咄嗟に身を低くしてかわし、急いで自宅へと走る。すると後方から再び同じカラスが追いかけてくる。カラスは先回りして自宅前の車庫の屋根に止まった。
思わず、「何だ、お前」と声を出したら、カラスはそれを自分に対する「攻撃」とみなしたのか、再び真正面から襲ってきた。
(あとで知ったが、「走って逃げる」「声で威嚇する」は逆効果らしい)
2度目は至近距離で、さすがに恐怖心にとらわれた。片手で顔をかばってカラスをかわし、そのまま玄関に逃げこむ。ヒッチコックの「鳥」の世界そのままである。
調べによると、5〜7月のカラスは子育ての時期で、必要以上に神経質になっているらしい。怖くて近寄れないが、自宅北側の土手に自生するアカシアの大木数本のどこかに、カラスの巣があるのではないか。
数日経って、今度は妻が襲われた。場所は同じ自宅北側の曲がり角あたり。朝のゴミ出しに行った帰りに、私と全く同じようにやられたという。
襲われて以降、用心して北側経由ではなく、南側のコースをとって散歩に出るようにしていたが、妻は17年間出し続けてきた北側のゴミステーションにこだわりがあるようだ。
距離は少し遠いが、南側にもゴミステーションはある。こりずに北側を通っていたら、数日後に再びカラスに襲われたという。こうなれば妻とカラスのガマン比べである。
これまでカラスに襲われた話は近所で聞いていたが、まさか自分がその当事者になるとは思ってもみなかった。
近隣のスーパーでは、目を離した隙にカラスに買ったばかりの食べ物をぶん取られる被害が続出しているらしく、店頭では注意をうながすコーンがずらり並んでいる。
以前にSF映画で観たが、人類の滅亡した1億年後の地球では、カラスとゴキブリが交雑したような奇っ怪な生き物が支配していた。それも全くの作り話ではない気がする。