「余ったページは捨て、足りないページはもう1枚印刷すればいい」という、単純な理屈にはならないのだ。つまり、作業の終えた110セットのうち、「同じページが続けて2枚」あったり、「1ページ欠けている」セットのある可能性が高い。
印刷する際、総ページ数はソフト上から厳密に112枚をセットしていて、過不足が発生する可能性は極めて低い、というのがその根拠。
1セットずつ段ボール箱に詰めながら、その「怪しいページ」を重点的にチェック。すると、「続けて同じページが2枚」は、割と早く見つかった。おそらく一度に2枚とってしまったのだろう。
ところが、「1ページ足りないかもしれない」セットは、なかなか見つからない。残りが一桁になり、(もしかして、このページだけ113枚印刷したのでは…)と思い時始めたころ、ついに欠損したセットを発見!
時間に余裕がなく、段ボール箱を車に積み込み、すぐに出発した。
製本業者に到着したのは、18時。事前に電話しておいたので、店を閉めずに待っていてくれた。
苦労した作業も、いよいよこれで終わりのつもりで勇んで箱を持ち込むと、中の用紙を一目見るなり、「紙がソリ過ぎている。無線とじは難しいかしれない…」と担当者はいう。紙に曲がりが多いと、技術的に無線とじ(接着剤による製本方式)は難しいのだとか。
その場であれやこれや問答が始まったが、ともかく明日、再検討してみますとのこと。最悪の場合、作業がすべてやり直しとなる可能性も否定できない。
仮に全作業がやり直しとなると、私の手には負えなくなるので、外注に頼らざるを得ない。苦心して編集レイアウトしたページはたぶんそのまま使えるが、プリンタや用紙、そして5日間の肉体労働のすべてが無駄になり、外注費もかさんで、大赤字必須である。その事態は何としても避けたいが、ともかく請け負ってしまった仕事なので、納期までにやり遂げなくてはならぬ。
7年前のいまごろ、建築デザインの仕事がパッタリ途切れ、無理をして異業種の仕事に手をだし、25万円の大赤字を出した苦い経験があり、ふとその再来かと気が沈んだ。仕事がないときに、慣れない仕事に手を出すとロクなことはないものだが、またしても同じ轍を踏んでしまったか。
家に戻ると娘を空港まで送りに行った妻はおらず、室内は真っ暗。時計は19時を回っていたが、食事の準備がないので、スーパーに買い出しに出かけた。身も心も疲れきっているので、さすがに歩く元気はなく、車で行った。
弁当でも買う気でいたが、気を奮い立たせ、納豆チヂミの材料を調達。美味そうなイカリングがあったので、小さめのを1パックだけ買った。
疲れた身体にムチ打って、チヂミを作る。シャワーを浴び、発泡酒と共に遅い夕食を独り食べたが、1皿分のチヂミを一人で食べると、さすがに満腹。いやいや作った割に味はなぜか抜群で、この日はそれが唯一の救いである。