うまい具合に明日から午前中のライブが続く。喉を調整するには絶好の機会であった。
夕方、都心の渡辺淳一文学館で渋谷文太郎さんのコンサートがあるので出かけた。発起人(主催者)が音楽関連で長年お世話になっている方なので、かなり前からチケットは予約してある。
発起人のお二人は私と同年代の女性だが、好きなシャンソン歌手のソロコンサートをぜひ札幌で開きたいと思いたち、ご本人に直接交渉されたようだ。短い準備期間だったが、会場に入ってみると固定席だけでは足りず、30席ほどの予備席を設けてあったほど。ざっと100人近い人で会場は埋まっていた。盛況である。
聴き手は大半が中年女性。渋谷さんはシャンソン、カンツォーネを主に歌っている方なので、さもありなん。男性客は極端に少なく、数えた限りでは、私を含めて6名。そんな事情からトイレはすべて女性客専用となり、男性は多目的トイレを指定されてしまった。
18:30からコンサートは始まった。全く初めて聴く歌だったが、伸びやかな声と多彩な表現力、場をつかむ巧みなパフォーマンスに引きこまれた。視線や指先の動きにまで細かい気配りを感じる。
歌だけでなく、ルックスもまた甘く、スタイルも抜群。そして若い。(おそらくは30代半ば)いい意味でセクシーな魅力に溢れている。MCにも嫌味がなく、中年女性が押し寄せるのもうなずける。歌い手はただ歌うだけでなく、見た目や話術も重要な要素であることを再認識した。
やや長めのMCのあと、2~3曲のメドレーが進行の基本だが、随所にノーマイクの歌を入れたり、時には歩きながら客席を回ったりと、全体の構成が非常に巧みで、聴き手を飽きさせない。プロだから当然かもしれないが、同じ歌い手の立場として、非常に参考になった。
前半9曲を50分で歌い、15分の休憩ののち、後半の50分へと続く。休憩が入っているのも、中高年むきの配慮かもしれない。大変ありがたかった。
歌はシャンソンとカンツォーネがベースだが、時にはジャズやフォークがあったりと、ジャンルにこだわらない自在な選曲である。私が最近目指している「ノージャンルの叙情歌シンガー」と、大きな隔たりがなく、ここでも共感を持った。
ピアノ伴奏は大和秀嗣さんという方だったが、アンコールで渋谷さん自らがピアノの前に座り、尾崎豊の「アイラブユー」を朗々と弾き語ってくれた。これがまた秀逸。本当に上手い人は、たとえカバー曲でも独自の世界を構築できるということだ。
あっという間の2時間余。主催のお二方も、得難い感動の時間を共有できたことと思う。人生、死ぬまで新しいことを目指し続けていたいもの。