2011年1月26日水曜日

切れない確かな糸

 この20数年、毎年欠かさずクリスマスカードをくれていたカナダ・バンクーバー在住のCさんから、今年はなぜか届かなかった。クリスマスカードには家族の近況が詳細に記された手紙がいつも同封されていて、その返信を「年賀状」という形で送るのが、このところの習慣だった。
 年賀状もそうだが、喪中などがきっかけで、長年のつきあいが不意に途切れることがままある。互いの近況をマメに伝え合う相手とは、たとえ年に一度の交換でも細々と続くものだが、愛想のないパターン文面だけになると、感覚的にはいつ途切れてもおかしくない危険信号である。

 どちらからともなく関係が切れてしまうのは、互いがたとえば思い出だけの関係としても必要としなくなったからで、それが流れゆく人生というもの。無理に竿さして、引き止める必要もない。


 とはいえ、ホームスティがきっかけで、長年続いていたCさん一家との交流が予告もなしに途切れてしまうのはさすがに寂しく、こちらからもう一度だけ新年のカードを送ってみようか、いやまて、もう少し待ってみようかと逡巡するうち、いつの間にか1月も下旬になってしまった。

 そのCさんから、思い出したようにカードが届いた。スタイルはクリスマスカードだが、文面は新年を祝うカードである。いつもの添書きを読むと、イギリス在住の義姉が亡くなり、何かとあわただしかった様子。
 去年カードに同封したシャンソンコンサートのCDを、「You sing and play well !」と、大変喜んでくれている。気持ちはちゃんと届いていたようだ。
 Cさんは60代半ばを過ぎているが、教師の資格を活かし、いまだに週1回地元の保育施設でボランティアに近い教育指導をしているそうだ。自分のやれる範囲での社会参加で、見習いたいと思う。

 少し遅れてしまったが、年賀状に使った画像を見開きのカードにレイアウトし直し、近況を添えて送った。細いが、切れない確かな糸がまたつながった。