2011年1月10日月曜日

介護施設でもフォーク

 豪雪のまっただ中に実施された介護施設訪問ライブが無事に終わった。今回も依頼はネット経由。介護施設系ライブの依頼は、「一度歌った場からの再依頼」「以前に別のライブで見かけて」そしてこの「ネット経由」の3つに大別されるが、最近急増中なのがネット経由である。
 登録しているボランティアNPO法人のサイト経由や、単純なネット検索によるものだが、過去の詳細なレポートや、YouTubeを中心とする音源等の情報公開により、頼みやすい雰囲気はあるらしい。


 今回のライブには難しい条件がいくつかあった。まず、聴き手の層が下は20代から上は90代と、とんでもなく幅が広いこと。「グループホーム」「ディサービス」「障がい者施設」の3つを兼ね備えた都心の大規模施設からの依頼なので、そういうことになるらしい。
「どの世代にも受ける」という歌はそうないので、正月休暇で帰省中の息子の意見も聞き、選曲にはかなり頭を悩ませた。
 当日になって、別の問題が発生した。数日前からの豪雪で雪かきに追われ、腰痛の持病を持つ体調が充分ではない。前日には町内会新年会が離れた公共施設であり、雪の中を歩いて苦手な宴会に4時間近くおつきあいする。
 二次会のカラオケは固辞してすぐに家に戻り、ライブの準備をするはずが、空きっ腹にビールを飲み過ぎたせいか、そのまま夕食まで寝込んでしまい、歌の最終練習は夜半に15分ほどしかできなかった。

 当日になっても雪は降り止まず、最終リハをする以前に、まず車庫前の雪かきを強いられた。道路の渋滞が予想されたので、予定よりかなり早く出かける必要があり、結局当日のリハも15分ほどで打ち切り。
 先方には開始20分前に何とか到着したが、10階建ビルの2階にある施設には駐車場がなく、2ブロック離れたコイン駐車場から、重い荷物を3つ抱えて滑る道をトボトボ歩く。
 ようやく着いた施設玄関には、厳重なセキュリティシステムがあって、簡単には入れない。インタホンを探しても見つからず、携帯は車の中に忘れてきた。途方に暮れていると、たまたま帰りがけの施設職員の方が通りかかって、声をかけてくれた。教えられた別の入口からようやく中に入る。やれやれ。


 休む間もなく、ただちに機材をセット。寒い道を歩き、階段を何度も昇り降りしたせいで腰も腕もしびれて痛いが、泣き言はいってられない。ともかくも準備は予定5分前に終わり、ライブはぴったり12時30分に始まった。
 聴き手は職員も含めて50名を超える。確かに年齢層は幅広く、しかも会場が横にだだっ広い。歌いながらの視線や身体の向きの変え方、音の広がり具合など、縦長よりはるかに難しい場だ。
 さまざまなトラブルの影響を心配したが、ライブそのものは順調だった。工夫をこらした選曲も当たった。場がつかみきれないので、珍しく最初から「一月一日」「ウインターワンダーランド」の2曲をメドレーで歌ったが、どちらにも間髪を入れず手拍子が出た。

 3曲目の「さくらさくら」で冷えきった指が少し動かず、一瞬あせったが、どうにか持ち直す。「上を向いて歩こう」で、会場を順に見回しながら歌っていたら、一瞬歌詞を見失った。横に広い場での難しさがここにある。
「ピクニック」とアンコールの「二人は若い」では、かけ声の部分を聴き手に完全に任せてみたが、大変ノリのいい方が数人いらして、上手に反応してくれた。その際、ギターストロークを一瞬止めた弊害で、流れに戻るのに多少もたついてしまった。
 全体としては大きなキズではなかったが、前回ライブではうまくいっていた部分。直前のトラブルをここでも引きずっていたかもしれない。
 いろいろあったが、結果としてみなさんには大変喜んでいただいた。フットタンバリンを要所に入れた効果か、終始拍手と歓声が絶えなかった。拍手は普通でない「さくらさくら」「宗谷岬」「いい日旅立ち」にまで、曲調に合わせた手拍子をそれぞれいただく。
 予期せぬ難しい条件の中でも、大崩れせずにそれなりに場をまとめられたのは大きな成果だった。

「菊地さん、南こうせつに声質がとても似てますね。今度菊地さんの『夢一夜』をぜひ聴いてみたい」と、帰りがけに責任者のN子さんから唐突に言われた。この施設ではフォークもOKということで、カラオケ大会でもしばしば「かぐや姫」が飛び出すとか。次回のリクエストとしてありがたくお受けした。
 昨年末の「白いブランコ」のリクエストでも感じたが、いよいよ介護施設でもフォークの時代到来のようである。