入れ替わりに病室に現れるのは、部屋の掃除やゴミの回収、腕にはめたリングタグの確認やら、カーテンの開け閉めなど、雑多な用事の方々。看護師の検温や栄養士の食事指導もこれに加わるので、病院とは実に多くの人々が働いているのだと、入院してみて初めて分かった。
8時15分に待望の朝食。この病院では「15分」という時刻が食事の定刻になっているらしい。
メニューは期待したパンではなく、普通の和食。全粥に味噌汁(具は大根)、とろろ汁に焼売&蒲鉾卵巻き&野菜煮物、そして牛乳という、てんでバラバラな組合せ。食事に飢えているのできれいに平らげたが、入院中の4食のうち、最もいただけない内容だった。
術後4度食べても全く便意をもよおさないのが少し不安だったが、その後特に出血はなく、腹部の膨張感や痛みもない。体温や血圧も正常値で、退院を阻害するデータは何もなかった。
9時半、主治医がやってきて退院の宣告。退院後の生活に関し、特に2週間は入院時に近い安静を強く求められた。食事にも厳しい制限があり、当分はストイックな生活を強いられる。
病理検査の結果が中旬に出るそうで、それに合わせて再受診する日が決められた。いよいよ退院だ。
忘れ物がないよう、指差し確認しつつ部屋を点検。病室のある5階から1階へと下って、退院専用窓口で入院費の精算を行った。
費用は52,000円強。これには寝具等のレンタル費や食事代もすべて含んでいる。面倒な手術の割には、案外安かった。最初の受診と2回目の内視鏡検査で15,000円強かかっているので、これまで病院に支払った総費用は7万円弱。
支払いは現金のほか、クレジットカードやデビットカードが利用可能だが、今回は現金を持ち歩くのを避け、最初からカード決済でいこうと決めていた。アマゾンギフト券0.5%のポイント還元がつくUCカードを選択。
その後、受付横にあるテレビカード精算機で残った分を精算。760円が戻ってきたので、テレビを観た時間は、2日間で5時間弱ということになる。
10時、全てが終わって外に出ると、幸いにカラリと晴れている。帰りは地下鉄とバスと決めていたが、地下鉄はわずか一駅。階段の昇り降りが内臓の負担となるのが怖く、通りから見ると、地下鉄終点駅がすぐ近くに見える。地下鉄はやめて、1キロほどを歩くことにした。
「腹筋を使う運動はいけない」ときつく言われていたので、普段よりもかなりペースをおとし、15分かけて終点駅に到着。自宅方面行きのバス停を探し出すのに手間取ったが、運良く5分後に出るバスがあり、11時ころには自宅に着いた。
初めての入院だったが、とりあえず無事に家に戻れたことを喜びたい。そして健康の有難味を思い知った。
今回で第1段階はクリアしたが、患部が癒着するまでに無理をすれば、再出血再入院ともなりかねない。第2段階ともいえる今後の2週間を事故なく過ごすのが、次なる目標である。「闘い」は、しばし続く。