2020年2月15日土曜日

終わってみれば好評

 車で30分強の距離にあるサ高住で歌った。1週間前に歌ったサ高住と同じく、昨年末に歌ったサ高住の系列施設である。1週間後にも別の系列施設で歌う予定で、計4つのライブがまとめて企画された。
 どの施設もホテルのような高級感漂う造りである点で一致している。最初に歌った施設で洋楽やオリジナルを求められたのも、こうした施設の有り様と無関係ではないだろう。

 偶然だが、今回の施設は私の通った高校のすぐ近くにある。ライブ開始時刻は他施設と同じく14時。13時過ぎに家を出て、20分前には到着した。
 三々五々と聴き手が集まってきて、定刻にライブ開始。およそ45分で13曲を歌った。(※はリクエスト)
「上を向いて歩こう」「おかあさん(森昌子)」「バラが咲いた」「蘇州夜曲」「幸せなら手をたたこう」「仰げば尊し」「サン・トワ・マミー」「神田川」「恋の町札幌」「影を慕いて※」「星影のワルツ」「東京ラプソディ」「月がとっても青いから(アンコール)」


 聴き手は開始時点で10名強。開始後に少しずつ増えて、最終的には20名弱に達する。
 系列施設でも、場所が変われば嗜好も変わる。今回は開始前の時点で、ある男性から「リクエストOKですか?」との質問があった。
 高齢なので古い曲がいい。古賀政男の曲をぜひに、との希望。電子譜面を繰って、「影を慕いて」を見つけた。後半に歌うことを約束する。
 いざ歌い始めると、これまでとは空気感が微妙に異なった。ひと言でいうと、ノリが悪いのだ。歌に合わせた手拍子や、共に歌う声がほとんど耳に届かない。
 気分を一発で変える力のある「幸せなら手をたたこう」でも、大きなな変化はなかった。職員さんが最初の紹介だけで会場から姿を消したことも関係していただろうか。

 反面、叙情系の「バラが咲いた」「蘇州夜曲」「仰げば尊し」などへの反応はまずまずで、場としては明らかに傾聴型だった。

職員さん多忙のため、自撮り

 いまひとつ場をつかみきれないまま、ラスト前の「星影のワルツ」を歌うと、これがこの日一番の手応え。
「千昌夫が聴けてよかった」とささやく声が複数届く。結果論だが、他施設の嗜好にとらわれず、演歌系の曲をもう少し増やすべきだったかもしれない。
 ラストの曲を歌って場を収めると、最初にリクエストを求めた男性からステージ名「トムノ」に関する質問があり、続けて「70歳とは思えない若々しい声に驚きました。できるだけ長く歌い続けてください」と労う声。さらには「もっとリクエストはありますか?」と不思議な問いかけ。
 一瞬戸惑いつつも、もしかしてアンコールですか?と、こちらから問い返した。場は大人しかったが、職員さんが終了を告げても誰一人席を立とうとせず、(もう少し聴きたい…)という気分が場に満ちていたのは確かだった。
「そう、そのアンコールです」と男性が応じる。職員さんも聴き手もライブに不慣れらしく、時にはこうした歌い手からの働きかけも必要だった。

 かの男性は終了後にも間近に近寄ってきて、いろいろ声をかけてくださった。「とても素敵な歌でしたよ」と、私にではなく職員さんに挨拶をして帰る方も多数いて、終わってみればライブそのものは好評、という不思議な結末だった。