妻が結婚時に持参し、50年近くの長きにわたって使い続けた和包丁の柄が腐り、ぐらつき始めた。いまは亡き妻の母が持たせてくれた思い出深い品で、他の包丁と比べて切れ味が長持ちする。
結婚後20年くらいでやはり柄がぐらつき始め、釘を打ち込んで補強した覚えがある。その際の修理痕も残っているが、今回は木が腐って一部脱落し、同じ手法での補修は不可能。柄を交換するしかない。
交換する柄は数百円で手に入るが、研ぎはずっと私が担当してきたこともあって、柄も自分で作ってみようと思い立った。
刃が折れて使えなくなった鎌の柄だけを保管してあり、やや太いが削れば代用できそうだった。
大型カッターナイフで少しずつ削り、形状を整える。最後に紙ヤスリで仕上げて、現状と同じ12センチ長に切り落とした。
交換作業で手を傷つけないよう、まず刃全体を新聞紙でくるんでガムテープ固定。
続けて古い柄を包丁から切り離す。腐っているので、ハンマーで叩くと簡単に外れた。柄の上端部にあって刃を締め付ける役目の口金は、そのまま転用する。
新しい柄に口金をはめ込むため、鉛筆でマーキングしてから適当な板に柄をCクランプで固定。事前にノコで入れた切り込みを目安に、カッターで少しずつ削る。
取り外した刃を調べると、経年で先端部が腐ってしまい、欠けて短くなっていた。このままでは再びぐらつきかねず、電動グラインダーで刃の本体を1センチほど切り取り、差し込み部を強引に長くした。
刃の切り口は丸く磨き、先端部の錆も同時に落とした。
口金をはめこんだ柄に、刃の先端部に合わせて溝を切る。中心の2個はΦ3.2、左右2個はΦ2のドリル刃を使い、左右に動かして細かいバリを取る。
最後に刃の先端部をロウソクで熱し(あればバーナーかガスの火を使う)素早く差し込んで柄の側からハンマーで少しずつ叩き込む。
(金属の熱で木部を焼き、穴をじわじわ広げる意味があるらしい)
実は最後の数ミリを打ち込む際、柄の一部にクラックが入ってしまった。ドリル穴の深さが足りず、無理が働いたらしい。それまで順調に進んでいたので、落胆した。あせらずいったん抜いて再度熱を加えるべきだった。
口金が効いてぐらつきはなく、そのままでも充分使えるが、水の侵入防止と補強をかね、口金部分の隙間にタイトボンドを詰め込んだ。
DIYとしては失敗だったが、まだ残っている材料での再挑戦はせず、しばし様子をみたい。