いわゆる「高くて険しい3度目の壁」を軽々と乗り越えてしまったわけで、そのこと自体は大変うれしかった。だが、さすがに短期間でこうも依頼が頻繁だと、歌う側としては逆に不安になる。
(利用者に飽きられてしまうのではないか…?)
しかし、先方はぜひにと熱心である。「請われるうちが華」と割り切り、結局お受けすることにした。
とはいえ、なるべく過去ライブとの重複曲は避けたかった。幸いに前回は春メニューで歌っている。今回は全面的に夏らしい構成で臨むことにした。「サマーライブ」とは、そんな打合せのなかで施設側が命名してくれた名前。
「今後、もし継続的にご依頼いただけるなら、季節ごとに」ともお願いしてあるので、その意味もある。もしも「次」があったなら、「オータムライブ」というタイトルになるはずだが、本当にそうなるかは、神のみぞ知る領域のハナシ。
ともかくも、車を飛ばして開始15分前の14時45分に先方に到着。10分で準備を終えたが、開始前のわずかな時間で、早くもリクエストの話となる。
希望は、菅原洋一、フランク永井の歌。どちらもレパートリーにあるので、事前に電子譜面を繰って、曲を準備しておいた。
そうするうち、別の利用者から「ダーク・ダックスはグループですから、無理ですよね?」と尋ねられる。「いえ、ソロでよろしければ歌いますよ」と応じる。
そうするうち、開始時間となる。まずは私自身の構成による12曲を35分で歌い、その後アンコールとしてリクエスト曲を10分で3曲歌った。
「憧れのハワイ航路」「知床旅情」「お富さん」「青春サイクリング」「ちゃっきり節」「二人は若い」「バラが咲いた」「浪花節だよ人生は」「恋する夏の日」「われは海の子」「東京ドドンパ娘」「月がとっても青いから」
〜アンコール&リクエスト
「知りたくないの(菅原洋一)」「君恋し(フランク永井)」「銀色の道(ダーク・ダックス)」
利用者は週1〜3回の範囲内で曜日ごとに毎日入れ替わるそうで、これまでの2回で見知った顔もあれば、今回が初めての方もいる。嗜好がつかみにくく、毎回雰囲気が変わる難しさがある。前2回比べて、今回は全体的に場が大人しい感じがした。
「知床旅情」「われは海の子」では歌いながら歌詞指導をし、「二人は若い」では、曲間の伴奏中に合いの手を聴き手にお願いするなど、場をつかむ工夫は怠らなかったが、冷静に判断して、3回の中では今回が最も盛り上がりに欠けた印象はある。
反省点として、「夏」に固執せず、もう少し定番曲を入れるべきだったかもしれない。(たとえば「高校三年生」「青い山脈」など)
「夏の民謡」として歌ったはずの「ちゃっきり節」の反応が弱く、拍子抜け。先週別の施設で歌った際もそうだったが、この曲は北海道人にとって、馴染みが薄い感じだ。「北海盆唄」などが無難だった。
場が最も盛り上がったのは、リクエストタイムだった。「知りたくないの」はチカチカパフォーマンスでしばしば歌っているが、実は洋楽系の曲である。菅原洋一のリクエストが介護施設で出ること自体が、オドロキ。
「君恋し」「銀色の道」は久しぶりに歌ったが、無難にこなした。一度歌いこんだ曲は、たとえ数年のブランクがあっても、本能的に歌えるもの。
なかでも「君恋し」の反応が抜群。「イニシエの有名歌手の曲は、最低1曲をレパートリーに」と自らに課しているが、地道な努力が実った。まだ多少の「欠け」(たとえば、都はるみや五木ひろしが苦手、など)はあるが、今後もコツコツとレパートリーを増やしたい。