写真の上段が真上から見たもの。まん中が蓋をとって中身を出したもの。そして下段が底の部分と上蓋である。
本体には、FAXロール紙を使い切ったあとに残るクラフト紙製の芯を使っている。まん中にある空洞が印鑑の直径にぴたり合い、加工もノコで簡単にできる。
直径18ミリ、蓋こみ全長79ミリ。以下、作業工程である。
1)木片を丸く削り、底にあたる部分にぴったり蓋をする。底蓋の内側にはあらかじめフェルトを丸く切ってボンドで固定しておく。これは印鑑の先端がぶつかって欠けるのを防ぐため。
木片が中に5ミリほど食い込んだ位置でホワイトボンドで固定する。
2)底蓋が固まったら余った木材をノコで切り、紙ヤスリをかけて磨く。
(写真下段左)
3)上蓋を同様に木片を削って作る。内側がきっちりはまるよう、今回は布製の薄い絆創膏テープで補強した。
4)印鑑の長さと上蓋先端部が中に入る分の寸法を測り、本体の長さを慎重に決めてノコで切る。
5)切り口を紙ヤスリで磨いたあと、手垢止めの植物オイルを塗る。
(透明ニス等でもよいし、塗らなくてもよい)
市販の印鑑ケースはどれも大袈裟で重たく、やぼったい。まるで使う気がしない。常時ポケットの中に入れて持ち歩く習慣があるので、軽くてかさばらず、しかも独自のデザインとなると、自分で作ってしまうのが手っ取り早い。
最初にこのタイプを作ったのは、10数年も前だった。当初は底蓋に薄いビニールタイルを丸く切ってボンド固定していたが、定期的にはがれて補修が面倒だった。今回はその欠点を補正した。
その他にも蓋の補強や底のフェルトなど、小さな改良を重ねている。
以前に一度だけ、ある役所の窓口で、「そのケースはご自分で作られたのですか?」と興味深げに尋ねられたことがある。飽きるほど毎日ハンコに接している担当者でも、この種のクラフト紙系の手作り品は、極めて珍しかったようだ。
布でもレースでも皮でもなく、廃物の紙筒を再利用しているところが大きなミソ。デザインコンペに出すような代物ではないが、紙と木を使ったいかにも私らしい手作り品であると、けっこう気にいっている。