2018年6月10日日曜日

「雨」を歌う

 数ヶ月前から依頼されていた地域カフェ(日曜カフェ)で歌った。地域包括支援センターの支援を受けた事業で、昨年6月今年2月に続いて3度目の依頼だった。
 場所は札幌ドーム近くの町内会館。第2第4日曜の月2回、年間24回開催されていて、運営は全て地域住民で行っている。代表のS子さんとは路上ライブで知り合って以来の長いお付き合いで、講師としてはすっかり定着した感。

 開始はいつもと同じ10時。声の出にくい午前中ライブだが、認知症予防関連事業ともなると、この時間帯がどうしても避けられないようだ。
 8時50分に家を出て、40分で会場に到着。予備ギターやサブPAを含む多数の機材を搬入し、ただちに設営に入る。


 町内会女性部懇親会など、他イベントでも招かれているので、場としては都合5回目。大きな戸惑いはなく、予定通り10時からイベント開始となる。
 前半は40分で10曲を歌った。

「傘がない」「アカシアの雨がやむとき」「どうぞこのまま」「有楽町で逢いましょう」「雨の物語」「長崎は今日も雨だった」「雨が空から降れば」「黄昏のビギン」「空港」「アビーロードの街」

 地域に事前回覧された案内状には、今回もS子さんによるイベント概要が記されていた。6月とあってライブテーマは「雨を歌う」で、雨に関連する8曲がすでに告知ずみ。この8曲は必ず歌う必要があり、前半に配置した。
 開始の時点で聴き手はスタッフを含めて40名くらいだったが、その後じわじわと増え、最終的には50名近くに達した。前2回は30名前後だったので、過去に例のない盛況である。
 昨年からPAは2台を準備してきたが、それでも聴き手の多さに吸音される感じがしたので、途中で数回ボリュームを上げた。

 1年前は風邪が抜けきらず、薬を飲みつつキーを下げて歌うという最悪の状態だったが、今回は調整が比較的うまく運んで、喉の調子はまずまず。ところが前日の気温が平年より7度も低く、暖房を点けるかどうか、かなり迷った。
 結局点けずに早めに寝床に入ったが、身体が冷えていたせいか、1時間毎にトイレに起きる頻尿状態。全く年はとりたくない。午前中ライブの緊張感も重なって、満足に寝られないまま朝を迎えた。

 開始時は寝不足で頭がボ〜とした状態。ピーク時の声がいまひとつ出ないが、変な力みが消えるという相反する要素のバランスを取りつつ歌うという、奇妙な進行となった。


 ライブ中にも断続的に客が入ってきて、その応対や飲み物サービスなどで場が落ち着かない部分も多少あったが、ジャンルや曲調のバランスを考慮した構成がうまく運んだのか、全体的な反応は悪くなかった。
 曲間のMCは曲紹介程度とし、淡々と歌い継ぐ。前半ラストはややマニアックな「アビーロードの街」だったが、期せずして場内から手拍子が湧いた。出だしの1曲と前後半のラストの選曲は、かなり重要と再認識。
 10分弱の休憩を挟んで後半開始。他のリクエストサロン系の場と同様に、後半は基本的に場からのリクエストで構成する。S子さんが休憩時に集めてくれたメモを見ると、15曲のタイトルが並んでいる。
 時間的に全部を歌うのは難しく、可能な限り応えるべく、ただちに始めることにする。およそ43分で12曲を歌った。

「雨がやんだら」「つぐない」「秋桜」「別れの朝」「あんたのバラード」「ここに幸あり」「糸」「涙そうそう」「なごり雪」「星影のワルツ」「アメイジング・グレイス」「365日の紙飛行機」

 何をどの順で歌うかは任されていたが、全体的に叙情的な曲調が多く、前半同様にジャンルや曲調のバランスをとりつつ、その場の判断で歌い進めた。
 結果として歌えなかった曲は、「氷雨」「シクラメンのかほり」「地上の星」の3曲。余るほどリクエストをいただくのはうれしい悲鳴だが、最終的に応えられない曲が出てしまうのは心苦しい。何らかの救済策が必要かもしれない。


 後半は場が落ち着き、聴き手が集中してくる強い気配を感じた。進行に従って眠気もすっとび、連動して喉の調子も向上したが、途中から右の耳が聞こえにくくなって困った。
 以前にも数回同じ症状になったことがある。寒さに用心して薄いセーターを着て臨んだが、50名の聴き手で場内の熱気は高まり、暑いほど。おそらくは体調不良からくる軽い突発的難聴だった。
 頻繁に水を飲み、休憩時にはセーターを脱いでシャツの袖もまくって備えたが、容易に回復しなかった。

 それでも聴き手の熱気に支えられて、ライブの勢いが失速することはなく、あっという間にラストへとなだれ込む。場のコンセプトにもぴったりの「365日の紙飛行機」を選んだが、こちらにも自然発生の手拍子が湧いて大団円となった。
 最後に代表のS子さんが挨拶に立つと、どこからか(アンコール…)のささやきが聞こえてくる。場の気分は確かにアンコールを求めていたが、時計はすでに予定時刻を超えている。惜しいことをした。
 終了後、Xmasライブへの出演を打診される。さすがに12月のスケジュールはガラ空きだが、もし引き受けると、同じ場で年に3度の出演となってしまう。多すぎないかとそこが不安だったが、「こうして回を重ねるごとに、集客は増えていますので」と、意に介さない。
 よく考えると、似た切り口で先月終えたばかりのカフェライブも、季節ごとの年4回ライブが恒例化しつつある。回毎にテーマを決めてメリハリをつけ、きちんと記録を管理して重複曲を極力避けるなど、工夫次第で乗り切れそうな気がしないでもない。

 帰りがけに多くの利用者の方から声をかけられたが、ある同年代の女性からは、「声に独特の《ゆらぎ》がありますね」と言われた。
 実は過去にも同じ趣旨の言葉をかけられたことが数回ある。要は音色やテンポに規則性と不規則性とが微妙に混じり合った音(声)の状態らしいが、突き詰めると音楽的な癒やしにたどり着くという。かの女性はかって専門的な講座を受けたことがあるそうだ。
 自分でもその正体はよく分かっていないが、褒め言葉であることは確か。指摘を素直に喜びたい。