来月号の原稿はすでに仕上がっているが、まだその内容を記す段階ではない。今回は過去2回分のように記載した内容に関する徹底的な裏付け調査は軽めで済んだ。
以前に少しふれたが、こうした調査は「裏取り」と呼ばれ、マスコミ全般はもちろん、ノンフィクションに代表される書き物の世界でも欠かせないもの。これがいい加減だと記事そのものに真実味がなくなり、信頼性の薄い、いい加減なものになってしまう。
私はたとえ作り物の創作小説の場合でも、可能な限り徹底して調べる。たとえば以前に昭和40年代の北大恵迪寮の暖房を描写する小説を書いた際、実際に暮らしていた方に取材したことがある。
いま雑誌に書いているエッセイは昭和30~40年代あたりの懐かしいものが対象なので、あいまいな記憶だけでは書けない。ネット情報はお手軽だが時に不正確で、そのまま使うのは危険。前々回はデパートや新聞社、前回はビール会社に直接連絡し、事情を話して正確な情報を得た。
大変面倒な作業で、書いている時間より調べている時間のほうが長かったりする。しかし、歌とは全く異なる面白さがそこにある。「裏取り」によって得た情報の要旨は、エッセイ冒頭欄外にも掲載してある。編集長さんのアイデアで、当初は予定になかったが、おおむね100字のちょっとしたアクセントである。
エッセイには内容にそったカラーイラストが毎回掲載されているが、この素案となるラフスケッチも最近は私が描いて送っている。上のイラストは先月分のもの。そこらのメモ用紙にザクザクと描いてスキャンしたものだが、これを元にプロのイラストレーターが見事なタッチで仕上げてくれる。
自分のHPに掲載していたときは、これらの作業を全て自分一人でやっていたが、やはりプロの仕事は一味違う。私のラフと雑誌掲載の作品とでは微妙に異なるが、どこかどう違っているのか、雑誌をお持ちの方は見比べてみるのも一興。
そのほか、主にネットで収集した参考画像も適当にまとめて出版社に送る。たとえばサッポロジャイアンツであれば、現存する写真がなければ正確なイラストは描けない。
A4版1頁1400字のエッセイだが、形となって印刷され、店頭に並ぶまでには、目に見えない多くの手間や労力が関わっている。出版社の方はこの作業を毎月100数頁にわたってやっているわけで、仕事とはいえ、日々追われるハードな生活を送っているのだ。