本文はA5サイズなので、表紙は倍のA4サイズとなるが、背の部分に厚みがとられるので、単純にA4版にレイアウトするだけでは駄目。A4よりも少しだけ大きい紙が必要になる。ここが表紙作成の大きなポイントなのだ。
最も簡単なのは、一回り大きいB4の紙にレイアウトし、裁断の目安となる「トンボ」というマークを外側に入れてやればよい。
しかし、残念ながら去年新たに購入したレーザープリンタはA4版対応。最大印刷サイズは幅216×長410で、外側にトンボを配置して印刷するのが、何度やってもうまくいかない。
試しに修理を終えたばかりのインクジェットプリンタでやってみると、A3版まで対応なので印刷そのものはすんなり出来る。ところが表紙はタント紙と呼ばれるザラついた特殊紙なので、微妙にインクがにじむ。印刷精度に限れば、やはりレーザープリンタに勝るものはない。
印刷イメージをファイル保存し、CDに焼いて印刷屋に持ち込めば簡単だが、かなりの外注費用がかかる。予算の打合せはすでに終わっていて、そう余裕はない。トンボなしで手持ちのレーザープリンタで印刷し、それを製本業者に持ち込んで何とか製本してもらうのがベストだが、それが果たして技術的に可能なのか、自分ではどうにも判断がつかなかった。
思いあまって去年製本の見積りをとったプリントショップに電話を入れた。この業者には9年前に70冊だけ手刷りで作った自費出版本のときにも依頼した経緯がある。
こちらの理不尽とも思える要求に親切に相談に乗ってくれ、「背文字を用紙のセンターに完全に配置すること」を条件に、何とかトンボなしで製本に応じてくれることになった。しかも追加料金なしの通常価格。これで手持ちのプリンタですべて対応出来る。ありがたい。
あとは表紙となる紙の注文である。納品は100冊だが、ロスを1割見込んで110枚必要。そのサイズが幅216×長310という、A4を少しだけ大きくした半端な寸法。もちろん既成サイズにはない。
紙そのものはB4でも1枚30円くらいだが、カット代の割増し分がかかる可能性が高い。しかも、製本の際にきれいに折れるよう、紙の折り目(紙にはすべて目に見えない「折り目」というものが存在する)が縦にくるよう裁断しなくてはならぬ。
これらの条件をすべて満たしつつ、色や紙質、そして厚さを決める。以前に頼んだ紙専門業者が都心にあるので、来週はその打合せをする。
本を作るのは単純に文章や写真、イラストをデザイン的に処理してレイアウトする作業のほか、この種の雑多な知識も必要で、非常に煩雑である。世間の自費出版本の相場が上装本500冊で100万以上、などと言われているが、妥当な価格かもしれない。
私のウリは、少ない册数で安い価格、といったところ。はっきりいって仕事も早い。テキストデータ提供の100ページ100冊なら、1冊1000円でやれる。今回、初めてお金をいただいて人様の本を手がけたが、ちょっと自信を持った。
文章そのものを書くのは得意で、校正関係の専門知識もある。デザインの仕事もいちおうはプロ。家内制手工業なので、企業レベルでは見向きもされない半端仕事でも、ごく安いコストでできる。
趣味の団体の記念誌、個人やグループの句集や歌集、趣味講座の教則本など、予算も部数も少ないが、ある程度の体裁が整った本の潜在ニーズは、かなり埋もれていると見る。今回の仕事のメドがついたら、こうした簡素な本作りの仕事を、本腰を入れてやろうかと真面目に考えている。