地上でパフォーマンスするにはまだ時期的に早いせいか、広場の割当て枠はあっても、午後のエントリーはゼロ。昨秋にこの広場での実証試験を何度もやった私も躊躇していたが、直前の北4条広場でやったチカチカパフォーマンスが納得できない結果だった。
集客や反応がパッとしないのは、もしかして広場そのものとの相性が悪いせいかも…?と思い立ち、ならば広場としては歴史が浅く未知数だが、その分新しい聴き手の反応が期待できるのでは…と、淡い期待を抱いて歌ってみることにした。
広場の休日割当て時間は他と微妙に異なり、13〜16時である。昼食を食べずにいつもより1時間早く家を出た。気温は16度前後で、風は微風。ほどほどに晴れていて、この時期としては条件がいい。
当初は広場東端の駅前通近くで歌うつもりでいた。昨秋の実証試験でも同じ場所で旧道庁に向かって歌い、左右にあるベンチから、それなりの評価をいただいた。
だが到着してみると、その付近は周辺ビルの影が深く落ちていて、寒々とした雰囲気。ベンチに座る人影はない。そこで陽当りのいい西側の旧道庁近くに陣取り、太陽を正面に浴びながら南に向かって歌うことにした。
思っていたより寒いので、急きょジャンパーを着たまま演ることにする。冬物のマフラーを首に巻いてきて正解だった。
13時10分くらいから開始。洋楽を中心に、およそ45分で12曲を歌った。
「ボラーレ」「バラ色の人生」「バラ色の桜と白い林檎の花」「ケ・セラ・セラ」「カントリー・ロード」「エーデルワイス」「サン・トワ・マミー」「河は呼んでいる」「アメイジング・グレイス」「ろくでなし」「イエスタデイ」「オー・シャンゼリゼ」
構成は3日前とかなり変え、屋外を意識して選曲した。通行人はまばらだが、関心を示す人もわずかにいる。開始早々に声をかけてくれた同年代の男性がいて、大いに勇気づけられた。
時折り強い風が吹き、電子譜面搭載のマイクスタンドがぐらつく。右足で脚を押さえながら歌い続けた。
時間の経過と共に陽射しが少し強くなり、それに伴って周辺のベンチに座る人が増えてきた。歓談しながらも、明らかに歌に関心を持っている様子がチラホラ見てとれる。感触としては悪くない。
13時55分で休憩に入り、持参のオニギリを1個食べる。起き抜けになぜかお腹の調子が悪く、出掛けに正露丸を飲んできたが、どうにか大事に至らずに済んだ。
15分休んで、14時10分から再び歌い始める。フォークや昭和歌謡を中心に、65分で14曲を歌う。(※はリクエスト)
「大空と大地の中で」「風来坊」「時代」「ジョニィへの伝言」「少年時代※」「空港※」「ハナミズキ※」「どうぞこのまま」「ブルーライト・ヨコハマ」「赤いスイートピー」「亜麻色の髪の乙女」「宗谷岬」「Too far away」「熱き心に」
休憩中に8〜9歳くらいの女の子数人が集まってきて、回りで鬼ごっこなど始める。一人の子がさかんに「オー・シャンゼリゼ」を口ずさんでいて、どうやら第1ステージラストあたりを聴いていたようだ。
(「オー・シャンゼリゼ」は小学校の音楽の時間で教わるらしい)
関心を示してくれるのはありがたいが、回りを跳ねまわっていては歌いにくい。場所を数メートル東に移動して歌い始めたら、とたんに静かになり、座って聴いてくれた。思いがけず小さな聴き手に囲まれた。
「時代」を終えると、今度は女子高生らしき若い女性が目の前に立つ。
「ずっと聴いてました。すごくよかったです。投げ銭はどこに入れたらいいんですか?」
全く気づかなかったが、やや遠いベンチで聴いていてくれたらしい。単純にありがたくて嬉しい。相手が女神に見えた。
直後に、年齢不詳の女性がマイク前に立つ。興味津々で看板類を眺めているので、すかさず声をかけた。「何かリクエストありますか?」
すると、「小樽のひとよ」をぜひに、と請うが、あいにくレパートリーにない。では得意なのを1曲、と続けるので、陽水の「傘がない」はどうでしょう?と問うと、それもいいけど陽水なら「少年時代」をお願い、と話が変わった。
この女性、次第に能弁になってきて、「どうやればここで歌えるの?」とか、「私も歌は得意なのよ」とか、「私、いくつに見えます?」などと、ほとんど世間話状態で話が弾む。
(40代にしか見えなかったが、すでにお孫さんがいるそうで、仰天)
しばしの交歓のあと、最後に「ハナミズキ」をぜひ一緒に歌いたいという。部分的に歌詞指導しながら共に歌ったが、クラシック系の伸びやかな声で非常にうまい。通りを往く人々も立ち止まって耳を傾けていた。
チカチカ系で聴き手と共に歌ったのは初めての経験だが、時にはこんな交流も悪くない。
4月に屋外で歌ったことは過去になかったが、青空の下で歌うのは独特の開放感がある。聴き手の反応もまずまずで、このところ引きずっていた悪い流れは、ひとまず払拭できたような感じがする。
今後可能であれば、3つの広場を曜日や時間帯を変えつつ、順に歌い継ぐような方向でやっていきたい。「同じような曜日の同じ時間帯に、同じ広場で歌い続ける」のは、もはや自分にとって限界であると悟った。