その際の手応えがいまひとつだった。経営母体は同じなので、入居者の入替えが少なく、年々高齢化が進むという条件も同じ。同じ轍を踏む可能性がある。歌い手としては悩ましいが、前回までの記録を入念に調べたりし、考えうる限りの対策を練って臨んだ。
裏道を通ったこともあって、わずか30分で到着。今回もPAは2スピーカー方式を選択した。最近はチカチカパフォーマンス以外、全て2スピーカーで対応している。音が安定しているし、機材にも工夫して車から一回で移動できる態勢も整えた。
14時15分からイベント開始。まず施設側のイベントが10分あって、プレゼント贈呈などが行われる。3月が誕生日の最高齢入居者は108歳だそうで、元気に参加されていた。100歳を超える方に遭遇するのは初めてだ。
14時25分から私の出番。先月のようにオヤツや飲み物は配られず、歌い手にとっては条件がいい。およそ35分で12曲を歌った。
「北国の春」「おかあさん」「みかんの花咲く丘」「幸せなら手をたたこう」「リンゴの唄」「宗谷岬」「さくらさくら」「釜山港へ帰れ」「仰げば尊し」「月がとっても青いから」「花笠音頭」「高校三年生」
構成はこのところずっと採用している「春メニュー」が中心だが、前回の反省をふまえ、単純に聴いてもらうだけでいい叙情性の強い曲を多めにした。
中間部で歌った唱歌系の「さくらさくら」「仰げば尊し」では、一緒に歌う人が多数。涙を流す方もいた。「3月誕生会」ということで、内容的にもタイムリーだった。
聴き手は50名ほどで、最後まで集中を切らすことなく、無難にまとめられたと思う。先月末のライブで抱いた漠然とした不安は、どうにか払拭できた。
終了後、ようやく全員にお茶とオヤツが配られた。ライブとオヤツとが重ならないよう、どうやら施設側が配慮してくれたようだ。ありがたいことである。
たとえ経営母体が同じでも、細かい行事の進行手段は、各施設に委ねられている。それをどう解釈し、どうまとめるかは、それぞれの施設長や担当者の裁量次第ということなのだろう。
ライブは歌い手の力量だけではどうにもならない部分が確かにある。ちょっとした気配りで、ライブはガラリと変貌する。場を取り仕切る側の役目は大きい。