2016年6月13日月曜日

苦手な午前中ライブ

 チカチカパフォーマンスの聴き手として知り合い、その後いろいろな企画ライブに招かれているS子さんから、再び地域高齢者むけのライブを依頼された。
 S子さんは私より少し世代が若いが、民生委員を務め、地域のさまざまな社会活動に関わっている。活動の一環に好きな音楽を活かしたいと考えていて、たまたま路上ライブで私の歌を聴き、声をかけてくださった。

 2年前から町内会女性部や市民平和運動のイベントなどに呼んでいただいたが、今回は札幌市が手掛ける地域包括支援事業のイベントが対象。地域に住む高齢者が認知症を予防しつつ、住み慣れた地域で自立して暮らそう、という運動の一環である。
 これまで相続や遺言、介護などの勉強会を開いているが、一部に音楽イベントも取り入れていた。
 会場は2年前に町内会女性部サロンを実施した町内会館で、現地調査の必要はなかったが、問題は開始時間だった。
 午前10時にイベントを始め、お昼ごはんを食べて13時に終了、という進行計画である。対象が60〜70代の高齢者ということで、早めに始めて早めに終わりたい、という主旨は理解できた。

 イベントの1番手は私に演って欲しいとの意向で、過去にも一度だけ午前10時開始の地域イベントに出たことがあるが、声が途中で途切れるという大失態をやらかした苦い経験がある。
 しかし、最近はチカチカパフォーマンスの開始時間もじわじわと早まる傾向にあり、いつまでも逃げているわけにはいかない。何とか克服しようと前向きに考え直した。


 この日は朝からあいにくの雨で、当分止みそうにない。自分にしては早めの7時に起き、最近始めたばかりのプロ用ボイストレーニングを何度かやって備える。市内だが車で1時間近くかかる遠方なので、8時45分には家を出た。

 9時40分に会場到着。前回は座布団と椅子が半々だったが、今回は全席が椅子だった。予定通り10時に開始。
 予め提出済みのリストに従い、先方の希望通りぴったり1時間で17曲を歌った。(※はリクエスト)

「ボラーレ」「愛の讃歌」「パダンパダン」「人生一路」「空港」「22才の別れ」「山谷ブルース※」「涙そうそう」「恋の町札幌」「赤い花白い花」「ビリーヴ」「鱒」「夏の想い出」「珍島物語」「二輪草」「365日の紙飛行機」「この広い野原いっぱい※」
 聴き手は26名。会の主旨から、介護認定は全く受けてないか、介護度の低い方ばかりである。従って、事前に選んだ曲も懐メロ系は皆無。多ジャンル混在となり、洋楽から演歌まで多岐に渡った。
 つまりは私の得意とするパターンだったが、今回は「似たジャンルを続けて歌う」という新たな工夫をこらした。
「トークを交えて歌って」という希望が事前にあり、同じ傾向の曲を続けたほうがMCや時間の微調整はやりやすいだろうと考えたが、ほぼ思惑通りに運んだ。


 会場内は非常に静ひつだったが、1曲毎の拍手は熱くて長い。要所に入れた曲にまつわるトーク(MC)も効果的で、場を和らげるのに充分役だった。
 課題だった喉の調子は、1曲目からスムーズに声が出て、不安は吹き飛んだ。手探りで始めたボイストレーニングは、どうやら効果的のようである。

 8曲目の「涙そうそう」を終えて29分が経過。状況次第では休憩をはさむつもりでいたが、「どんどん歌ってください」との要望で、一気に突っ走ることに。
 外は雨が降り止まなかったが、歌詞に「雨」を含む歌が偶然3曲もあり、場の気分にはぴったりハマった。喉の調子は尻上がりによくなり、キーの高い難曲「珍島物語」は場の反応がよいこともあって、予定にないフルコーラスを歌った。
 実は最近になって「ビリーヴ」と「珍島物語」はキーを半音上げた。コードがそれぞれGとAmになってギターは弾きやすくなったが、ボーカルの難易度は増す。しかし、聴き手の反応は以前よりもよくなった気がする。キーはやはり限界まで上げるべきか。


 ラストひとつ前の「365日の紙飛行機」で、会場に手拍子での協力を求める。場がずっと静ひつなままだったので、賑やかに締めくくりたいという狙いだったが、これは当たった。
 最後は会のテーマソングにしているという「この広い野原いっぱい」を全員でシングアウト。11時からは終活関連の報告会が続くので、早めに退席させてもらったが、「素晴らしかった」「もっと聴きたかった」との声が多数。

 帰宅すると責任者のS子さんから、「力強い歌声が感動的。ぜいたくで幸せな時間でした」とのお礼メールが早くも届いていた。
 聴き手の感想と歌い手の感覚とが一致するライブは意外に少ないものだが、今回はそれが起きた。午前中ライブの苦手意識も払拭できた気がする。