2010年2月15日月曜日

発酵スクラップ

 事務合理化作業の一環として、かなり溜まっているスクラップの整理に励んでいる。気になった新聞や雑誌があると、写真左端に見える大きめの箱(菓子の空き箱)に切り抜いて出典と年月日を記し、ひとまず放り込んでおく。
 ある程度の時間を経たあと、大きさに応じてA4のコピー紙か、昨日のブログに書いたB6カードに貼り、分類整理保存する。

 整理するのは何年かに一度で、それまでに記事が必要になった場合は、箱をひっくり返して探す。
 これでは効率が悪いので、「仕事」「趣味」「人生」という3つの透明フォルダを作り、箱の中を暫定的に分類した。同時に、必要のなくなった記事を処分する。


 切り取ってすぐにファイリングしないのは、手間の問題のほか、記事そのものに対し、自分なりの「発酵」を待つためだ。切り取った当初は新鮮に思えた記事でも、時の流れと共に色あせ、やがて必要なくなってしまう場合がある。少し時間を置けば、手間と台紙の無駄も省けるというもの。
 作業中、非常に興味深い新聞記事を見つけた。(正確に書くと、"思い出した")2年前の地方紙のコラムに掲載されたもので、著者は北海道東海大学の乾淑子教授である。

「伴侶」というタイトルで、人が異性を求める所以は単なる性欲からだけでなく、人として丸ごと受け止められ、認められるからである、という主旨。
 いわゆるアイデンティティの確立は、自分の内なる世界の構築だけでなく、他から認められてこそ初めて成立するもの、ということか。

 注目すべきは、乾教授の専攻が文学や人類学ではなく、美術史であること。人生はどのような場からでも学べるという典型だろう。
 スクラップは10代後半から始め、手元にある最も古い資料の日付は1971年。随分長く続く習慣だが、こんな貴重な文体に、忘れた頃に遭遇できる。だからやめられない。