2015年2月22日日曜日

固定化した聴き手への対応

 車で30分ほどの距離にある有料老人ホーム、誕生会イベントに出演。全国展開の組織で、市内にある系列の4施設からは、それぞれ定期的に招かれている。
 今回の施設は、およそ1年半ぶりの訪問。都合3度目となるが、全般的に明るめの曲を好む傾向があり、記録によれば前回も大変な盛り上がりだった。

 開始20分前に着いて、担当の職員さんと細かい打合せ。最初に施設側のイベントがあるが、その冒頭で「誕生日の歌」をギター伴奏でリードして欲しいという。つまり、開始時点で完全に音が出せる状態にしておく必要があった。
 横に長い会場なので、PAは今回も2台を持参。いつもより左右の位置を広めにとって備えた。
 14時30分からイベント開始。まずは「誕生日の歌」を2度繰り返して歌う。その後2月が誕生日の入居者の紹介、プレゼント贈呈などがあって、予定より7分早い14時38分から私のライブが始まった。
 2日連続の介護施設系ライブとなるので心身の負担を減らすべく、構成は前日と似た内容で臨んだ。およそ40分で13曲を歌う。

「北国の春」「おかあさん」「真室川音頭」「みかんの花咲く丘」「幸せなら手をたたこう」「リンゴの唄」「宗谷岬」「サントワマミー」「矢切の渡し」「月がとっても青いから」「いい日旅立ち」「高校三年生」「青い山脈」


 施設側の嗜好等を配慮し、3つの歌を差し替えた。
「二人は若い」→「幸せなら手をたたこう」
「お座敷小唄」→「サントワマミー」
「浪花節だよ人生は」→「高校三年生」

 歌い始めると、前回とは明らかに空気感が異なることに気づいた。各席にケーキと飲み物を配る職員さんの動きが慌ただしく、聴き手も食べるに忙しく、いまひとつ歌への集中を欠いた。
 自然発生的に手拍子が飛び出す最初の3曲でも場は静まり返ったまま。叙情性の強い「みかんの花咲く丘」「リンゴの唄」で一緒に歌う人が現れたが、その声は小さく、場を支配する静ひつな気分に終始大きな変化はなかった。
 そんな流れにも上手に対応するのが歌い手としての技量なのだが、切り換えは難しかった。前日のデイサービスライブでの盛り上がりを気持ちの中で引きずっていたかもしれない。
 施設側から要望されていた「40分程度」という演奏時間はきちんと守ったが、前回飛び出したアンコールも今回はなく、もちろんリクエスト等もない。歌い手としては消化不良のイメージで終えたライブとなった。

 終了後に自分なりに分析してみたが、いつも元気なかけ声で場をリードしてくれる入居者の男性の顔が、なぜか今回は見えなかったこと。全体的に入居者の高齢化が進み、デイサービスと違って入れ替りも少なく、それが反応を弱くさせた大きな要因のように思われた。(入居時に一時金を納入するシステムの有料老人ホームは、概して入れ替りが少ない)
 老いてゆくのが人としての自然の摂理で、その流れに棹さして引き止めるのは、一介の歌い手にとって至難の業といえよう。

 多様な嗜好にもある程度対応できる態勢が整ったいまの自分には、聴き手が固定化された有料老人ホームやグループホームより、聴き手の入れ替りが激しく、嗜好も幅広いデイサービスや地域サロンのような場が向いているような気がする。
 自分の技量に応じて、場も自然に移り変わってゆく。