決まったステージもなく、歌い手と聴き手とが交じり合って好きな場所で歌い進むので、自由に語り合う雰囲気がこの種の場にはある。
もっともな考えだが、無理に譜面を見ずに歌い、歌詞やコードを見失って狼狽えるよりはマシではないか、と私は考えている。
誰もが知っているギター弾き語りのプロでも、足元に大型の電子譜面台を置き、歌詞とコードを見て歌っている例を多く知っている。歌の進行にあわせて画面が切り替わっているので、専門のオペレーターがいるものと思われる。
ちょっとシャクだったので、その時はあえて譜面台を使わず、カウンターテーブルに譜面を置いて時折眺めながら歌う、というスタイルでやった。
(写真で見ると、暗譜して歌っているように見える)
その後暗譜についていろいろ考えた。何度も歌っている定番曲なら、もしかすると譜面を見ずに歌えるのでは?と。
750曲ほどのレパートリーのうち、暗譜して歌える曲はわずか10曲程度に過ぎないが、試しに手慣れた曲を譜面なしで歌ってみた。するとどうにか歌えるが、あとで確かめると歌詞やコードの一部がやはり怪しい。
譜面台を使わずに歌うことができれば、PAを一切使わない生歌形式の場なら、好きな場所で歩きながらでも自在に歌える。これは大きな武器だ。どうにかしたい。
若い頃にB6のカードに譜面を書き、洗濯バサミでギターネックに挟んで歌ったことを思い出す。文房具の目玉クリップを使って似たような譜面クリップを作ろうと思った。
スピンドルケース入りCDの上下に入っている透明のドーナッツ型円盤2枚を重ね、端部にドリルで穴を開け、手持ちのプラスチック製目玉クリップにM4ボルト・ナットで止める。
ギターネック部上端の3~4弦に挟みつけ、譜面は手持ちのデータベースからB6サイズの紙に縮小印刷。円盤を前後に少しずらしてやると着脱も容易で、風でも飛ばない。
端材を利用してほんの閃きで作ってみたが、一発でうまくいった。
試しに数曲歌ってみたが、歩きながらでも充分に歌える。時折譜面に目をやって確かめるが、セーハするコードなどでは随時左手に目をやって歌い進める癖があるので、あまり不自然にはならない。
少なくとも猫背で屈みこんで譜面台を覗きこみつつ歌い進めるより、ずっと見映えはよいはずだ。
何も伝えずに妻に歌う姿を見てもらったら、そんな仕掛けがあったことに全く気づかれなかった。明るい場所なら譜面は充分に見えるが、ほの暗い場所でも同じようにやれるのか、近いうちに実戦で確かめたい。