青い山脈」以外は予定外の曲だった。
終了後、MさんからオリジナルCDの案内がある。「オリジナルCDがあるなら、ぜひ持ってきてください」と、事前に言われていたので3枚だけ持参したが、施設に1枚、利用者に2枚が期せずして売れた。
以前にもデイサービスでCDが売れたことがあるので、最近は最低1枚は持参するよう心がけている。チカチカパフォーマンスでの売上げが頭打ち傾向の反面、介護施設でのCD販売は増加傾向にある。
いまのところ先方から要望があった場合のみの限定だが、今後の進むべき方向性を示唆している気がする。
家に戻ったら、さっそくMさんから礼状が届いてた。涙を流して喜んでいた方が多数いたとのこと。その気配は歌いながら察していた。もしかすると、都会の施設よりも歌に対する思いは強いのかもしれない。
移動と経費の問題はあるが、「地方の施設に向けたボランティア活動」もまた、今後の方向性のひとつかもしれない。