2015年4月18日土曜日

聴き手に後押しされた

 近隣の地区センターにて、第2回目のリクエスト型オープンコンサート、「叙情歌サロン」を実施。昨年12月初旬に実施した初回が好評で、終了後すぐに2回目の打診が施設側からあった。
 イベントを企画したのは私自身なので、喜んでお引き受けしたが、もし2回目も好評であれば、年に3回ほどのペースで定例化しましょうという、大変ありがたい話である。

 とはいえ、最初が良かったからといって、以降も評価が継続するかどうかは、やってみないと分からない。「初めての物珍しさ」という、フロックであった可能性もなくはない。準備期間は充分にあったので、初回の経験をベースに、細かい修正を加えて臨んだ。


 開催日が土曜で、他に大きなイベントのない日。時間帯はカフェ販売の関連もあって、14〜16時という2点は不動である。
 場所も同じロビー奥の展示コーナーだったが、南面するガラスブロックを背に歌うので、まぶしくて歌い手が見えない時間帯がある、との指摘が一部にあった。
 そこで今回は、ステージ位置をガラスブロック間の壁を背にした中央に設定。さらには、節電目的で普段は電球を外してある真上のスポットライト3灯を、コンサート時間限定で点灯してもらうことになった。

 前回193曲だったリクエスト曲は、67曲増やして260曲に。2週間前からの特訓で充分に歌い込み、万全を期した。


 13時15分くらいに妻を伴って会場入り。普段のライブは妻を一切頼らないが、このコンサートだけは例外。案内状を配った方への接客や写真撮影係として、妻の役目は重要である。
 ステージの飾りつけや椅子の設営は施設側ですでに終わっていたが、前回20席だった椅子は、今回39席に増えていた。前回、椅子がすぐに足りなくなり、追加作業に追われたからで、さすがに多すぎる気もしたが、ひとまずこれでやりましょう、ということに。
 ロビーの一角に設けられたカフェコーナーは、今回から近隣の障がい者授産施設が担当。本格珈琲と手作りパンが各100円で販売されている。
(あとで聞くと、予定分を完売したそうで、大変喜ばしい)

 今回、友人知人への案内状配りは最小限にとどめた。前回実施から日が浅く、あまり頻繁にライブ案内するのも考えもの。案内した方にも、「今後定例化の可能性もありますので、お時間ある時にでもぜひ」と添えるのを忘れなかった。


 友人知人を中心に、三々五々と人が集まってきて、開始時刻までには半分以上の席が埋まる。定刻の14時ちょうどからコンサート開始。メール連絡や早めに来た方への直接聞き取りなどで、リクエストはすでに10曲ほど溜まっている。
 第1ステージでは30分で8曲を歌った。

「麦の唄」「イエスタデイ(オリジナル訳詞)」「川の流れのように」「春雷」「浜千鳥」「年下の男の子」「涙そうそう」「知床旅情」
 1曲目は初回同様、館長さんのリクエスト。以降、ジャンルや曲調に隔たりがないよう、バランスよく配分して歌うのは、不動の自分流ルールである。
 進行に伴って席もじょじょに埋まり、やがて満席に。歌に集中していて気づかなかったが、あとで館長さんに確かめると6席を追加して、最終的には45席となったそうだ。

 最初は固かった場の反応も、歌い進むにつれて、次第に熱い手応えに変わってゆく。あっという間に30分が経って、ここで10分の休憩が入る。
 前回は35分〜5分のセットを3回繰り返したが、気力体力面から今回は30分〜10分のセットに変更した。


 休憩中に会場を回ってリクエストを受け付ける。すでに場は充分にこなれているので、ここで20曲を超すリクエストが一気に集まった。今回も無事にリクエストのみでステージをまかなえそうだ。
 14時40分から第2ステージ開始。やや押して、31分で7曲を歌った。

