《仕事》
最初はやはりこの項目。60歳を迎えたので世間的には定年だが、自由業の身としては、さほどの実感はない。やむを得ない事情で今年もかなり徹夜仕事をしたが、体感的にはまだまだやれそうだ。
問題は100年に一度とやらの金融不況による、仕事環境の激変。背負う物が極めて少ない気ままな一匹狼的事業を自負する私でも、それは例外ではなく、昨年12月から今年2月まで、本業であるはずの建築デザイン関連の仕事は皆無だった。
営業回りをしても無駄な印象がしたので、本業以外のデザイン、たとえば記念誌編集や飲食店ポスターデザインなど、なりふり構わずてがけた。
夏以降、ずっと依頼の途切れていた取引先がじょじょに復活。要因のひとつが思い切ったコストダウンで、これまでより質は全く落とさず、価格だけを15%ほど下げた。
同じ時期、ある取引先の紹介で、首都圏にある大手広告代理店から、仕事の引合いがきた。他の設計者が描いたスケッチ等を元に、広告用の図面に描き直す仕事で、デザイン的な面白さが少なく、単純作業に近い。
しかも、先方の求める価格が、世間相場の50-80%というもの。さらには、指定された2D-CADソフトが私の不得手とするものだった。
しかし、迷わず受けた。仕事を選んでいる余裕はない。苦手な部分は懸命に独学して何とか克服。年末近くに驚くほどの数の注文が舞い込み、年初の落ち込み分を充分にカバーしてくれた。
記念誌の編集やポスターデザインなども含め、新しい仕事を通して新しいデザイン技術を会得することができたのは、今年の大きな収穫である。間違いなく今後にも活きる。
「なりふり構わず、新しい仕事を受ける」
「価格は思い切って下げる」
この英断が結果的に効いた。来年にむけても、同じスタンスで立ち向かうべきだし、そうしないと、たちまち喰いはぐれてしまう。時代は素早い決断と実行を求めている。
《趣味》
目下の最大の趣味活動であるギター弾き語りで、今年は19本のライブをこなした。調べてみると去年は15本だったので、加齢とは反対に増えている。こちらもまだまだやれる感じがする。
今年はイベント系、自宅系、施設訪問系、青空系、ライブハウス系と、そのバリエーションも実に雑多。人生の記憶に残るたくさんのライブを経験した。
最大のイベントは、準備に半年近くを費やした還暦コンサート「ガラスの時間」であろう。友人と家族の絆を確かめあい、明日からの自分たち夫婦の生き方を示唆する、重要な位置づけとなった。
来年にむけての抱負、といきたいところだが、とりあえず何もない。これからもふと思い立ったことを、時に応じて気ままに企て、実行に移してゆく。仕事でも趣味でも社会活動でも、それは同じこと。
命つきるまで、ずっとこんなふうにやっていけたら、それはきっと楽しくて、充実した人生だということなのだろう。