2011年1月25日火曜日

楽しき一夜

 雪も仕事も訪問ライブもまとめて一段落し、母の様子も見てきたので、昨年12月に一度行ったきりのご近所ライブ酒場「Life」に、再び顔を出した。
 雪は降ってないが、道はまだ完全に除雪されていず、交差点での見通しが極端に悪く、歩道はまるで雪のトンネルのよう。路面はカチカチに凍てついていて歩きにくい。事故に遭わないよう慎重に歩き、20分で到着。
 忘れられたかと思っていたが、マスターはちゃんと覚えていてくれた。悪路と寒さに備え、防寒長靴をはいて上靴持参で行ったが、入口にちゃんと履き替えスリッパが並べてあった。さすがは豪雪地区のライブハウス、用意がいい。
 午後8時半頃だったが、店は閑散としている。不況と豪雪のダブルパンチで最近はどこも似たようなものらしい。

 マスターも豪雪地区の戸建住宅に住んでいるので、歌も歌わず、しばし「豪雪談義」にふけっていたら、9時過ぎになって夫婦連れの客がやってきた。歌好きの夫婦らしく、座るやいなや、続けざまにカラオケで歌いだす。
 そうするうち、別の中年女性客が現れ、3人が交互に歌い続ける。みなさん非常に達者な喉で、今夜は聞き役だなと拍手に徹していたら、しばらくしてマスターが「何か歌ってくださいよ」と耳元でささやいた。


 楽譜一式と自分用のサムピック、カポはいちおう準備して行ったので、言われるままにステージに座った。話の流れで、いきなりシャンソンを歌うことになる。前日も歌ったばかりだが、定番の「サン・トワ・マミー」をまず歌った。こうした場であまりにマニアックな曲やオリジナル曲は禁物である。
 ライブの翌日は喉の休養日といつもは決めていて、あまり調子はよくない。声に伸びとツヤがない感じだ。しかし、歌い終えるといきなり「もう1曲!」「今度はこうせつを歌って」「松山千春はやらないの?」と、あれこれ声がかかる。
 アンコールには基本的に応えるので、調子に乗って目下練習中の「少しは私に愛を下さい」を続けて歌う。

 この曲、以前に知人からいただいた、シャンソン歌手のしますえよしおさんのCDに入っていた。小椋佳の初期作品で、ジャンル的にはフォーク。しかし、しますえさんはこれをシャンソン風にアレンジして巧みに歌っている。
 キーは私のほうが少し高いが、真似て私もシャンソン風アレンジでずっと練習していた。初披露だが、これがかなり受けた。前奏と間奏に面倒なピッキング(私にしては)を入れたが、ノーミス。
 非常に入り込める歌で、自分に向いている曲だと思う。シャンソン系コンサートでも、間違いなく使える。

 その後、マスターのギターと女性客のボーカルで「東へ西へ」(井上陽水)が始まったので、途中でお店に置いてあるカホンを叩いて乱入。突発的なセッションだったが、いい感じに決まった。
 夫婦客と中年女性客は順に帰ったが、みなさん帰り際に私にまでていねいに挨拶して下さって、恐縮しきり。男性客とは差し出されるままに固い握手まで交した。そういう土地柄なのである。
 3時間以上も長居して、珍しくアルコール類を3杯も飲む。店はまだまだ盛り上がっていたが、ほどほどにして帰路についた。えらく冷えるなと思って家の寒暖計で確認したら、マイナス13度まで下がっていた。
 しかし、大雪よりも寒さのほうが余程ましというもの。うまい酒と会話、そして好きな歌に囲まれ、楽しい一夜であった。