「釜山港へ帰れ」「ラブ・イズ・オーヴァー」「星影のワルツ」「サクラ咲く(オリジナル)」「いい日旅立ち」「パフ」「時代」

 当初、各ステージでは8曲を歌うつもりでいたが、なぜか7曲しか歌えずじまい。場の反応がよく、普段は省略して歌う部分も、原曲通りについ歌ってしまったせいか。
 今回、知人からの要望もあって、初めて完全なオリジナル曲を歌ってみることにした。CDでの評価が高く、季節的にもピッタリな「サクラ咲く」を選んだが、手応えはあった。
 次回以降のチャンスがあるなら、1曲限定でオリジナル系の曲を歌ってみようかと考えている。
 15時40分から第3ステージ開始。ここまで時間は予定通り。公的空間で演る関係もあるが、「ライブの時間は極力正確に」が我がモットーである。
 ラストステージでは定刻までに余裕があったこともあり、40分で11曲を歌った。

「星影の小径」「津軽海峡冬景色」「卒業写真」「Godfather愛のテーマ」「面影橋から」「世界に一つだけの花」「月の砂漠」「石狩挽歌」「また逢う日まで」「花は咲く」「レット・イット・ビー(オリジナル訳詞)」

 3曲目あたりから、またしても左手指に違和感を覚えた。前回と同じ、緊張下で20曲を超すと発生する指のツリである。ミネラルや水分はスポーツドリンクで充分に補給していたが、まるで効果なし。
 やむなく、曲間でマッサージしたり、セーハでの押さえに余分な力を入れないよう工夫したりして、だましだまし進める。
 この影響からか、得意なはずの「面影橋から」の間奏部で、Bmの押さえが甘くなってしまう、という失態をやらかした。指のツリ対策は、今後克服すべき大きな課題だ。


 それでも進行に伴って、場の反応は尻上がりに熱くなった。第3ステージではリクエストに1曲もお応えしてない方を中心に歌ったが、そのせいもあっただろうか。

「世界に一つだけの花」では自然発生的な手拍子が飛び出す。「叙情歌」をうたい文句にしているので、そもそも場は終始静ひつ。歌い終えたあとの拍手で場の反応を推し量るのが常だったので、この手拍子には正直面食らった。
 終了後も、長い拍手がなかなか終わらない。「ありがとうございます」の挨拶を2度繰り返したほど。
 指に不安を抱えているので、いつでも終われるよう、9曲目にラストには相応しい「また逢う日まで」をまず歌う。しかし、場の熱は一向に収まる気配がない。指は何とか持ちそうだったので、続けて「花は咲く」を歌ったが、逆にこれが火に油を注ぐような効果となってしまった。
 終わると場が一種異様な気分に包まれる。もちろん悪いものではなく、強い高揚感のようなもの。これまで経験したことのない感覚だった。
 この日の男女比は2:8ほどで、初回に比べて女性の比率が増えた。全体的に叙情性の強いリクエストが多かった所以と思われるが、そうした比率も関わっていたかもしれない。

 指はすでに限界に達していたが、とてもそのまま打ち切るような気分ではなく、終了予定までわずかに時間が残っていたこともあり、「熱さまし」として、元気の出る「レット・イット・ビー」で締めくくることに。
 いわば、「聴き手に押された自主的アンコール」といった形で、こんな終わり方も過去にあまり記憶にない。


 終了後、たくさんの方々から声をかけられた。ラストの挨拶で館長さん自らが、「今後も定例イベントとして継続させていただきます」と宣言。

「最初と最後のみなさんの顔つきが、まるで違ってましたよ。喜びに満ちて輝いていました」と館長さんから指摘される。
(ちなみに、館長さんは途中の演奏には立ち会っていない)
 自分がステージで感じた思いと一致している。

 全ての方のリクエストにはお応えしたが、最終的に歌えなかった曲は、「糸」「恋人よ」「時の流れに身をまかせ」「少年時代」の4曲。前回との重複曲は、「時代」「川の流れのように」のわずか2曲のみ。聴き手側の絶妙なバランス感覚を感じる。
 気力体力面での課題は残ったが、満足できるコンサートだった。