折からの豪雪で、交通事情は極度に悪い。安全をみて午前10時には家を出たいが、除雪作業は9時開始。事前のリハや機材積込み時間を考慮すると、除雪への参加は難しい感じがした。
しかし、どちらも広い意味でのボランティア活動である。自分だけ早めに作業を始めれば、部分的な除雪は可能ではないか?そう考え、早めに起きて8時45分には町内会館の屋根に昇り、雪下ろしを始めた。凍りついた雪に手こずり、スコップの一部が割れてしまうというアクシデントがあったが、30分ほどで雪は下ろし終えた。
平地の雪山除去の作業が残っていたが、事情を話して早退。すぐに家に戻り、汗で濡れた衣類を取り替える。休む間もなく、最終リハを始めた。
一通り終わって機材一式を積み込み、家を出たのが10時15分。途中の道は予想通り混んでいる。路肩に山のように盛り上がった雪をダンプに積み込み、堆積場に搬出する作業をあちこちでやっていて、それが混雑に拍車をかけていた。
南に進むにつれ、雪はだんだん少なくなり、車は順調に走り出す。11時25分に無事に会場に着く。すぐに担当のWさんと打合せ。歌う予定の曲目リストを事前に見せたが、場合によっては外すつもりでいた「東京ドドンパ娘」にはOKが出た。
施設はこれまで見たことがないほど立派である。介護の必要がない方も入居可能とのことで、スタイルは高級マンションに近い印象だ。
少し遅れて12時5分くらいからライブ開始。聴き手はおよそ60名ほどで、ほぼ正方形の会場である。昼食の直後なので、同じ空間にある厨房の片づけの音がかなり大きく、やむなくPAのボリュームを少し上げた。
「演歌はやらない」「クラシック等の洋楽を中心に」という、これまた例のない難しい要望が事前にあったので、構成には頭を悩ませた。
1曲目は「カントリー・ロード」を歌う気でいたが、昨夜遅くになって突然気が変わった。「カントリー・ロード」は確かに洋楽だが、ジャンルはカントリー。高齢者相手では難しいかもしれないと感じ、クセのないスイス民謡の「おおブレネリ」に差替えた。
「ノリのいい曲をみなさん好まれますよ」と、事前にWさんには聞いていたが、実際に歌ってみると、反応のよいのは逆に叙情系のしっとりした曲だった。
2-3曲目の「埴生の宿」「浜千鳥」では一緒に口ずさんでくれる方が多数いたし、中盤の「野ばら」のメドレーでは、多くの人の目が生き生きと輝きだしたのがはっきり分かった。二つのメロディのどちらにも一緒に歌ってくれる方がいて、最高の手応え。覚えたての曲だが、この「野ばらメドレー」は、たぶん別の場でも使える。
あまりの反応の良さに、状況次第では飛ばすつもりでいた「菩提樹」を急きょ歌う。この歌はもちろん、その後歌った「オー・ソレ・ミオ」にまでも、一緒に歌ってくれる方がいて、非常に驚いた。
反面、ノリのいいはずだったアップテンポ調の「東京ドドンパ娘」「サン・トワ・マミー」「恋のバカンス」等に対する場の反応はいまひとつ。あとで確かめてみたら、この種の曲は担当のWさんが大好きなんだという。そういうことでした。
合計11曲をぴったり30分で歌い終える。場の雰囲気からして当たるのは確実と思われた「蘇州夜曲」は、結果的に歌えずじまい。惜しいことをした。
しかし、終了後に複数の方が近寄ってきてねぎらってくれ、施設長やWさんも「これほどみなさんが乗ってくださったのは、初めてです」と、興奮気味に語ってくれたので、最低限の義務は果たせたようだ。
(施設は開設5年目である)
反省点は、「埴生の宿」で歌詞の「鳥」を「虫」といい間違えたこと。「野ばら」の出だしを3/4拍子で入るべきなのを、4/4でやってしまったこと。(歌はちゃんとワルツでやった)
「オー・ソレ・ミオ」の途中で歌詞を見失い、「うるわしの…」の部分の入りがやや遅れたこと。
いずれも全体からみれば大きなキズではないが、「初めての厳しい場」という状況がそうさせたように思える。「完全無欠のライブ」というのは実に難しいもので、どのような状況下でもそれができるのが、いわゆるプロなのかな…、と最近は思うのだ。