2011年2月18日金曜日

自由業の税金

 すでに確定申告の受付が始まっているが、あれやこれやで延び延びになりつつも、ようやく先が見えてきた。残るは確定申告書の記載だけで、すでに納税すべき金額も把握した。

 以前に何度かふれているが、私の現状の仕事は下請けのデザイン業なので、取引先の支払い段階ですでに10%が源泉徴収されてくる。つまり、1万円の仕事をしても、口座に振り込まれるのは9千円である。
(実際には、いくばくかの振込手数料もさらに引かれる)
 作家の原稿料も同様に10%が源泉徴収されるが、なぜ自由業の類いの職種が、まるでサラリーマンのように源泉徴収されるのか、理由はよく分からない。飲食店や物販店のように収入そのものが日銭で源泉徴収が不可能な事業形態と違い、仕事の発注元を法で押さえ、税の取りはぐれがないように計らっているのだろう。
 従ってこの時期に私がやっていることは、すでに国庫に納めてしまっている自分の納税分を、確定申告によってその一部を還付してもらう作業に過ぎない。
 たとえば年に500万の仕事をし、源泉徴収で50万の税金を納めたとする。確定申告で事業に使った経費や控除額を計算し、最終納税額が30万円に落ち着いたとした場合、差額の20万円があとで戻ってくる仕組みだ。
(口座入金までに申告後2ヶ月はかかる)
 収入の少ない年は、この還付額が命の綱だった時期も少なくない。そんな年は仕事そのものが暇なので、確定申告作業を必死でやり、開始と同時に提出する。少しでも早く還付してもらうためで、サラリーマンが出産などで医療費がかかり、源泉徴収された税を確定申告によって還付してもらうのと全く同じ理屈である。

 サラリーマンと少し違うのは、必要経費を個別に申告できることか。私のように自宅を仕事場に使っている場合、住宅に関わる経費や光熱費などが、その使用比率に応じて事業経費として扱われる。
(ちなみに、サラリーマンも収入の一部 =30%が基本= を「給与所得控除」という形で必要経費と同様に控除されている。自由業者の平均経費比率と大差ないのだ。知ってた?)
 しかし、経費扱いされたからといって、タダで手に入るわけではない。ここを勘違いしている人が多数いる。

 たとえば仕事用パソコンを5万で買い、それを必要経費として申告したとしても、金額として戻ってくるのは所得税の5~10%分と、それに付随する住民税や国民健康保険料該当分を加えても、15~20%程度。合計で1万円ほどである。
(収入額によって比率は微妙に異なるが、私の場合は概ねこの比率)
 仕事がなくて納めた税金そのものが少ない場合は、還付されるお金も当然減る。飲食店や物販店は経験がないのでよく分からないが、少なくともサラリーマン同様に源泉徴収される個人事業主としての自由業に、税金に関わるうまみなど何もない。
 事業を法人化すると税の扱いはガラリと変わる。法人だけの特典である厚生年金の適用を受けると、国が保険料の半分を負担してくれるし、社会的責任も増す。その分経費の負担は増えるが、「うまみ」という意味では、こちらが断然有利だろう。
 多くの事業者が法人を目指す所以だが、脱サラ後30余年で幾度もあった法人化のチャンスを結局活かさなかった訳は、「一匹狼の自由奔放さが好きだから」の一点である。私にとって自由は、何ものにも勝るかけがえのないものだ。