全く音沙汰がないので、その後もう一度案内を出した。当日も開始時刻まで訪れるのを現地で待っていたほどだ。だが、結局現れなかった。
YOSAKOIソーラン祭とスケジュールが重なったので、その関係かとも思ったが、何の連絡もないことが不思議でならなかった。
その彼女から、突然連絡があった。ある事情でこの2週間、全く連絡がとれない状況下にあったという。
2週間前といえば、最初の案内メールを送信した時期とぴたり一致する。そして、束縛から解放された時期が、これまたぴたりコンサートの終った翌日だった。
「私って、ついてないです。ぜひとも見届けたかった…」
そう残念がってくれたが、コンサート中もコンサート後も、「Sさんがいたら、すごく喜んでくれたと思う」と、妻もしきりに話していた。私も残念でならない。
それにしても、2週間分たまった何百もの迷惑メールの中から、よくぞ私のメールに気づいてくれたものだ。ナゾが解けたのと同時に、忘れずに連絡をくれたことが何よりうれしかった。
今年は我が家の庭に、忘れな草の可憐な花が群生している。数年前に一株だけ買って植えた記憶はあるが、その後手を加えた覚えがない。どうやら種が自然増殖しているらしい。
人は忘れてしまっても、花は忘れずに咲いてくれる。だから「忘れな草」なのか。たくさんあるので、摘み取って窓辺にも飾った。野に置いても窓辺に置いても、映える花は映える。忘れてないよ。