今日は昼まで眠っていて、起きると早めに勤めから戻った妻を乗せ、やや遠方にある母の暮す介護施設へと車を走らせた。幹線道路に雪はほとんどなく、裏道をうまく走って、およそ40分で着いた。
実は先週末、施設の看護担当の方から、母の素行に関する報告があった。例によって子細は書けないが、施設側の管理に関わる問題でもあって、どうしたことかと、ずっと頭を悩ませていた。明日締切の仕事はまだ残っているが、キリのいいところで一度は様子を見に行きたかった。
施設を初めて訪問する妻は、その立派さに驚いている。背後が森に囲まれた周囲環境も抜群。大型スーパーは施設の隣で、最寄りの地下鉄駅からは徒歩わずか10分である。
母は自室ではなく、食堂にいた。ちょうど3時ころで、別の入居者とミカンなど食べながら、親しげに話し込んでいる。
「だ〜れだ」と目の前に顔を差し出すと、すぐに私の名を呼んだ。妻の名は思い出せないが、私の連れ合いであることは認識している。
向かいの女性も交え、椅子に座ってしばしの歓談。知らない者同士だが、すぐに打ち解けた。女性は母よりも6歳下で、地方出身なので、身内はほとんど会いにこないとか。さかんにうらやましがられた。
こうした場面での私は、実にそつなく話をつなげる。人間関係におけるバランス感覚は、たぶん私の大きな長所だ。
母は非常に落ち着いていて、かなり安心した。「いい所だ」と、施設をすっかり気に入った様子。明るくて暖かく、食事や入浴、洗濯も全部やってくれる。職員は親切で、気さくに話せる相手もいる。
場をしばし妻にまかせ、職員のコーナーに行って、担当看護師の方と別室で面談した。問題行動の解析と、その後の対応とで、大きな問題はなくなったとのこと。正直、ほっとした。
その後母の部屋を確認したが、ベットのすぐ横にあるトイレのドアに「ここはトイレです!」と、巨大な手書きの貼紙が。なるほど、そうでしたか…。
「また来るよ」と手を振ったら、食堂からエレベーターまで、わざわざ見送りに来た。また少し背が縮んだが、歩く姿勢はしっかりしている。ひとまず今日のところは安心である。今日のところは。