2011年4月2日土曜日

娘が被災地へ

 新聞に掲載された温泉の切り抜き記事が手元にある。日付を見ると1999年、もう12年も前だ。原野の片隅にポツリと建つひなびた温泉で、自宅から近いのでいつか行こう行こうと思いつつ、なかなか実現しなかった。
 珍しく妻が週末に連休である。「どこか日帰り温泉にでも…」と言うので、近場ならよかろうと、ようやく行く気になった。
「中小屋温泉」という名のその温泉宿、歴史はかなりのもので、創業は100年以上も前。すでに経営者は4代目だとか。
 我が家からは車でちょうど30分。周囲にはナンニモないが、料金は日帰りだと500円。冷泉だが、皮膚病と神経衰弱に効用があるという。皮膚病はともかく、心の病に効く温泉があるとは知らなかった。心迷える現代にピッタリの温泉ではないか。


 14時ちょうどに着いたが、広々とした浴室にはダ〜レもいず、逆に入りにくい雰囲気。週末の午後でこんな感じとは、ここにも「自粛」の波をヒタヒタと感じる。
 30分ゆっくりと浸かって、あがろうと思ったころに、ようやく3人の客がまとまって入ってきた。それでもガラガラ状態であることに変わりはない。

 最初なのでよく分からず、200円払って和室の休憩所に入ったが、無料のロビーがあるので余程混んでいない限り、入浴料だけ払って入るのが得策。
 安いだけあってタオルやシャンプーは置いてなく、脱衣所にはドライヤーもない。石けんはあるが、数が極端に少ないので、こちらも持参するのが無難かもしれない。掃除は行き届いているので、純粋に温泉に浸かりたい人にはお勧めである。


 首都圏に住む娘からメールがあり、明日被災地に支援物資を届けに行く、元気でやっているから心配しないで、という電報のような内容である。
 実は娘は昨年から、とあるボランティア組織で活動している。昨年は東ティモール(インドネシアの東にある新興国)に10日間、支援に行った。
 東ティモールは独立直後の混乱から、 政府による十分な行政サービスが行き届かず、国際ボランティア組織が活発に支援活動をしている。娘もその一端を担ったわけだが、所属する会社もそんな社員を積極的にサポートしてくれて、ちゃんと有給休暇をくれたのだとか。
 まだ政情が安定せず、命の危険もある地域だが、自分で決めた道なので、親としては理解して見守るしかない。
 今回もまだ危険の残る地にあえて飛込むわけで、とりあえず義援金とブログでの能書きという形でしか行動できない父親にとって、我が子が現地に直接行って具体的な支援活動をしてくれるという事実は、まるで我が分身が被災地に飛んでいくようで、非常にうれしい。

 娘がなぜボランティアを始めたのか、分かるようで、分からない。何かしらのきっかけと心情の変化があったのかもしれない。
 娘は私が30代後半からさまざまなボランティア活動をやっていることを、家族として同時体験している。「だからアナタもやりなさい」と、我が子に一度も強いたことはない。私にとってボランティア活動は、あくまで趣味道楽、好奇心の延長である。
 しかし、そんな親の姿を見て心のどこかで共感し、意識下で見習ってくれたのだとしたら、人生冥利につきることだ。「生きることは伝えること」なのだと私は思う。