2010年2月26日金曜日

切ない夕暮れ

 今日は母が退院し、施設に移る日。13時30分が病院での待ち合わせ時間で、女子フィギアスケートのフリー演技を横目で見つつ、ぎりぎりまで仕事を続ける。
 早めの12時半に家を出たが、ここ数日の暖気で雪解けが急速に進んだこともあって、道はガラガラに空いている。よく考えたら、みんな家の中でオリンピックのテレビ観戦をしているせいかもしれない。

 13時ちょうどに病院に到着。上の姉はすでに着いていて、スケートの行方をかなり気にしている。気持ちは分かるが、本命の出番は13時20分過ぎ。まずはナースステーションに行き、看護師さんに挨拶をする。
 母もなぜかナースステーションにいて、息子と娘が同時に見舞いに来たことをいぶかっている。さては今日の退院を知らないのでは?と思って確かめたら、やはりそうだった。
 いまさら隠し立てしても仕方がないので、病院の紹介で別の施設に移るんだよと、私から伝えると、案外素直に受け入れた。
 迎えの車がなかなか来ず、看護師さんが病院の服から普段着に着替えさせてくれるというので、それを機に病室から1階ロビーに移動。テレビでちょうどラスト5人の滑走が始まったところで、他の患者さんや職員の方々と共に、運良くライブで見届けた。
 結果は予想通り、キムヨナ選手の圧勝。マオ選手は今季の不振からよく挽回したが、両者の力の差は歴然。しかし、あくまで「現行の採点基準の元で」という前提つきである。
 資質面で二人に大きな差はない気がするので、あとは採点基準の変化に対応した演技構成など、戦略面の見直しと、大舞台での精神面の強化が課題か。周囲によいブレーンをそろえることも大切だろう。
だから、いっそ4年後は日本国籍でエントリーしてもらい、「ソチに任せたぞ」ってのはいかがか?

 14時少し前に迎えが来て、ようやく出発。主治医の先生までが玄関先で送ってくださった。
 都心を避けて裏道を走り、20分くらいで到着。「家に帰りたい」と母にダダをこねられるのを内心恐れていたが、母もいよいよ観念したのか、大人しく従ってくれた。
 まるでホテルのような立派なワンルームをあてがわれ、暖かくて清潔な環境、そして親切なスタッフ。食堂と事務室は部屋の真横という至れり尽くせりの配慮に、ただ感謝する。

 16時までいろいろな説明を聞き、館内を探訪し、さあ帰ろうと母に声をかけたら、ちょっと寂しそうな顔をされて困った。「明日もまた来てね」、などと無理を言う。慣れぬ環境への不安が表情に滲んでいる。あれこれあっても、肉親である。
「また来るから」と言って手を振ったが、やはり切ない。切ない夕暮れである。